ものごとを決めるとき、私たちはどのような情報に影響を受けるのでしょう。そして、どのように誤りを犯し、逆にどのように優れた判断を下すのでしょう。多くの人は、混んでいるレストランは入ったことがなくても「おいしそう」と推測し、ガラガラのレストランは「おいしくなさそう」と推測するのではないでしょうか。正しいかどうかはともかく、このような経験則に基づく推測によって、私たちはいろいろなことを適切に判断しています。最近は、こういった経験則の性質を探る研究に力をいれています。認知科学の世界では、心の状態を数式で表現することをめざし、その不思議を解明していくことをめざします。心に興味がある人はもちろん、数学を使って何かをやりたいという人、プログラミングを使って何かやりたいという人にもおすすめの分野です。
本田先生が担当する『人工知能・認知科学概論』は、認知科学における2領域「思考・意思決定」と「身体性認知・制御」の基本を学ぶ授業です。前半の「思考・意思決定」では、人間の意思決定といった高次認知プロセスについて学習します。さらに、人工知能が生み出す知性についても学び、人間と人工知能がもつ知性の特徴を理解します。後半の「身体性認知・制御」では、人間が体を動かすしくみについて、その謎を解明するために心理学や工学研究がどのような取り組みを行ってきたかを学習。これまでに得られた知見についても学びます。
人間の性質を理解しようとする認知科学の学びは、人工知能の研究に応用できます。また、人工知能の学びは、人間の性質を考え直すきっかけになります。双方への理解を深め、人工知能と人間の共存をめざしましょう。
専門分野:認知科学、意思決定科学、認知心理学
2007年、東京工業大学 社会理工学研究科 人間行動システム専攻 博士課程修了。国立情報学研究所 特任研究員、東京大学大学院総合文化研究科 特任研究員などを経て、2020年より追手門学院大学 心理学部 心理学科へ。著書に『よい判断・意思決定とは何か ―合理性の本質を探る―』(共立出版/2021年)など。