研究テーマは「正常性/異常性」。例えば、近代初期のヨーロッパでは強力な「鎮痛剤」だった阿片が、現代では危険な「麻薬」とされているのはなぜか。この認識の変化が生じる19世紀社会について、フランスやドイツの当時の古文書を読みながら研究しています。学生の頃にフランスの詩人・ボードレールの著書「人工楽園」に出会ったのが、この研究に取り組むきっかけ。薬物が危険視されていくプロセスを当時の社会状況と作品をリンクさせながら研究するのが面白く、パリでの留学中も研究を深めました。社会学は私たちの日常生活と直結している学問分野。現代社会の問題について時代を遡って研究し、歴史に学ぶことで得た知見を、本やメディアで現代社会にフィードバックする。それをもとに多くの人々の間で自然発生的に議論が活発になるのが理想です。
社会学は、心に秘めた悩みごとからグローバル世界の政治・経済的課題まで、現代社会に関わるあらゆる事象を扱える非常に守備範囲の広い学問です。本学では第1学年から全員がゼミ(クラス)に所属。教員にしっかりとサポートされた状態で勉強を始めます。その中で自己の関心をじっくり温め、公共社会・人間関係・現代文化の3つの視点から学びを深めます。ゼミでは個人発表やグループ討論、ディベートなどを通じて切磋琢磨し、実習系の授業では地域社会の方々に直接お話を伺うなどの機会を通じて、実践的なコミュニケーション力を養います。
「絶対に正しいこと」が消失した激動の時代を僕らは生きています。複数の視点から物事を眺め、感じた違和感を大切にして下さい。間違いを恐れるのはもっと歳を取ってからで大丈夫。一歩踏み出す勇気を持って下さい。
1974年名古屋市生まれ。愛知県立旭丘高等学校卒。京都大学大学院文学研究科にて博士号を、国費留学したパリの社会科学高等研究院にてPh.D.を取得、日仏2つの博士号を持つ。京都大学文学部グローバルCOE研究員を経て、2015年大谷大学講師として着任。2017年准教授、2022年教授。『ドラッグの誕生―19世紀フランスの〈犯罪・狂気・病〉』など著書・訳書多数。趣味はサッカー観戦、音楽鑑賞。好きな作曲家はブラームス。