高校生の留学体験④隣国なのに未知がいっぱいのロシアへ

■宇宙の仕事に必要なロシア語を身につけるために

世界地図を広げるとロシアは日本のすぐ隣にある。

 

しかし、その隣国ロシアに行ったことのある日本人って周囲にいるだろうか? ロシアについてどれだけ知っているだろうか?

 

今年7月、約10ヵ月間のロシア留学から帰国したばかりの江刺和音(えさし なお)さん(高2)も、留学前はロシアについてマトリョーシカとボルシチぐらいしか知らなかったという。

 

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「地理的に近い大国なのにこんなに知らないなんて」…そう思ったことが、留学先にロシアを選んだ理由の一つだ。

 

また、もう一つの大きな理由は、ロシアは宇宙開発が盛んなこと。

 

「私は将来、宇宙関係の仕事に就きたいと思っています。小さな頃から星を見るのは好きなのですが、中3の時、『小惑星探査機はやぶさ』が7年ぶりに地球へ戻ってきて話題になり、いっそうあこがれるようになりました。宇宙開発といえばアメリカとロシア。だから英語だけでなく、ロシア語も使えるようになりたかったんです」(江刺さん、以下同)

 

江刺さんが滞在したのは、宇宙船打ち上げ地にも近いロシアの南西部。ホストファミリーの都合のため半年足らずでホストチェンジしており、最初はヴォルゴグラードという都市、後半はその近くのヴォルシスキーという小さな村に滞在した。冬は日中も氷点下だが、真夏は30℃を超える暑さになる地域だ。

 

「寒暖の差が激しいロシアでは『冬の家』と『夏の家』を持つのが一般的です。後半のファミリーでは5月以降の夏休みになると、古いマンションの『冬の家』から涼しい『夏の家』に移りました。大きな川の近くで広い庭があって、家はナントおじいちゃんの手作り。庭にはイチゴやアプリコットがなっていて自由に取って食べたり、11歳のホストシスターと川で泳いだり、魚釣りをしたり、昔ながらの暮らしを満喫しました」

 

また、ホストファミリーとともに日本の南北より長い3200kmを2週間かけて旅行したことも。馬とラクダで山を越えて、トルコ語を話すイスラム教の民族の集落に滞在。山登りをしたり、何百頭の羊を追って高原を歩いたり、ロシアのさまざまな面を堪能した。

 

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■日本にはまだ忍者がいる!?

貴重な経験を楽しんだ江刺さんだが、学校の勉強も一生懸命取り組んだ。日本帰国後に留年せず元の学年に戻るために、ロシアの学校でも一定の成績を取る必要があったからだ。

 

「ロシア語をほとんど勉強できないまま留学生活に突入したので、最初は授業中にただ座っているだけ。学校の留学担当の先生が週3回、英語でロシア語を教えてくれたり、同じクラスだったホストブラザーが毎日家で教えてくれたり、だいぶ助けてもらいました。おかげで無事、必要な評価をもらうことができました」

 

江刺さんからみたロシア人の印象は、「おおらかでおしゃべり好き」。話しだしたら止まらず、先生に対しても言いたいことはしっかり言う。一方、ロシア人は日本に対してあこがれに近い気持ちを持っている人が多いと感じたという。

 

「『ONE PIECE』や『NARUTO』など日本のマンガがはやっていて、テレビでもロシア語版が放送されていました。ホストファミリーのおじいちゃんは『車は日本車じゃないとだめだ』と言っていたり、東京にあこがれている友だちがたくさんいたり、日本には良い印象があるいようです。でも、『忍者がまだいる』などの誤解もありますよ」

 

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帰国後の江刺さんは少し変わったようだ。

 

「言葉が通じないところで約1年間生活できたので、何でもできるかな、と思えるようになりましたね。また、ロシア人の人柄から受けた影響も大きいです。日本の高校の先生に、私が戻ってクラスの雰囲気が明るくなったと言われたのですが、たぶんロシア人の明るさをもらったんじゃないかな。あ、8kg太って帰ってきたので、家族には『見た目もだいぶ変わったね』と言われてしまいました(笑)」

 

宇宙の仕事に役立つロシア語を身につけた江刺さん。今は大学進学後に英語圏へ留学するための準備を進めている。

 

※取材協力:公益財団法人AFS日本協会