如何にして学生たちに構造力学を理解してもらうかが研究テーマです。構造の世界は物理学・数学が必須。計算が苦手な学生たちにとって構造力学は教え方によっては、耐え難い教科と化してしまいます。教壇に立ち始めた頃は、難しい教科書が多く、学生たちに向くものがありませんでした。そこで「自分で教科書を作ろう」と考え、親しみやすい言葉、イラストを使って身近な現象を引用しながら著作活動を始めるうちに、6冊の著作になりました。今は、YouTube(協力:学芸出版社)でも教科書に沿った映像を公開して、学習に役立ててもらえるようにしています。学生たちと基礎構造力学の世界を歩き回っていると、ふとしたことで新しい発見や発想が出てくることがあります。今年はどんな発見があるか、毎年ワクワクしながら教壇に立っています。
講義ではどのようなストーリー性をもたせるか毎回練っている浅野先生。話の中では必ず学生たちの知る知識にまでさかのぼり、そこから新しい内容へと発展するように心掛けているそうです。計算系の教科は手を動かして自分で解いてみることが大事。学生がただ見ているだけにならないように、授業の進行に合わせて一緒に取り組めるような問題・資料を準備して教科書に沿って進めています。板書が人間のペースに合っていると考え、チョークの色や黒板の使い方、図の描き方など、どのような板書にするか考え、反省と改良を続けられています。
構造力学には拍手を送りたくなるような計算解法がいくつもあり、驚くことにそれらは誰もが知っている知識だけで出来上がっています。ぜひ共に私のフィールドを一緒に歩き回り、おもしろい発見を喜んでみたいです。
専門分野/建築構造力学
京都工芸繊維大学大学院で五重塔の耐震性について研究。修了後、(株)間組[現安藤間]技術研究所で、免震・制振構造などの振動を抑える技術の研究開発に従事し、その後(専)京都建築大学校を経て、2009年浅野構造力学研究所設立。現在は、構造力学に関する研究・教材開発(図説やさしい構造力学/学芸出版社 等)をしながら、YouTubeでの講義の配信も行っている。