臨床工学技士(ME)は、医療現場で使う機器の操作や保守、管理などを行う専門家。チーム医療の一員として、医師や看護師らとともに医療現場を支えています。病気が発症して間もない急性期の患者さんの場合、1分1秒の違いが生死を左右することもあり、手術に立ち会う際には大きな責任とやりがいを感じます。以前、意識消失の状態で緊急搬送されてきた患者さんの治療に加わり、人工心肺装置の操作を担当したことがありました。患者さんは心肺停止の厳しい状況でしたが、現場が上手く連携することで一命を取り留めることに成功しました。後日、通院されているその方の笑顔を見たときには、この仕事に就いて本当に良かったと思いました。
臨床工学技士になるためには、工学分野の知識が必要です。私は理数系科目が苦手だったため不安もありましたが、入学して心配は無用だったと感じました。数学や物理などの科目を基礎から学ぶ授業があり、理解しにくい人のために補習授業も用意されています。国家試験対策でも、先生方が生徒の学習を熱心に支えてくれるので本当に助かりました。また、2年次にある病院での実習は、医療のプロになる前の、良い助走になりました。実習に参加して痛切に感じたのは、人の生命を預かる医療現場の厳しさ。自分に足りない知識を知り、医療人としての心構えを学ぶことができてとても有意義な体験になりました。
人工透析器、人工心肺装置、高度なMR診断装置など、現在の医療現場では、検査や治療の際に多種多様で非常に高度な機器が使われています。MEはそれらの機器類の操作に精通するだけでなく、いざというときに正常に作動するよう保守管理することも大切な仕事。病院の電源供給や施設保守にも精通しておく必要があります。そのスキルは、自分の病院だけでなく、台風や地震などの災害時に、広く社会のために役立てることができます。私自身も災害時に現場に派遣される「DMAT(災害派遣医療チーム)」に登録しています。医療の高度化に伴い、MEの重要性は、今後もより高まっていくことでしょう。医療や工学の分野に興味がある人はぜひ注目してください。
小田原市立病院勤務/臨床工学科/立正大学心理学科卒業後、医療機器メーカーに勤務。その後、同社を退社して読売理工医療福祉専門学校で学び、臨床工学技士国家資格を取得。現在は公立病院に勤務し、MEとして活躍中。「私は会社に勤務した後に読売理工に入学しましたが、同じように社会人経験を経て入学したクラスメイトも多く、楽しい学生生活を過ごしました」