「芸術文化観光」を一つの学問として学べる新しい専門職大学の学長をしています。今、私が挑戦しているのは、大学がある豊岡・但馬を世界が憧れる地域にすること。私が芸術監督をしていた城崎国際アートセンターは、ここ10年で地名度が高まり、すでにアジアの若いアーティストにとってはある種の聖地になっています。この大学も、そのように世界が憧れる場所にしたいというのが私の願いです。日本で芸術文化観光に特化したスペシャリストを養成する。これは日本の未来にとって重要になると考えています。本学では実践的なカリキュラムに力を入れており、幅広い実習先を用意しています。様々な体験だけではなく、そこから学びを深めていけることが大きな特徴です。芸術文化観光以外でも幅広い分野で活躍できる人材を育成したい。それが私の夢です。
同学では、1年生全員が平田先生の「コミュニケーション演習」を履修。授業はコミュニケーションゲームから始まり、チームで演劇も創りあげる。「演劇で培うコミュニケーション力とは、一番に共感力があります。つまり、価値観や異なる文化的背景を持った人を理解するということ。授業では相手を演じる、協働で何かを創ることにより、他者理解を深めていきます。これは観光分野に進む人に最も重要な能力。『他者に思いをはせることの大切さ』を、演劇を通じて学んでください」と先生。講義は演劇経験のない学生も楽しく学べる内容である。
演劇もダンスも観光も、人を楽しませること、人を幸せにすること、あるいは人に新しい価値観をもたらすことが究極の目的です。この大学での学びを通して、人の心を動かせる学生を育てたいです。
略歴:1962年東京生まれ。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。日本を代表する劇作家、演出家。大学在学中に結成した劇団「青年団」を率いて、こまばアゴラ劇場を拠点に国内外で幅広く活動する。『東京ノート』、『その河をこえて、五月』などの作品で、数々の賞を受賞。2021年4月より、芸術文化観光専門職大学学長に就任。現在、大学がある兵庫県豊岡市在住。主著に『わかりあいないことから』(講談社現代新書)など