読書感想文の書き方。簡単に書ける構成から差がつくテクニックまで、例文つきで解説!

読書感想文の書き方で重要なのは「序論」「本論」「結論」という構成を意識すること。
 
この構成に「本の情報」「本を読んでどんなことを感じたか」などを盛り込んでいくことで、伝わりやすい読書感想文を書くことができる。
 
今回は、読書感想文の基本的な書き方の手順から、一目置かれるテクニックまで、スタディサプリ講師で小論文のプロ、小柴大輔先生に詳しく聞いた。

今年の読書感想文は完全攻略間違いなし!


教えてくれるのは
小柴大輔先生
【2023年版】高校生の読書感想文おすすめ本25選!すぐに書けるコツを小論文のプロが解説

Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文のほか、小論文や総合型選抜・学校推薦型選抜対策講座を担当。

読書感想文とは

読書感想文でつけた読解力や表現力は大学入試にも役立つ

読書感想文とは、本を読んだ感想を文章にまとめたもので、夏休みの宿題として課されることも多い 。

読書感想文の目的は、読んだ本の内容を整理し文章にすることで、読解力や表現力を学び、感じたことを人に伝える力を養うことだ。

この力は、大学入試の小論文対策にも役立つものとなる。

読書感想文を書く前の心構え3

1. 興味のある本を選ぶこと

読書感想文を書く前の心構え、1つ目は、興味関心が持てる本を選ぶことだ。

まずは、自分が「面白そう」「読みやすそう」「作者を知っている」など、興味を持っている、または少しでも知っている本を選ぶことから始めてみよう。

興味がある本ならとりあえずページをめくることができる。

作者を知っているのなら、その作者の別の著書と比較することもできる。

それだけで、本へのハードルがぐっと低くなるはずだ。

そして、その本の情報を集めることも重要になる。

書評やレビュー、その本に関連するニュースなど、参考にできるものはたくさんある。

本を読んだらすぐに感想文を書こうとせずに、これらの情報にもよく目を通しておくことがおすすめだ。
\読書感想文におすすめの本を紹介/

読書が苦手な人でも、サクサク読める!楽しく読める!すぐに読める!

そして、読書感想文が書きやすい!そんな選りすぐりの本を紹介している。

さらに、読書感想文が書きやすい本の選び方を小柴先生が教えてくれた。

まだ本が決まっていない人は、リンク下の記事をチェック!


【2024年版】高校生の読書感想文おすすめ本45選!書きやすい本の選び方、書き方を解説!

2. 完璧に理解しなくてはならないと思わないこと

読書感想文を書く前の心構え、2つ目は、「本を全て読み、くまなく内容を理解していないと感想文は書けない」という考えを、自分の中から取り払うことだ。

たとえ一部だけでも、それが一言のセリフだとしても、そこで感情が動かされたのなら、感想文は書ける。

例えば、「同じ経験をしたから印象に残った」「今、自分が欲しい言葉だった」「自分が考えていることと正反対で驚いた」「表紙がかわいかった」「本の帯を書いている人を知っていた」など、書いてみるのもよいだろう。

これも、立派な読書感想文になる。
\ADVICE/

興味が持てる本を選んだら、その本や作者の情報を集めて、そちらから先に読んでみるのもよい方法です。

先に情報をインプットしておけば、読み進めながら○○のレビューで言ってたシーンはここだな」「作者が伝えたいテーマのクライマックスかな」とわかってきます。

その際、「ここは理解できた」「このセリフがいいなと思った」など、付箋を付けたりメモを取ったりおくと、あとで文章を起こしやすくなります。

最後まで読んでみて「わからなかった」「作者と意見が合わない」と思ったら、その感情もメモしておきましょう。

こうすることで、原稿用紙を前にしても「書くことがない!」ということがなくなりますよ。(小柴先生)

3. 読書感想文の構成をおさえること

そして最後に、読書感想文を書く前の心構え、3つ目は、書く内容、どんな順番で書くのかなど、読書感想文の構成を理解しておくことだ。

原稿用紙を前にしてどうしたらいいかわからないという人は、この構成を理解していないことが多い。

そんな人でも、基本的な構成をおさえることで、スムーズに書けるようになるはずだ。

次から詳しく説明しよう。

読書感想文の書き始め方

まずは本のタイトルと著者名から書いてみよう

読書感想文の書き始めは「どんな本を読んだか」だ。
 
社会問題をテーマにしている本など、その時代背景が必要な場合は、本が書かれた年代も書いておくと、後で言及しやすくなる。
 
加えて、「本を読んでどんなことを感じたか」「本を読んで考えた意見」なども、盛り込んでいこう。
 
この3つを組み合わせることで、書きやすく読みやすい読書感想文になる。
\ADVICE/

最初の一文で情報を端的に伝える書き方は、小論文でも同じです。
 
情報を伝えることで、読み手にも心構えが生まれ、読む準備ができるので、好印象に繋がります。(小柴先生)

読書感想文の構成

読書感想文の基本的な構成は、序論、本論、結論となる。

読書感想文を書くには、前述の「どんな本を読んだか」「本を読んでどんなことを感じたか」「本を読んで考えた意見」の3つの要素を、この基本的な構成にあてはめていくことが有効だ。
 
小論文や大学のレポートなどでも多用される一般的な型なので、おさえておくとよいだろう。
 
それぞれ、どんなことをどのように書くのか、『吾輩は猫である』の読書感想文を例にして紹介しよう。
 
多くの学校の教科書にも載っている有名な作品なので、読んだことがあるという人も多いのではないだろうか。

ここでは、この例を参考に、より理解を深めてほしい。

【序論】その本の情報を書く

序論で書くのは、その本の情報、つまり書誌情報だ。
 
書誌情報とは、出版社はどこか、著者のプロフィール、発行部数などだ。
 
その他、メディアミックスやネットでの評判などを参考にして、記述を膨らませてみよう。
【例】

今回、私が選んだ本は小説『我輩は猫である』だ。この本の作者は夏目漱石で、明治の作家だ。彼にとって、この本が小説の第一作だった。明治38年に同人誌である『ホトトギス』に発表して好評を博し、同年には大倉書店から書籍化されている。以降、現代に至るまでに多くの書店から刊行され、読み継がれてきた名作だ。

私が選んだ本は○○社の文庫本だが、他の出版社からも出ていた。この出版社の文庫本を選んだのは、表紙の猫の絵が可愛かったのと、作者が発表した当時の表紙が載っていたからだ。

主人公の猫『我輩』は、漱石が37歳の時に住んでいた家に迷い込んできた野良猫だという。猫が死んだ時、漱石は親しい人たちに猫の死亡通知を出した。相当可愛がっていたのだと思う。

【本論】心を動かされた箇所の感想を書く

本論で書くのは、本を読む前の自身の知識、心を動かされた箇所、そしてその部分からどんなことを感じ、考えたか、読む前と読んだ後でどう変わったのか、などだ。
 
ここで紹介する例では、読む前と読んだ後でどう変わったのか、「比較」というテクニックを用いている
 
すでにあった知識や印象を書き、それを踏まえた意外性や感情の動きを書きながら、読書前と読書後の比較を入れることで、内容を膨らますことができる。
 
自分が心を動かされたシーン、著者が書きたかったであろうテーマなどに考えを巡らせてみよう。
【例】

実は私はこの名作の、最初の一文『我輩は猫である。名前はまだない』しか知らなかった。しかし、「猫である」というのだから、「猫」の世界から見た人間の生態を観察した小説だと思っていたのだ。

ところが我輩は、『吾輩はどこまでも人間になりすましているのだから、交際をせぬ猫の動作は、どうしてもちょいと筆に上のぼりにくい。迷亭、寒月諸先生の評判だけで御免蒙こうむる事に致そう。』と言っているではないか。我輩は、苦沙弥先生と暮らしていく内に、猫の世界に生きる猫ではなく、人間社会に暮らす猫に擬態した人間として生きているのだ。

私の家には猫がいるのだが、確かにうちの猫も自分を人間だと思っている節がある。そして、私の様子を冷めた目で遠くから眺め、時には心配そうに声をかけてきて、たまに甘えてくる。その姿はとても尊い。

先に挙げた我輩の人間宣言の一文は、漱石が猫を可愛がり、愛し、観察していたからこそ出たものだろう。

【結論】意見・疑問などを書く。締め方は自由でよい

結論には、感想文を締めるための文章、もっともらしい答えのようなものを入れなければいけないと思っている人もいるかもしれないが、必ずしもそうとは限らない。
 
いきなり文章を切ってしまうのはどうしても不自然に感じるのであれば、「(自分の考えや疑問)ではないだろうか」で終える方法もある。
 
また、「こんな人にお勧めだ」「こんな人に読んでほしい」と、次に感想文を書く人にバトンを渡す締めくくり方も面白いだろう。
【例】

・猫が好きな人に読んで欲しい。そして夏目漱石と猫談義をしながら読み進めてほしい。
 
・純文学は難しいという人には、まずこの本を薦める。印象が大きく変わるはずだ。
\ADVICE/

締めの文章は、かっこいいことを書こうと気負いすぎてしまうと書けなくなってしまうものです。
 
ですから、「正解を書こうとしなくてもいいんだ!」と割り切ってしまうのもひとつの方法
 
ここでは、簡単に書く方法として、型に沿って書く方法を紹介しましたが、読書感想文の型は小論文の型ほど明確な決まりがあるわけではありません。
 
例えば、ある専門的なテーマの読書感想文なら
 
・看護師を目指す人にこの歴史を知ってほしいと思った。
 
・建築系に進もうとする人に、今後の環境課題に立ち向かうこれらの技術開発秘話は、大いに参考になるのではないだろうか。
 
など、書くのもよいでしょう。(小柴先生)

読書感想文で差がつくテクニック

テクニックをマスターしてワンランク上の読書感想文を目指そう

読書感想文の内容を充実させるテクニックとして、読み手を想像して書く、過去に読んだ本と比較して書く、自分が続編を書くとするならどうするかを書く、3つのことを紹介しよう。
 
これらのテクニックは、人と差をつけたい!オリジナリティのある読書感想文を書きたい!という人には特におすすめだ。
 
前述の読書感想文の基本的な書き方をおさえたうえで、ぜひ挑戦してみよう。

読み手を想像して書く

壁打ちでは文章が出てこなくても、誰に感想を語るのか想定することで考えがまとまり言葉にしやすくなる
 
例えば、友人に紹介するスタイルなら、LINEでのやり取りを想定して書いてみてはどうだろう。
 
過去の自分に語るスタイルなら、「未熟だった中学生のオレよ、高2の夏、オレはある本に出合って変わったのだ。その本とは~」と、自分と向き合うきっかけにもなる。
 
未来の自分に語るスタイルで「社会人になり、家族ができ、すっかりこの本を読んだことを忘れているであろう20年後の私に向けて、高2の夏に出合ったこの本の鮮烈な印象を書き残す」とすると、自分の進路と絡めた文章が出てくるかもしれない。
\ADVICE/

読書感想文を一種の「推し活」として考えてみてはどうでしょう。
 
なぜこの本を選んだのか、どこが面白くて何に対して共感したのか、どんな人にお勧めか…など、その本を推す理由を書くのです。
 
自分の感情を言語化しなければと思うと、少し堅苦しく感じてしまうかもしれません。
 
しかし、推しの魅力を伝えようとすれば、持てる語彙を駆使してでも語ろうというやる気が生まれます。
 
「この本のここがすごい」「このセリフがすごい」「主人公がすごい」「作者のプロフィールもすごい」「知られざる歴史がすごい」「技術がすごい」など、心を動かされた部分を、自分の感情も併せて書くことができるのではないでしょうか。(小柴先生)

過去に読んだ本と比較して書く

前述の『吾輩は猫である』の例では、読む前と読んだ後でどう変わったのかを「比較」して書くというテクニックを紹介したが、同じテーマについて書いた本を過去に読んだことがあるのなら、その本と今読んでいる本を「比較」してみてもよい。
 
作者の考えの違いや書かれた時代の違いなど、比較対象はたくさんある。
 
前に読んだ本と同じテーマの本なら、予備知識があるので読みやすいだろう。

自分が続編を書くならどうするかを書く

自分ならどんな続編を書くか、その理由やキャラクター設定の考察も含めて書いてみてはどうだろうか。
 
パロディやパスティーシュ(作風の模倣)でもよい。
 
普段からドラマの続きを想像したり、漫画のアナザーストーリーを創作するのが好きという人には特におすすめしたい書き方だ。
 
想像力を発揮して楽しんで書いてみよう。
 
きっと注目される読書感想文になるはずだ。

読書感想文を原稿用紙に書く時の注意点

原稿用紙の使い方には決まりがある。
 
小論文や志望動機書などを書く際にも必須の知識なので、読書感想文を書くこの機会に、ぜひ習得しておこう。

題名と名前の書き方

題名は、上を2,3マス空けて書き始める。

自分の名前は、下を1マス空ける。

姓と名前の間は1マス空ける。

段落の書き始め

本文の書き始めや、改行して新しい段落にする場合は、上を1マス空ける。

改行するたびに、1マス空けを繰り返す。

句読点は1マスに

句読点(「。」や「、」)は、文字と同じように1マスに1つ書く。
 
また、句読点が行頭に来る場合は、その文章の最後のマスに文字と一緒に入れるか、マスの外に書く。

拗音「ゃ・ゅ・ょ」・促音「っ」

小さい「ゃ・ゅ・ょ」や「っ」は1マスを使って書く。

行頭に来ても構わない。

会話文やかぎかっこ

会話文は、原則として改行する。会話のかぎかっこは1字下げしない。
 
「」は会話文や語句を引用する際に使う。

また、強調したい言葉にも使用する。
 
『』は書名を表すときに使用。本書の中の章や項目は「」。

また、「」の中でさらにかぎかっこを使用する場合は『』を用いる。

読書感想文に取り組むメリット3

本を読んで言語化することで、自分の考えをまとめて伝える力がつく

ここまで、夏休みの課題である読書感想文を攻略する方法を解説してきた。

しかし、大学受験を考える高校生にとって、読書感想文は自分をアピールできるツールでもあることを知っているだろうか。
 
また、読書感想文の課題をきっかけに、新しい自分を発見したり、視野が広がったりすることも大いにある。
 
次の効果効能を読んで、ぜひ前向きに挑んでもらいたい。

1. 自己発見の驚きとよろこび 

自分がどんな言葉に感銘を受けるのか、どんなストーリーに共感し反発するのか、これらを読書は教えてくれる。

本を通じて新たな視点や考え方に触れることで、創造力が刺激され、自分自身をより深く知ることができる。

また、名言から人生観が変わるということも多い。

読書は自己探求の旅において貴重なツールなのだ。

2. 内面を言葉にすることで癒しの効果と語彙力の向上

心の声をあえて言葉にすることで癒しが得られるという。
 
言葉にならないと安易に断念してはいけない。
 
心の叫びは、言葉にすることでより理解でき、通じるものだ。

3. 学校推薦型選抜の志望理由書や面接対策

受験生なら読書は必修科目。
 
学びたいくらい興味があるのに、その分野の本を1冊も読んでいないのでは話にならない。
 
反対に、本を読んで受けた影響や感想を話せることで、本気度を伝えられる。
 
読書感想文は小論文対策にも有効だ。

\ADVICE/

批評や論文を書けるようになるための、最初の一歩となるのが「読書感想文」です。
 
できるだけ効率よくその本を理解して、読み手に情報を与え、自分の考えも簡潔な文章で述べる。
 
この能力は、大学入試の際の小論文や、大学に入ってからの論文作成にも役立ちます。
 
宿題なんて面倒くさいと思わず、ぜひ挑戦してみてほしいですね。(小柴先生)

文/櫻庭由紀子 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌) ※2024年6月更新
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