相模国一宮にあたり、現在の神奈川県高座郡寒川町に鎮座する「寒川神社」。その中にある方徳資料館が、私の仕事場です。神社の所蔵資料の管理・保存・展示を行いながら、専門として研究しているのは、寒川神社を含めた相模国の主要神社五社が参加する「国府祭」という祭について。いつから始まり、どのような変遷を経て現在の形態になったのか。その歴史をひも解いています。年1回、テーマを定めた特別展示は、日頃の研究成果を生かす場でもあるため自然と力が入ります。来館者へ向けて解説しながらその表情をよく観察して、「面白い!」と感じてもらえるポイントを膨らませて話すようにしています。
学芸員というと知的なイメージを持たれがちですが、研究ばかりしているわけではありません。実は事務作業や、力仕事も多いのです。展示品そのものや、展示をするためのケース、展示パネルなど、大掛かりなものも運ぶため、意外に体力が必要。展示品には兜や刀剣などもあり、大学の実習で覚えた文化財の取り扱い方がとても役に立っています。展示パネルも、一から自分たちで作ることがほとんどです。思い出深いのは、神社の周辺エリアの戦後と現代を比較する、航空地図のパネルをつくったこと。約100パーツの写真を、国内だけでなくアメリカからも取り寄せ、歪みを補正しながら繋ぎ合わせて無事に完成させました。
資料館には貴重な資料がたくさんありますが、まだまだきちんと整理しきれてはいません。私はこの未整理の資料をすべてデジタルデータに変換して、データベース化する仕事に取り組んでいる最中です。資料がすべてデータ化されれば、館内の情報管理がしやすくなることはもちろん、展示にデジタルデータを活用できるだけでなく、全国の博物館と資料を貸し借りする際のネットワークづくりにもなります。資料の山を有効活用するためにも、ぜひ完成させたいです。また、例えばプロジェクションマッピングなど新しい展示手法を取り入れるなどして、寒川のことをもっと多くの人に知ってもらう活動ができたらと思います。
宗教法人寒川神社総務部資料課勤務/文学部 国史学科/2007年3月卒/歴史が好きだった子ども時代、映画「インディ・ジョーンズ」を観たことをきっかけに考古学者を目指す。大学内に博物館があり、実習科目が充実していたことから皇學館大学の国史学科へ進学したが、考古学を扱うゼミがなかったことから日本古代史のゼミに所属。奈良時代・平安時代を専門に研究し、貴族が残した日記などの資料から、その頃の生活や儀式、感情豊かな当時の人間模様を読み解くうちに、次第にその魅力にのめり込む。卒業後は考古学系の博物館で勤務したあと、「自分の専門を生かしたい」という思いから、寒川神社の方徳資料館の学芸員となり現在に至る。