小論文例文集|5つの問題種類別に全文公開!合格をつかむ書き方をポイント解説

小論文そろそろ対策しなきゃ…とやみくもに解き始めるのは、時間も体力ももったいない!

なぜなら、目指す学校の出題傾向によって、論点やまとめ方は結構異なるものだから。出題傾向ごとに、ポイントを押さえること文章全体のリズムをつかむことが、得点アップの近道となる。

5つの出題傾向別に、スタディサプリの小論文講師・小柴大輔先生に教えてもらった。
教えてくれるのは
小柴大輔先生



東京巣鴨にある大学受験専門塾「ワークショップ」で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導。感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。

スタディサプリでは、現代文のほか、小論文やAO・推薦対策講座を担当。

大学入試における小論文とは?

高校までの先生から教わる学習とは異なり、大学は主体性をもって学ぶ場所である。課題を掲げ、議論や調査・研究を重ね、結論をまとめて発表――といった大学での学問に必要な素養や姿勢を見極めるために、小論文が課されている。

この入試のための小論文は、課題を正しく把握し、根拠を示しながら論理的に説明できればOK。読む相手を感動させたりうまい表現を使う必要はないので、作文や読書感想文が苦手でも大丈夫。

まずは、小論文の基本を解説した記事を読んでその概要をつかんでおこう。

小論文の評価基準とは?

一見正解がないように思える小論文だが、入試としての評価基準がしっかりと設けられている。
  • 小論文の「構成」が成立しているか
まずチェックされるのが、小論文全体の構成。理想の形は【序論+本論+結論】の三部構成。作文ではないので奇をてらった構成は必要はなし。設問に沿って、“論じる”順番がきちんと組み立てられているかどうかが問われる。

構成を成り立たせるためには、指定された文章量をどう配分するかも大切。目安は「1:8:1」。ガチっとした決まりがあるわけではないから、【序論】を厚め、【結論】を厚めでも問題ない。

指定文字数が少ない場合などは、結論なしの【序論+本論】の二部構成でもOK。「1:9」「2:8」くらいを目安にしよう。
 
  • 設問を「理解」し、自分の意見として「考察」できているか
熱意に満ちた立派な文章を書いても、出題の趣旨からずれたり偏った内容になってしまうと、残念ながら小論文としての評価はダウン…。

まずは、設問の意図を正しく把握し、論点を明確にすることが最重要。

さらに課題文や図表が提示されている場合は、それを読み解いたり分析したりして、その小論文における自分の意見を明確に提示する。すなわちここが【序論】となり、課題をきちんと「理解」しているかのチェックポイントとなる。
この【序論】で方向性が定まれば、その後の流れもスムーズ。【本論】で意見の裏付けとなる理由や根拠を示して「考察」し、【結論】で締めくくればよい。

この「理解」と「考察」で気をつけたいのが、個人の思い込みや思想に偏らないこと。持論を語るのではなく、「設問に対して、私はこういう意見を提示する」というディベート的な視点が問われているというわけ。
 
  • 小論文の文体、日本語の基本が身についているか
小論文として人に伝わる、納得力のある文章を作成できているかどうかがチェックされる。

文字量は既定の8割以上を書くこと。語尾は(「です・ます」ではなく)「だ・である」に統一。簡明でわかりやすい文体にするために一文(~、~。)は常に短文にし、接続語でつなぐことを意識したい。

もちろん誤字や脱字、表現の誤用は減点対象になる。難しい言葉やしゃれた言い回しを使う必要はまったくないので、とにかくわかりやすく伝えることを心がけよう。うっかり使いがちな「ら抜き言葉」は、普段の会話から正すように意識するのがおすすめ。
 

小論文の問題にはどんな種類がある?

小論文とひとくちに言っても、学校や学部によって出題傾向はさまざま。過去問を繰り返し解いて、該当する出題傾向に慣れておくことが大切だ。代表的な種類を挙げよう。

「課題文型」
特定のテーマに関する論文や書籍の一部が課題文として提示され、それを読み解いて論じるもの。論ずる前に文章の要約が求められるのが一般的。出題傾向として一番多いタイプ。

「テーマ型小論文」
「〇〇について、あなたの意見を述べなさい」という短い出題文が特徴。テーマをどう解釈しどう論じるかは自由なので、自分で方向性を定め、結論まで成立させる総合力が必要。
どの学部でも出題されうるが医療系学部で多い傾向あり。医療や命にかかわるテーマやキーワードがポンと問われる。

「テーマ型小論文(対策指定)」
「〇〇の問題について、あなたが考える解決策を述べなさい」と、具体的な対策案を求められるもの。その分野について日ごろの興味・関心の深さが解答の説得力に直結するといえる。

「図表分析型」
グラフや統計などのデータ資料が提示され、それを分析して論じる。最初にデータを見てわかることを解説し、次に意見を論じさせるなど複数の問いになることも多い。データ分析の得意・不得意が表れる。どの学部でも出題されうるが、経済・経営系や教育系の学部で多いという傾向あり。

「ミックス型」
特定のテーマに関する文章とデータ資料の両方が提示され、そのテーマについて論じる。課題文型に次いで多いタイプ。

出題パターンによって、小論文の解答はどう変化するのか。いよいよ、上記に挙げた5つの出題傾向&解答例を見て、違いを比較検討していこう。文字数制限はいずれも600字で設定してある。

小論文の問題パターン別例文<全文>

「課題文型」の小論文例文

【問題サンプル:課題文型】
次の課題文を読んで、筆者の見解に対するあなたの考え方を明確にしながら「異文化理解」に必要な考え方を600字程度で述べなさい。

※課題文は省略。「異文化コミュニケーションにおいて、社会的な常識まではある程度の相互理解ができるが、象徴的なレベルになると、そこはまさに文化の核であり、その文化の外の者にとっては理解するのが非常に困難である」とする趣旨の文章が続くものとする。
※要約はすでに別の問いとして済んでいるとする。
解答例
課題文によれば、異文化理解には三段階ある。一つ目は、人間が自然にもっている生理的次元で理解できる、いわば信号レベルだ。二つ目は、相手社会の習慣やルール、言語を理解する記号レベル。これらは常識として対応可能だが、三つ目の象徴レベルは、価値・意味・歴史に関わるため外からの理解が難しい。
記号レベル、つまり表面的知識や外国語の取得で異文化理解が完了するわけではないという点で、私は筆者の見解は意義深いと考える。以下、宗教を例に論じる。
イスラーム文化圏では豚肉を食べることは禁忌であり、許されないもの=ハラムである。このことは多くの日本人が「知っている」。だが、日本の食品会社が豚肉から抽出されたアミノ酸入りの化学調味料をインドネシアで販売、逮捕者が出て一時現地で不買運動が起きた例がある。豚肉の切り身やトンカツではなく、分子レベルのうまみ成分の結晶だから「問題ない」と勝手に線引きしたのだろう。知ったつもりで相手の宗教的タブーの意味、象徴性のナイーブさを見落としたといえる。
つまり、わかったつもりが異文化理解における最大の障壁ではないか。逆に、究極的にはわからないからわかろうと努める誠実さこそ必要な考え方であろう。哲学者の内田樹は、「わかった」は別れの言葉、「わからない」が出会いと発展のことばと指摘する。「ああ、あんたって人がつくづくよくわかったわ!」に対して、「あなたのことがわからないからもっと知りたい」ということだ。(610字)

「課題文型」の小論文ポイントをCHECK
課題文(文章資料)がある場合、課題文の要約を必ず行うこと。問1で要約、問2で意見論述、というように問題が指定されているケースならスルーする人はいないだろうが、今回のように設問一つ、解答用紙(原稿用紙)1枚というケースでは、第1段落で要約を入れ、課題文をきちんと理解しているかを示すことがお約束である。

その要約でのポイントは、対比を表現するということ。主役のメッセージだけでなく、比較相手も文字にして出すことで、次の【序論】での論点を明確にできる。

ボリュームは、特に文字数指定がないなら全体の2~3割。今回は文字数が600字程度なので、要約は120~180字くらいの見当となる。
<小柴先生ADVICE>
今回、課題文そのものは省略しましたが、「要約ってこんな感じ」をつかんでみてください。今回の課題文の場合、主役は「象徴レベル」の異文化理解の難しさで、自然的生理的に理解できる「信号レベル」と習慣やルールを学ぶ「記号レベル」が対比相手。その対比相手を前フリとして書きました。
第2段落は【序論】。「筆者の見解に対するあなたの考え方を明確にしながら」という設問条件があるので、ここで筆者への賛否を表明する。ただ賛成・反対ではなく、どこに注目した賛否なのかを明示すること。

さらに、次の【本論】でどんな具体例を出すつもりかにも触れ、文章の方向性を示すことが【序論】に望ましいスタイルとなる。
<小柴先生ADVICE>
「賛成である」「反対である」とストレートに表現してもよいし、解答例のように「意義深い」や「重要な指摘である」といった肯定のしかたもあります。同様に「問題がある」「十分ではない」というかたちで反対の意を表現することもできます。
第3段落の【本論】で、序論で宣言した意見の具体例を出す。今回は、宗教とかかわる食文化について実際に起こったできごとを展開し、裏付けとした。

第4段落は【結論】部。「究極的にはわからないから、わかろうと努める誠実さこそ必要な考え方」という表現で、「異文化理解に必要な考え方」を述べるという設問条件にきっちりこたえる。
<小柴先生ADVICE>
自分の意見の補強として、著名な学者のことばを引用するのもあり。結末の印象を強めるだけでなく、そういう知識のある受験生という個性を感じてもらうこともできるでしょう。

「テーマ型」の小論文例文

設問
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をきっかけとして、日本では安全保障のため防衛費の増額が決定され、さらに増やすべきであるとの主張があります。日本が軍事や安全保障の面でこれまでとは大きな変革をすることのメリットとデメリットを指摘したうえで、あなたの考えを600字程度で述べなさい。
解答例
東アジアでの緊張関係、例えば「日朝」「日ロ」「日中」やいわゆる台湾有事を考えれば、それらへの対処としての防衛費の増額は、日本の安全保障を確かにする点でメリットがある。同盟国であるアメリカが日本の防衛予算の増額を求めており、これにこたえることの利点もある。その米国トランプ政権の政策の予測しにくさを考えても、日本が自前の正面装備と補給の備えを強化していくことは、抑止力強化として有効であろう。
一方、デメリットも複数ある。まず少子高齢化で人口にしめる高齢者比率の高まりという点から考察する。高齢者医療費の増額が医療費全体を肥大化させ、それが社会保障費を肥大化させて有限の国家予算を圧迫している。約120兆円におよぶ国家予算を税収だけでは賄えず、国の借金国債を発行し続けている。その累積はすでに1000兆円を超えている。冷戦期でさえ防衛予算は4兆円前後でGDP比率は1%であったが、現在は8兆円を超え、GDP比で2%に上る。つまり、財政破綻と未来世代にツケを回すというデメリットがある。
さて私は、日本の防衛予算の増額は、周辺国を含む終わりのない軍拡競争を招き、緊張も高め、かえって安全保障上のリスクを高めると考える。また絶えずなすべき外交努力を二義的なものにしてしまう。8兆円に増額する以前でさえ日本の防衛予算額は世界10位以内、通常兵器の「戦力」評価でも世界のベスト10という事実も踏まえず、安全保障上の不安ばかりを煽るべきではない。(604字)
「テーマ型」の小論文ポイントをCHECK
第1段落では、設問条件にある「メリットとデメリットを指摘」に従う形で、メリットについて触れた。ただ漠然とプラス要素を書くのではなく、どういう視点・観点からのメリットか、どこに焦点を当てればメリットが出てくるのかなど、「目の付け所となる点」に注目して明示している。

一つでもプラス面を挙げれば設問条件は満たせるが、国や政府との関係を広げ複数出すことで説得力を持たせることができる。
<小柴先生ADVICE>
段落自体は3段落になっていますが、今回は【序論】を2段落分使って厚くし、設問に沿ってメリットとデメリットの「理解」をしっかりと伝えました。小論文の基本は【序論・本論・結論】の3部構成とされていますが、設問を踏まえ、臨機応変に変えていいんです。
第2段落では、もう一つの条件であるデメリットについて挙げている。これもさまざまな「目の付け所となる点」が考えられるが、1つの具体例を深掘りすることで、先のメリットとの対比を強調しつつ、デメリットの印象を強める手法を取った。

今回は日本社会の少子高齢化という観点、すなわち逼迫する国家予算の問題からマイナス面を挙げたが、ほかの例としては、憲法第9条や、歴代日本政府が掲げてきた「専守防衛」に抵触するのではないか、などの問題提起もある。
<小柴先生ADVICE>
デメリットを深掘りしつつ、次の【結論】で自分の意見につながる流れも意識しています。一つの小論文として、まとまりのある文章構成を意識したいものです。
第3段落でいよいよ【結論】として自分の意見をまとめる。今回はデメリットを結論としたが、もちろんメリットとしてまとめてもOK。

その場合は、ロシア・中国・北朝鮮が核兵器保有国であり、弾道ミサイルの開発をしていること、ロシアによるウクライナ侵攻と同様に中国による台湾の武力的併合が心配される点を強調するなどが考えられる。
<小柴先生ADVICE>
肝心なことですが、テーマに関する防衛予算や安全保障をめぐる持論をあらかじめもっている必要はありません。大学が「あなたの意見を述べなさい」と求めるのは、大きな社会問題に関心はもってほしいものの、譲れない自説ではなく、意見とよべるものをその場で組み立てる能力を審査したいからです。これが、大学以降の学問で議論に参加するための「立論の能力」です。

「テーマ型小論文(対策指定)」の小論文例文

設問
介護福祉士をはじめとした介護職の離職率は、近年改善されつつあるが依然として高い現状がある(2024年では12.4%)。この原因と対策についてあなたの考えを600字程度で述べなさい。
解答例
身体的に重労働で、利用者への心理的なケアを含む感情労働でもあり、大きな責任ある仕事なのに報酬がそれに見合っていない。これが介護職の高離職率の理由と考えられる。したがって、対策は介護職の所得増と激務の緩和である。
少子高齢化を背景に要介護者数が約700万人で増加傾向にあり、介護職は常に人手不足だ。しかも離職率が高く人手不足に拍車がかかり、介護がますます激務化して退職者が出るという悪循環が起きている。ここ数年で介護職の平均給与はいくらか増え離職率が20%だった十年前よりは改善されているが、それでも全産業の平均給与より低い。
低報酬化する背景には、介護職の4割が非常勤という実態がある。さらに「やりがい搾取」という面も問題だろう。介護・ケアは重労働だけれど「好きでやっている仕事だから低報酬でも納得のうち」という決め付けである。これは保育士にもあてはまるし、家庭内の家事育児労働にも通じる。その多くが女性で、「母性本能」があるから本質的に向いているはずだという奇妙な理屈があるようだ。
激務を緩和するには、介護職の数、特に正規雇用の職員を増やすこと。そのためには報酬を増やす必要がある。また、AI搭載ロボットの導入やパワードスーツの採用も考えられる。報酬増の財源はあるのか。日本の国会議員・都道府会議員・市区町村議員の報酬は日本人の平均給与をはるかに上回る上に、諸外国と比べても極めて高額だ。私はここに財源があると考える。(604字)

「テーマ型小論文(対策指定)」の小論文ポイントをCHECK
まず、第1段落の【序論】で設問にしっかり答えておくこと。今回はテーマの介護職がどんな仕事かを考察し、一般に高度な責任を負う仕事は、報酬=給与も高水準になるはずだが、介護職はそうなっていないという原因を挙げ、所得を増やすという対策案を示した。
<小柴先生ADVICE>
【序論】では、設問に沿って論点を端的に伝えることが大切。今回は問われている原因と対策案を一度に提示しましたが、対策案は【本論】にまわしても問題ありません。
第2、3段落は【本論】として、【序論】で触れたことの具体例や意見の根拠を書く。介護職が激務になってしまう背景や、報酬が仕事内容に見合っていないとはどういうことかを、根拠となる平均所得の比較で表現した。
<小柴先生ADVICE>
【本論】にボリュームを置く場合、段落を分けて読みやすくするのも一つの手段。ここでは介護職が低報酬化されてしまう理由の考察を2段階に重ねることで、説得力を高めています。
第4段落は【結論】で対策の詳細を示した。今回は【本論】に関連する給与増額やAI技術を活用する案を提示。さらには財源についてもフォローして説得力を高めている。
<小柴先生ADVICE>
問題への解決策の典型例は、法律による対策。報酬と罰則をつけて遵守してもらうハード・ロー(Hard Law)、教育やメディアによるよびかけで広げるソフト・ロー(Soft Law)について理解を深めておきましょう。

そのほか、企業が社会的責任を果たす方法や、テクノロジーによる解決も定番です。今回はAI技術を活用する例を入れましたが、それらの機器を提供する企業の社会的責任を加筆することもできます。

「図表分析型」の小論文例文

設問
図表から読み取れることを記し、あなたの意見を600字程度で述べなさい。

解答例
図表によれば、一貫して男性自殺死亡率が女性を上回っている。また女性では増減幅が小さいのに男性は振幅が大きい。その上下は経済状況の反映と考えられる。というのも、バブル崩壊の影響が顕在化した90年代中ごろから自殺死亡率が急上昇していることと、08年のリーマンショックとよばれるアメリカ発の景気悪化の影響をみることができるからだ。
では、私は日本社会で男性自殺死亡率が高いこと、しかも経済状況の影響を受けやすい原因について、以下考察する。
いわゆる性別役割分業(男性が外で仕事、女性が内で家事育児)が日本に定着しだすのは60年代から70年代と指摘される。産業構造が農業中心だったころは家と仕事場(田畑)は近く、男女とも農業に従事した(子どもさえ)。戦後の経済成長期に人口の都市流入が進み、第一次産業人口が激減し、第二次・第三次産業人口が増加する。この時期に日本的経営とよばれる新卒一律採用・年功序列・終身制・定年制から成る働きかたも定着する。この日本的経営は性別役割分業とセットで働き方のモデルとなり、その分、男性がより景気動向の影響を受ける背景になったと言える。
また40・50歳代は子どもの教育費や住宅ローンなど出費が多い時期だが、年功制のもとで所得が上がり、それらを賄えるしくみだった。ところがバブル崩壊後は、年功によって高い地位と給与を得るその年齢層がリストラの対象になった。日本的経営の痛切な皮肉をこの図表から読むことができる。(607字)

「図表分析型」の小論文ポイントをCHECK
「課題文型」で文章資料を要約するのと同じく、図表資料があればまずはそこから読み取れることを第1段落でまとめる。図表でも“対比”が重要。さらに意識したいのが、「○○年の男性自殺率は20.0だ」などの〝数値読み上げレベルの点の指摘〟にとどめないこと。上昇・下降傾向に注目して〝線の指摘〟を目指したい。今回なら90年代中ごろからの上昇傾向を指摘できるはず。

読み取りは、ボリュームは全体の2~3割を費やそう。
<小柴先生ADVICE>
自分がもつ知識を導入して分析を深めることも可能です。バブル崩壊の影響がいつごろ顕著化したのか、リーマンショックという世界同時株安がいつくらいか知ったうえで図表をみるとピンとくるものがあるでしょう。現代史の知識が役立ちます。
第2段落は【序論】として、論点の方向性を示す。今回は「自由に述べなさい」という設問条件なので、図表からわかったことの原因を書くのか、対策を書くのか、その両方かを宣言する。

第3段落は【本論】として、【序論】で示したことの原因・理由に当たる具体例を挙げていく。今回は、男女の役割分業や日本的経営とよばれるものを出したが、ほかにも働きすぎの過労自殺や、日本人のメンタリティ(例えば、経済的に苦しくなっても生活保護を受けることを「権利」と考えず、恥ずかしいこととみなして追い込まれてしまうなど)を挙げることができる。ボリュームが多くなったため、第4段落にして、さらに具体例の追加をしつつ結論を提示した。

「ミックス型」の小論文例文

設問
次の「アイヒマン実験」に関する課題文と図表からわかることをまとめ、同様のことが起こりうる社会的事例を挙げて600字程度で論じなさい。

※課題文は省略。スタンレー・ミルグラムによる「アイヒマン実験(服従実験)」を説明したもの。被験者は一般市民で、ミルグラム研究室の学生が計算ミスをするたび電気ショックを与え、学生はうめき苦しむ…が、実際には電流は流れておらず学生の反応は演技。被験者は最初こそためらうが、この実験が権威あるものだと言い含められ結局全員が指示に従う。

※図表は省略。同実験で、被験者と学生との距離や接触が少ないほど、電気ショックも強くなる傾向を示したもの。

解答例
課題文から、特に残忍とは思われない一般市民でも、「権威者による正当な指示」と受け止めた「残酷」な命令に従ってしまう傾向がわかる。ナチスドイツの官僚で絶滅収容所のガス室に多くのユダヤ人を送る「任務をこなした」アイヒマンも悪魔のような人間ではなく、彼が正当と認める権威や命令に粛々と従っただけともみなせる。
また図からは「苦しむ」相手との距離が遠いほど、関係が間接化するほど、相手の「痛み」に鈍感になり、ミスに対して電圧を上げていることがわかる。
同様のことが危惧される社会的事例に遠隔診療がある。以下、詳しく論じる。
医療の基本は患者との直接対面診療である。日本の医師法にもそう明記されている。しかし、離島や山間部など通院や医師による往診が困難な場合はITによる遠隔診療が認められるようになった。それでも初診だけは対面という条件があったが、コロナ禍を経てその条件も緩和された。近くに頼れる医師や病院がない地域にとっては福音かもしれない。だが、直接対面ほどに医師は患者に対して親身な対応ができるのか。残忍・冷淡にはならないとしても「モニターの向こうのデータとしての患者」、「○○病の患者」として一般化され、その個別性やQOLへの対応がおろそかになりはしないか。データやエビデンスは大事だが患者個々の声に耳を傾けるケアやキュアが実現するだろうか。無医村についてICTで済むと考えず、医師の常駐を目指すべきだろう。(600字)

「ミックス型」の小論文ポイントをCHECK
第1、2、3段落が【序論】に当たる部分。
第1段落では課題文の読み取り。ミックス型の場合は要約にボリュームは割かず、記されている文章から何がわかるのかを端的にまとめること。同様に第2段落では図表の読み取りを行い、設問の「課題文と図表からわかること」をきっちり示している。
<小柴先生ADVICE>
第1段落のアイヒマンに関する記述は必須ではありません。ただ、単なる読み取り分析だけより、この文章が入ることで【序論】に深みを感じませんか?

歴史や哲学に関する知識があれば、このようなことを小論文に取り入れることもできるよという一例です。(アイヒマンは戦後逃亡して裁判にかけられます。それを傍聴した哲学者が著書で、彼がいかにも極悪非道な人物ではなくどこにでもいそうな凡俗な人間に見えたことを記しています)
第3段落では、【序論】の最後として、ここで何を論じるつもりなのかを宣言。ただし研究室の話でも個人的な事例でもなく、設問で示された「同様のことが起こりうる社会的事例」について書くこと。権威に従ってしまう、あるいは相手と距離があると残忍性が高まる、相手の痛みへの共感が薄まる例には何があるか…受験生の書き出しのアイデア力が問われるところ。潔く端的に伝え切る小論文のモットーを生かし、1文で述べて次の【本論】につないだ。

第4段落の【本論】では、社会的事例に挙げたリモート診療の詳細を記述。「同様のことが起こりうる」として心配されることを、【序論】の課題文と図表からわかることに重ねて列挙していく。最後に【結論】として解決策の一つで締めた。
<小柴先生ADVICE>
社会的事例は、課題文&図表と同様に戦争関連で現在進行形の戦争の話にしてもいいですし、SNSでの誹謗中傷、カスハラ問題など身近な問題に触れることもできます。自身の幅広い関心をアピールしましょう。

小論文の書き出しのポイントとは?

小論文で最も重要で悩ましいのが【序論】、いわゆる小論文の書き出しの部分。限られた時間の中で、この書き出しのアイデアをスムーズに引き出し、論点を定められるかが勝負となる。

アイデアの引き出しの場所を挙げておこう。

●自分の「学問関心」から出す
興味のある分野から論じるのが一番やりやすく楽しいはず。ただ、好きなことを説明するだけでは使えないので、それをフックにどう論じるのかが大事。小論文の練習でも、まっ先にこの自分の学問関心を思い浮かべ、論点として出発するプロセスを強めておくといい。
例:AIの功罪について、私の学問関心分野である文学の視点から以下詳しく論じる。

●「現代社会の視点」から出す
現代社会、例えば「情報化社会」「国際化社会」「格差社会」「価値観が多様化する社会」など、自分が現実に生きている社会の状況から発想できないかを考えてみて。まさに現代社会だからいろいろ知識や情報があるはず。
例:AIの功罪について、現代社会の少子高齢化・労働人口の不足という視点から以下詳しく論じる。

●「何らかの学問視点」で出す
“自分の興味”は置いておいて、あらゆる学問を視点に序文を書くこともできる。およそすべての学問は視点・メガネとして機能するので、そこから見えるものがあるはず。目指す学部に直結させてもいい。「芸術の視点から見たAI」「医学の視点から見たAI」など、学問分野を挙げてシミュレーションを重ねよう。
例:AIの功罪について、政治や経済の視点から以下詳しく論じる。

●「一般論」を前フリにする
自分の意見とよべるものがすぐに出てこない場合、まず世間一般の考えを出してみて、それと対決して書いていくというやり方がある。その場合、本当に世間がそう考えているか、調査したり裏付けをとったりしなくていい。あるいはテーマに対する自分の第一印象を一般論に仕立て上げ、あえてそれと違ったものを正式な自分の意見として展開する手法もある。
例:一般にAIについては人間を支配するといったSF的な発想で語られがちだ。だが私は異なる観点からAIの功罪について語りたい。
<小柴先生ADVICE>
自分の学問関心から論じるのが一番楽しいですよね。この学問関心は、例えるなら乗りなれた電車のホームのようなもの。いつでもスムーズにここから目的地にたどり着ける。

でもたまたま不通・運休になったら、迂回路を考える。いつもは一番線ホームだが、今日は三番線で行くというイメージで、そのほかのアイデアの引き出しも増やしておくのがおすすめです。

小論文に取り組む際の心構えとは?

うまく小論文が書けるようになりたいという気持ちに対して、なかなか成果が出ないのが小論文対策の苦しいところ。

小論文対策に取り組む上で大事にしたい心構えを小柴先生に聞いてみた。

「人生の最高傑作を書こうと思うな」

<小柴先生ADVICE>
小論文は完璧を目指さなくていい、むしろ目指すほうが無謀というもの。

有限な時間、有限な字数で、生まれて初めて出会ったテーマで書くのだから、まずはプレッシャーを取っ払いましょう。100点満点で50点取れれば、普通は平均点越え。60点なら明らかに合格です。

ちなみにフランスの大学入試(高校卒業認定試験=バカロレア)では、論文試験20点満点のうち、受験者の平均点は7~8点。10点から合格水準というデータがありますよ。課題文型の場合は要約の設問がありますね。そこは(仮に要約問題部分を100点満点として)60点くらいは欲しいところですが、「試験時間の半分つかって60点の要約を書く」という意識が大事です。「完全な要約」を目指すと、時間はいくらあってもたりませんので。

「自説や持論はいらない」

<小柴先生ADVICE>
受験生の多くが勘違いをしているのが、「自分には小論文で語れるほどの持論がない」というもの。

いらないんです、持論。これから大学に入って知的刺激をたくさん受けるのに、すでに「譲れない持論」「こだわりの自説」があるのはかえって邪魔。大学以降の学問では、正解が一つということはありません。決まった答えのない問題について考えることが大学という学問の場。ゼミや研究室で発言し、議論の場を作れる人を大学は求めています。

従って入試でも、小論文という正解のない問いかけに対し、受験生がその場でどう仮説を提示してくれるかを大学は見ています。試験のその場で仮説として意見を出せればOKです。

「世の中に興味をもって日々を過ごそう」

<小柴先生ADVICE>
日ころからニュース・時事問題に興味をもっておく。小論文対策の基本ですね。ただし、ネットニュースやSNSだけにならず、新聞レベルのオールドメディアにも目を通す。多元的に情報に触れる習慣が大事です。

自分の学問関心についてはできるだけ本も読んでほしい。学校推薦型選抜や総合型選抜でも、「こんな本を読んできた」は志望理由書や面接で最大のアピールになります。

なお、本は読み切らなくてもいい。つまみ食い的に数ページでもOK。大学で卒業論文を書く場合には、「参考文献」として50~100冊くらいは挙げますが、そんなにたくさんの本を挙げられるのは、文字どおり自分にとって「参考」になる箇所だけ読んだから。

「知らない学問に触れてみる」

<小柴先生ADVICE>
自分の目指す学部以外に、世の中にはこんな学問があるという知見を広げることはとても大事。

例えば「経済学」一つとっても、心理学と結びついた「行動経済学」、途上国支援と結びついた「開発経済学」、数学と高度に結びついた「計量経済学」などさまざまなジャンルがあります。自分が学びたいものの発見にもなるし、小論文でつかえるネタにもなります。

そのためには、大学が出しているパンフレットや公式サイトが役立ちます。志望大学かどうかは置いておいて、メジャー大学のパンフはぜひ集めて眺めてほしい。小論文のアイデアを発想する練習に大いに役立ちます。

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【理学・工学部、農学・水産学・畜産学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

医学部、看護・医療系学部、スポーツ学部
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これまでの記事を読んだら、ぜひ自分の志望学部を調べて、出題傾向を確認してほしい。

そして、実際に問題にチャレンジすることで、この記事のポイントもより実感できるはず。何度も読み返して、確実にレベルアップするはずだ。

取材・文/伊藤佳代子 監修/小柴大輔 構成/山﨑 奈緒(2025年12月更新)