人が得られる感覚情報の約8割は「視覚」によるものであり、近年、医療・福祉の場で重視されているQOL(Quality of Life:生活の質)とも密接に関係しています。日本における中途失明原因の第一位である「緑内障」は、40歳以上の20人に1人が発症する進行性かつ“治すことのできない”不可逆的な疾患。現在、最も有用とされている対処方法は「早期発見」と「進行を遅らせるための投薬」となります。私の専門分野は、緑内障の早期発見をめざした「光干渉断層計を用いた網膜画像解析と、網膜機能などの関連を検討した臨床研究」。緑内障の初期変化は、視野異常よりも前に網膜や視神経に異常が現れるため、光干渉断層計を用いた有用な解析方法の確立を検討しています。さらに、頭蓋内病変によって起こる視野障害と網膜の変化を検出する研究も行っています。
山下教授の担当授業「視能検査学」では、眼科診療の基礎となる眼科検査の意義、原理、評価などの基本知識を理解します。続く「視能検査学実習」では、座学で学んだ基本知識に基づいて実践に取り組み、正確な測定と判定ができることを到達目標に検査技術を習熟。専門知識をもたない患者に対して検査を行うには、まず自身が検査の“目的”と“原理”を正確に理解する必要があります。実習では、学生を10名程度の少人数グループに分け、それぞれに担当教員がついて綿密な指導を実施。知識と技術を接続し、着実な理解を促します。
視能訓練士は、乳幼児からお年寄りまで幅広い年齢層の眼の健康に寄り添う仕事。「見る」という機能を管理することは、社会において非常に大きな役割と言えます。多くの人の豊かな生活のため、一緒に学びましょう。
専門分野/神経眼科、緑内障、画像解析
略歴/川崎医療福祉大学 医療技術学部感覚矯正学科 視能矯正専攻(現:リハビリテーション学部視能療法学科)を卒業後、同大学院修士課程にて学びを深める。病院眼科にて現場経験を積み、2008年、助教として川崎医療福祉大学へ入職し教鞭をとった。2022年より現職。現在も川崎医科大学附属病院にて現役の視能訓練士として臨床に携わる。博士(感覚矯正学)。