2008年、それまで勤めていた出版社を辞めて、写真家集団の事務所へ入りました。組織ではなく私個人の名前にお仕事をいただく日々が始まって、自由であると同時に大きな責任を感じています。人を撮影することが多い私がいつも心がけているのは、よそ行きではない「その人らしい」写真を撮ること。そのためにはまず私が自分を出して、被写体の方に信頼してもらうことが大事なんです。撮影の現場では、軽く冗談を言ったり少しお話をしたりして、被写体の方の気持ちをほぐすように努力しています。もちろん、事前にその方の情報も下調べして臨んでいますよ。そうやっていざカメラを構え、自然な表情を引き出せたときに大きな充実感を感じますね。
もともとは音楽が好きだったんです。高校時代に大好きなバンドがいて、彼らの記事を音楽雑誌で追いかけるうちに、「この写真いいな」「ずっと同じカメラマンが撮り続けているんだ」と、写真についていろいろ気づくことがあって。それをきっかけに「写真は面白そうだ」と、カメラを買って友人を撮るようになりました。東京ビジュアルアーツ入学後は、「撮影→現像」の繰り返し。授業の後はよく先生と飲みに行って、写真を土台に生きていくことの心構えを教えてもらいました。作品だけで生きていくのは大変だから、仕事としての写真も撮る。仕事と作品、両方が必要なんだ、と。そのとき聞いたことは、今も私の人生の中に生き続けていますね。
パノラマ写真の連作『日々をのぞく』を撮り続けていきたいですね。この連作のテーマは「人の妙」。日常生活の中で人が意識せずに取るポーズや表情、その思いがけない面白さを切り取っています。私は、そこに、人間のかわいらしさ・人間の人間らしさが表れていると思うんです。だからカメラを向けるんですよね。パノラマカメラはそれほど大きくないので、被写体も撮られていることを意識しないところがいい。長いサイズの中での配置の面白さも狙っています。それからもう一つ、これからもっと撮っていきたいのが、昔から好きだったミュージシャンの写真。ポートフォリオを持って出版社をプレゼンに回り、撮影依頼が増えるよう頑張っています!
(株)総合メディア研究所STING 所属/写真学科/2005年3月卒/静岡で過ごした高校時代から写真の面白さに目覚め、東京ビジュアルアーツ入学。卒業後は女性週刊誌の写真部に所属し、芸能人のポートレート、記者会見撮影、生活情報写真など、日本全国を飛び回って撮影を続けた。一方でグループ展や個展にも積極的に参加。特に2008年の「プロデュース:高橋周平、企画・監修:大野純一『新進気鋭の写真家12名によるリレー個展』」は話題を呼んだ。2008年、総合メディア研究所STINGに移籍。「千葉美幸」という独立カメラマンとして、ドキュメンタリー、ポートレート、広告など、様々な分野で写真作品を発表し続けている。