私はフランス料理の調理師からパティシエになった経歴を持っているのですが、どちらにも共通するのは「食」を通して人を幸せな気持ちにできるということです。大きなやりがいを感じる一方で飲食業界の人手不足という問題にも直面していたため、40年近く関わってきた業界への恩返しという意味も込めて人材を育てる側に回ろうと決意しました。教員として大切にしているのは、学生に「お菓子への愛」を持ってもらうことと、現場に出てから求められる知識・技術とともに周囲に目を配りながら率先して行動に移す自発性を身につけてもらうことです。学校の授業においても現場に出ても失敗はつきものですが、それを恐れずに自分から動くように意識していれば同じ失敗はしないようになりますし、それが学生自身の成長の糧になると考えています。
製菓には科学的な側面があるため材料の計量には正確さが求められ、下準備、段取りも重要になる。ただ、三嵜先生がそれ以上に強調するのは調理道具の選定だ。例えば、ムースやスポンジケーキを作る場合、複数の材料を加えて混ぜ合わせることになるが、この時、一工程ごとにボウルを大きくしていかないと材料に十分な空気が含まれず風味や口溶けの良さが損なわれる。このような現場の視点からケーキ作りの基本的な技術や真摯な姿勢を伝えるのが授業の特色。同時に「材料の生産者への感謝の気持ちも忘れないでほしいと伝えています」と語る。
おいしいものを食べている時、人は幸せそうな表情を浮かべます。調理師やパティシエは自分が作った料理やお菓子で、その人の時間や人生を変えることができる魅力にあふれた仕事です。ぜひ、チャレンジしてください。
専門分野:製菓
専門学校卒業後、渋谷のフランス料理店「シェ松尾」に入社して調理師としてのキャリアをスタートさせるが、同店の製菓部門拡張に伴い製菓の道に進むことになり製菓長を務める。その後、同店のオーナーだった松尾幸造氏がプロデュースするパンとケーキの「Day and Anny」に勤務。若い頃から体を動かすことが好きだった三嵜先生。現在もジョギングを続けることでシャープな体形を維持している。