受験の緊張や不安をはねのける体と心のテクニック4
「緊張しやすい」「なかなか勉強に集中できない」という悩みを抱える高校生は多いはず。勉強への不安をなくし、どんなことも興味をもって楽しく学べればどんなにいいかと願う気持ちは誰にでもあるだろう。
そこで今回は、能楽師として活躍する安田登(やすだ・のぼる)さんに、受験や勉強への緊張をやわらげ、前向きに取り組むための「心と体のテクニック」を教えてもらった。
<体のテクニック編>
●歩く時間をもつ
時速4キロ(普通は5キロくらいなので意識してゆっくりめに歩く)を目安に、1日10分でもいいので、歩く時間をもとう。足は第二の心臓といわれ、足裏を刺激することは思考の活性化につながるといわれる。荷物はリュックなどで背負い、手には覚えたいことを書いたメモだけもって。メモはA4サイズの2つ折りなど、自分の手になじみやすい大きさにすると愛着がわき、記憶に残りやすい。
●ストロー呼吸
「緊張をほぐすには深呼吸するといい」とよくいわれるが、緊張とすると深呼吸などはできないもの。が、そんな時にでも深呼吸ができてしまうのが「ストロー呼吸」。普段からの練習が本番でものをいう。まずストローを口にくわえ息を吐く。この時意識していつもより長く吐く。吸う時はストローを外し、意識して短く吸う。この呼吸を1日5分間、毎日練習する。すると自然に深呼吸ができるようになる。本当の深呼吸ができれば、本当にリラックスできる。ドキドキしやすい人、深呼吸してもリラックスできないと感じている人は、ぜひ試してみよう。
<心のテクニック編>
●教える機会をもつ
教えようとしてみて初めて、自分があまりわかっていなかったことに気づいたりする。誰かにわかりやすく伝えようと努力すると、一人で勉強するより自分自身の理解もずっと早く進むし、知識が定着しやすい。もし教える相手がいないなら、教えているつもりで声に出して「ひとり授業」をすると効果的。
安田さんはこの方法で難関の国家資格「中小企業診断士」の試験に一発合格したそうだ。
●作者や採点者の立場に立って考える
例えば長文読解の問題などは、その文章を書いた作者の立場になって読む癖をつけるといい。どんな難しい文章でも、書いた人に共感し、感動する心をもてば理解できたりする。日頃から「そうだったのか!」「すごい!」と感動する気持ちを育てよう。また解答する時は試験を採点する人の気持ちになることが大事。どんな答えを書けば評価してもらえるか、喜んでもらえるか、考えながら解答する癖をつけることが、高得点への近道なのだ。
ちなみに安田さんは27歳で「能」の世界に飛び込んだ異色の経歴の持ち主。修業を重ねる中で、能の独特の声の出し方や体の動かし方が、ストレスと上手に付き合ったり、こわばってしまった体をほぐして楽にするなど、現代人に役立つヒントがたくさんあることを発見したという。今回紹介した手法もその一部だ。ぜひ一度試してみて。
■安田登(やすだ・ のぼる)
1956年生まれ。元高校教師。能楽師。米国発祥のボディワーク「ロルフィング」の施術者。能だけでなく、心理学、「論語」「古事記」などの古典にも精通し、講演や研修の講師経験も豊富。著作も数多く、その一部は大学入試の問題にもなっている。『能に学ぶ「和」の呼吸法』(祥伝社)では「織田信長は、なぜ桶狭間の戦いの前に『敦盛』の舞を舞ったのか」という歴史上の問題に迫るなど、扱うテーマは多彩。