私は、日本最大級の管楽器リペアセンターが併設された、全国に顧客を持つ楽器店にリペア技術者として勤務しています。そのため、高度な専門技術を持った先輩方に囲まれた環境で、少しでも早く1人で全ての作業を任せていただけるよう助言をいただきながらリペア業務に邁進しています。そして、接客でも手を抜くことはありません。お客様がわざわざ当店まで来店する意味を考え、接客の際には特に会話を大事にして、ご提案をさせていただくこともあります。お客様から「よい音色に変わった」「吹きやすくなった」と言っていただけたときが、やりがいを感じる瞬間です。そのことが、さらに技術の向上を目指していく原動力にもなります。
私は、小学生の頃からトランペットの演奏を続け、中学に進学して吹奏楽部に入部しました。その際、部活動でお世話になっていたリペアマンの方の高度なリペア技術を間近で見る機会があり、リペアという仕事に対する興味や憧れを持ちました。そのため、本校在学中は楽器店に足しげく通い、多種多様な楽器を見せていただいたり吹き比べをさせていただいたりと、楽器漬けの毎日を過ごしていました。そして、自身の工房を経営している講師の方々からアドバイスをいただくなど、理想とするリペアマンを描いていきました。これまでお世話になってきた方々の影響もあり、将来は学校を訪問して楽器をリペアしたいという夢も持っています。
在学中、リペア技術はもちろん、楽器に関する商品の知識や歴史についても学ぶこともできました。同じ楽器でも内径の大きさなどが各メーカーで異なり、それによって音の味付けが変わります。このような知識がキィを調整する場面などで役立ち、仕事に活かされていると実感しています。加えて、楽器の歴史に関する学びを通して、さまざまな楽器の成り立ちや変遷についての教養を身につけたことで、楽器への理解をより深めることができました。特に思い出として残っているのは、トランペットを分解し、再び組み立てる実習です。とても根気が必要で、友だちと一緒に早出や居残りで練習を繰り返し、元通りの音が出たときは感動しました。
株式会社 下倉楽器 勤務/管楽器リペア科/2022年卒/1937年創業の老舗である株式会社 下倉楽器の管楽器リペアセンターにおいて、木管楽器のリペア業務と接客を担当。点検や簡単な調整はその場で行い、必要な場合はお預かりして楽器が持つ本来の実力を発揮できるようにリペアを行う。どのような人がこの仕事に向いているかを聞くと、「探究心と根気がある人だと思います。技術職なので1年や2年では技術は身につきません。コツコツと努力を続けることが大切だと思います。私も楽器に集中する毎日を過ごし、5年後ぐらいには一人前になれるように努力しています。」と語ってくれた。