私の専門分野は公衆衛生学・食品衛生学です。食品中の細菌・ウイルス・寄生虫といった病原体を、早く・簡単に・確実に検出するにはどうすればよいか、また、病原体が含まれている食品を喫食した際に、どのように病原体が人体に吸収され、症状を誘発するのかを研究してきました。「病原体の検出」は、感染性疾病の理解の原点です。検査は「精密」だけでは不十分です。安価で簡易かつ、確実に実行可能な検査法の確立が重要です。近年、シカやイノシシなど、野生動物を「ジビエ」として食用に利用することが奨励されています。最近の研究成果としては、電源のない山間部でも食中毒ウイルス・細菌を検出する検査システムの開発や、シカ肉中に下痢を起こす寄生虫(サルコシスティス)を発見したことがあげられます。
私が所属する学科では、「アレルギー制御」が共通した研究テーマになっています。私の得意分野は「原因物質の特定とその性状解析」です。そこで考えたのが、「食べ物でアレルギーを治すには・・・」です。漢方薬研究の流れから、食用キノコは人体の免疫機能を刺激し、アレルギー体質を通常に戻す効果があるらしいことを知りました。現在は、エノキタケやマンネンタケ中の「アレルギー抑制タンパク質」を研究対象とし、その遺伝子解析、組換えタンパク質作成、その調理学的性状の解析を進めています。
私はもともと獣医師になるつもりでした。それがどうして大学教授になったのか。「原因を突き止め、その影響を確かめる」ことが好きだったからです。ぜひ皆さんも、「自分は何が一番好きなのか」を見極めてください。
大阪府立大学大学院 農学研究科 獣医学専攻修了。同学にて准教授を務める。その後、国立医薬品食品衛生研究所の室長、岩手大学や甲子園大学の教授を務め、2020年に千里金蘭大学 生活科学部 食物栄養学科(現:栄養学部 栄養学科)の教授に就任。