地域の中にもっと「人の動き」を創出するための試みを行っています。人の行動からは多くの「動詞」が生まれます。たとえば「食べる」。古くから地域に伝わる食材に新たなアレンジを加え、提供するカフェを開催することは「食べる」という動詞を通して地域文化の魅力を高め、食を求めてやってくる人々と地域の歴史的空間との新たなつながりを生み出します。地域の文化を継承しながら、現代的な視点をもって新しい展開を考える本研究室独自の「動詞抽出調査法」は、積極的なフィールドワークと地域の皆さんとの活発な意見交換が欠かせません。その地域を創り上げた文化的背景に想いを馳せると同時に、論理的な考察を深め、皆でまちづくりプランを案出していきます。異なる視点が交じり合うからこそ発見できる「動詞」をこれからも探し続けたいですね。
斉藤教授の授業は地域・まちの文化的背景に着目した学びが特徴。「まちの風景について背景を踏まえながら読み取る力」「既存の都市から文化資源を見出し再評価する力」「観光まちづくりに活かす方法を考える力」を身につけ、まちの印象に論理的な深みを加えることを目標としています。指導の際、教授が心がけていることは「ゴールを設定しない」こと。調査に必要な手順や手法を共有した後は、学生が主体性をもって行動します。自身の行動に責任をもつと同時に一つひとつの試行錯誤が学生の成長につながると信じているからこその方針です。
未来は、より複雑で流動的なものとなるでしょう。だからこそ何事に対しても柔軟に垣根なく考え、構想・実行していくバイタリティが大切です。ぜひ関心のあるテーマを追求してみてください。その手法は私が教えます。
専門分野/文化遺産論、観光まちづくり
略歴/東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻を修了後、東京大学客員研究員を務める。また東京理科大学や慶應義塾大学などで教壇に立った。2011年に山口県立大学 国際文化学部へ入職。2016年より現職。「動詞」を創出する行動論的アプローチによる新しいまちづくり手法に関する研究にて第7回平野健一郎賞を受賞。2018年から2019年にかけてベルリン工科大学客員研究員も務めた。博士(工学)。