私が研究しているのは、火力発電所や工場などの排ガスに含まれる有害物質を電気の力で取り除き、空気をきれいにする技術。空気中にイオンを作り、浮遊する粒子を帯電させ、静電気の力で塵を集める「電気集塵装置」です。液体・個体であればPM2.5やウィルスなど何でも集められ、6ナノメートルから10ミクロンの物質が研究対象です。日本の火力発電所や工場の40~50%が、この技術で排ガスをきれいにしているんですよ。現在は、この技術を船舶に応用する研究を行っています。火力発電所や工場の電気集塵装置は2~3階建てのビルよりも大きい。それを300mクラスの貨物船やタンカー、客船に搭載するには、よりコンパクトにする必要があります。これまでの研究で船舶に対応した集塵技術はできているので、実用化に向けた研究を進めています。
浮遊する空気がどう帯電して移動するのかという電気集塵装置のシミュレーションやディーゼルエンジンの排ガスの集塵、ウィルスや菌を電気的に不活性化する方法など、興味・関心のある分野に合わせた研究に学生一人ひとりが携わっている。「大学での学びや研究のベースとなるのは、8~9割は高校レベルの知識。高校までの理科をしっかりと修得することが重要です」と瑞慶覧先生。さらに、研究室では大型船舶が空荷の時に船体を安定させるために重しとして積み込む水「バラスト水」を浄化するという、生態系を守る研究も手がけている。
「電気」は様々なもののベースです。コンピュータや電気自動車はもちろん、人間の身体に起こる現象も電気信号によるもの。「電気」を学ぶことが理系分野の理解を深め、将来の選択肢も広げてくれると思いますよ。
武蔵工業大学大学院博士課程修了後、電機メーカーに就職。11年にわたり電気集塵装置の研究を続け、2010年4月より神奈川工科大学准教授。2015年には同大学の教授に就任。「静電気学会 論文賞(2019年)」「ISESP International Fellow Award(2016年)」など受賞歴多数。著書に「空気浄化技術 命を守るきれいな空気に向けて」(共著/養賢
堂/2011年)がある。