大学の受験料、入学までにかかる平均総額と上手な貯め方をFPが解説
大学の入学時には、入学金や授業料などの費用がかかります。なかでも、見落としがちなのが大学受験にかかる費用です。
併願校が増えるとその分大学受験料がかかり、入学納付金の準備も必要に…。
住んでいる地域によっては試験場までの交通費や宿泊費もかさみます。
今回は、大学受験にかかる費用等について、FPの酒井富士子さんにわかりやすく解説していただきます。
目次
酒井富士子さん
経済ジャーナリスト/金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。
日経ホーム出版社(現日経BP社)にて『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長を歴任。リクルートの『赤すぐ』副編集長を経て、2003年から現職。
「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。
大学の受験料はいくら?
※私立大学の1回の受験料は3万5000円程度が平均
大学入学共通テストテスト、国公立大学、私立大学の受験料
大学入試には、「一般選抜」・「学校推薦型選抜」・「総合型選抜」などさまざまなタイプがありますが、ここでは、大学入試の柱となる「一般入試」の受験料について解説します。
まず、大学入学共通テストは、科目数が2教科以下の場合が12,000円、3教科以下の場合は18,000円となっています。
国公立大学の二次試験は、1校あたり1万7000円程度、私立大学の一般選抜は、1校あたり3万5000円程度(大学や学部によっても異なる)です。
国公立大学の一般選抜受験は、1次試験の役割を果たす「大学入学共通テスト」と、2次試験の得点の合計で合否が判定されます。
受験料は、前期日程と後期日程をそれぞれ1校ずつ申し込んだ場合、1万8000円+1万7000円程度×2=5万2000円程度かかります。
さらに、大学入学共通テストの成績通知を希望する場合は、手数料として800円が加算されます。
「大学入学共通テスト」が利用できるところや、実用英語技能検定(英検®)、TOEICなど、民間の英語試験・検定を合否判定に活用するケースもあり、国立大学に比べると受験にかかる費用はやや複雑です。
※出典 公益財団法人 生命保険文化センター「ライフイベントから見る生活設計」
1人あたりの受験費用の平均は30万円
日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(令和3年)によると、1人あたりの受験費用の平均は、国公立大学の受験費用で「27.7万円」、私立大学文系は「31.3万円」、私立大理系が「32.2万円」。受験費用だけで、30万円程度かかることがわかります。
受験料は受験校の数によって異なる
※何校に出願するか、併願校を考える際は、受験料のことも少し頭に入れましょう
大学受験は、滑り止めを含め、複数の併願校を受験するケースが多いため、受験校の数が多くなれば、当然ですがその分受験費用がかかります。なお、私立大学文系を受験した場合の平均受験費用は約31万円※。
遠方の大学を複数受験する場合は、そのたびに交通費や宿泊費が必要になり、保護者が付き添う場合はかなりの出費になることが予想されます。
その場合、発行に伴う手数料や、郵送料がかからないので、手間もお金も抑えることができます」(酒井さん)
日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(令和3年)
大学によっては、割引制度がある
大学によっては受験費用を節約できる場合もあります。大学入学共通テストが利用できる私立大学の場合は、一般入試に比べて受験料が安く済みますし、同じ大学の学内併願で2学部以降の受験料が割引になる制度を導入しているところも少なくありません。
ほかにも、1回の試験で、同じ大学の複数学部・学科に対して併願できる「全学部統一方式」を実施している大学も。
これらの制度を賢く利用すれば、お金の負担を抑えながら、合格のチャンスを増やすことができます。
住んでいる地域に近い場所で受験できれば、余計な費用をかけずに済みます。
受験する大学の試験会場はしっかり調べておきましょう」(酒井さん)
大学入学時にかかる費用
大学入学前に、授業料とは別に100万円近い金額が必要
※胸をワクワクさせて参加する入学式。その前に入学金の納付も必要です
ここからは、大学入学時にかかる費用を見ていきます。日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(令和3年)によると、大学入学時にかかる費用は、国公立大学は、67.2万円、私立大学文系は81.8万円、私立大学理系は88.8万円です。
この結果から、大学入学前に、授業料とは別に100万円近い金額、受験校の数によっては、それ以上のお金が必要になることがわかります。
下宿をする場合は、新生活に必要な準備費用として新居を探すための費用や生活用品の購入にもお金がかかることを考慮しておく必要があります。
入学しなかった学校への納付金
グラフ内にある、「入学しなかった学校への納付金」とは、先に合格した併願校に支払う費用です。大学納付金は、合格発表から指定日までに納めないと、入学資格が失われてしまいます。
併願校の入試日程が志望度の高い大学よりも早い場合は、浪人を回避するために、先に合格した併願校に入学金を納める必要があるのです。
入学時手続きを行うのは、合格発表から1~2週間後という大学が多いため、期限に間に合うよう必要なタイミングにお金を用意しておく必要があります。
グラフを見ると、入学しなかった学校への納付金は10万円程度です。
入学を辞退しても返還されないケースがほとんどですが、その分の費用は確保しておきましょう。
私立大のみを受験する場合は、併願プランは慎重に検討すべきでしょう」(酒井さん)
大学入学のための費用はどうやって用意する?
※大学費用は親が時間をかけて貯金してくれていることが多いです
学資保険
「学資保険」は、契約時に定めた保険料を満期まで払い続けることで、決まった金額を受け取ることができる金融商品です。選ぶときは、返戻率が100%を超えているものを選びましょう。
100%以下のものを選ぶと、運用利益が悪い場合、保険料払込合計額よりも受け取れる満期保険金のほうが低くなる可能性があるからです。
また、受け取りのタイミングを確認しておくことも大切です。
子どもの誕生日が入学後に満期日を迎える場合は、満期を迎える前に解約することになり、元本割れしてしまいます。
気になる場合は、担当者に相談してみましょう」(酒井さん)
一般財形貯蓄
財形貯蓄とは、会社から振り込まれる給与から、自分で決めた額を天引きして、自動積立する貯蓄制度です。財形貯蓄制度には、一般、住宅、年金と3種類あり、教育費の準備には、使用目的が限定されていない一般財形貯蓄がよいでしょう。
積立期間は原則3年以上ですが、1年経過すれば中途解約も可能です。
財形貯蓄制度がない会社もあるので、自分の勤め先に財形貯蓄制度があるか確認してみましょう。
積み立て投資
投資信託とは、株式や債券などに投資した運用によって資産を増やす金融商品です。教育費を貯める場合は、つみたてNISAの活用がおすすめです。
通常の投資では、運用で得た利益に税金がかかりますが、つみたてNISAの場合は、年間40万円以下、最長20年間は運用で得たもうけにかかる税金がゼロになります。
毎月自動的に投資でき、払い戻しはいつでも可能なため、入学時に突然お金が必要になった場合にも対応できるのもメリットです。
教育ローン
入学前に納める必要がある初年度納付金がどうしても足りないという場合は、教育ローンを利用するのもひとつの方法です。教育ローンには、銀行や信用金庫などが取り扱う「民間の教育ローン」と日本政策金融公庫の「国の教育ローン」があります。
「国の教育ローン」は金利の低さが特徴で、現在(令和4年(2022年)8月22日時点)の金利は年1.80%。
長期固定金利で、子ども1人につき、上限350万円まで借入れることができます。
収入が低くても借りやすく、早期申し込みが可能です。
「民間の教育ローン」は、所得制限がなく、借入上限額が高めです。
金利は金融機関によって異なりますが、国の教育ローンに比べると高めに設定されているところが多いようです。
固定金利か変動金利か選べるケースが多く、用途の範囲も広めに設定されています。
不測の事態が起こりうることを防ぐためにも、秋ごろを目安に申し込みをしておくと安心です。
受験シーズンになると『金利引き下げプラン』など、さまざまなキャンペーンが登場するので、お得なものを検討してみてはいかがでしょう。
住宅ローンを利用している金融機関やメインバンクの担当者に相談してみるのも手です」(酒井さん) 」
奨学金
返済の必要がない給付型、返す必要がある貸与型(利子あり・なし)など、さまざまな種類がある奨学金ですが、支給されるタイミングが4月からになるので、大学入学に必要なお金を工面する方法には適しているとは言えません。前もって子どもと会話しておくことが大切
いかがでしたでしょうか。受験費用を含め、大学入学時には想像以上にお金がかかることがおわかりいただけたと思います。
前もって、受験について子どもとの会話を持ち、お金がどれくらいかかるのか、どこまで出せるのか、併願校をどう選ぶか、話し合ってみるとよいでしょう。
「これだけお金がかかるのだから、真剣に頑張ろう。学費をムダにしないようにしよう」という気持ちが芽生え、大学生活に対する意識も高まるはずです。
取材・文/回遊舎 監修/酒井富士子 構成/寺崎彩乃(本誌) ★関連記事をCHECK
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