東大・京大が推薦入試をスタートさせた理由は?
東京大学と京都大学が、「筆記試験以外の入試」を2016年度から実施することを発表した。「筆記試験以外の入試」…つまり「推薦入試」を開始するということだ。
知らない高校生は、「え?今までやってなかったの?」という反応が返ってきそうだが、実は今まで多くの国公立大学でAO・推薦入試が行われているなか、東大・京大とも取り入れていなかったのだ。両大学の推薦入試の中身や、推薦入試を導入するねらい、求められる人物像などについて紹介しよう。
■どんな内容の入試になるの?
・東京大学
今ある後期日程を廃止。代わりに書類と面接、大学入試センター試験の3つをもとに選考し、前期日程が始まる前に合格者を発表する。
・京都大学
高校からの調査書や、志願者が大学で学びたいことをまとめる「まなびの設計書」などの書類審査に加え、面接、筆記試験、口頭試問など、学部ごとの独自試験をもとに総合評価する。
どちらの大学とも募集枠は100名くらいになる見込みだ。
■どうしていまさら推薦入試?
実は今、東大と京大が危機感を募らせているのは、国際的な評価。
例えば世界的に権威のある「タイムズ ハイヤーエデュケーション」誌による2012-13年の大学ランキングで、東大は27位、京大は54位だった。評価がそれほど高くない大きな要因は、留学生数、外国人教員数、英語による授業など国際化指標が極端に低いためだといわれている。
これではグローバル化が進む世界から取り残されてしまう…。その危機感から生まれたのが、今回の入試改革なのだ。東大では、推薦入試を始める目的について、ホームページで「世界的視野をもった市民的エリートの育成という(東京大学の)教育理念に共鳴し、強い意志を持って学ぼうとする志の高い皆さんを、日本のみならず世界各国から受け入れたい」という考えに基づくものだと明言している。
■どうして入試を変えると、グローバル化に対応できるの?
現時点では、いわゆる進学校といわれる日本の高校では、センター試験をはじめとする大学の筆記試験を突破することを目的とした授業を行っていることが多く、受験が近づくにつれ、その傾向は強くなる。
3年生にもなれば、「受験科目以外は勉強しない」、「過去問対策など試験に向けた勉強だけに集中する」という高校生も少なくないだろう。良いか悪いかは別として、現在の入試制度からすれば当然のことといえるだろう。
しかしこれからの社会においては、筆記試験で図ることができる“与えられた問いに正しく答えられる”能力だけではなく、“自ら深く考えて、主体的に行動できる”能力が求められる。
これは内向き志向が強い今の日本が、グローバル化を進め、世界の中で活躍していくために欠かせない力だる。こうした力を新たな推薦入試で問うことで、学生が受験勉強の中で身につける能力を変えていくとともに、海外からも日本からも世界に通用する優秀な人材を集め、国際的な評価を高めたいという意図が大学側にある。
■学力では無理だけど、推薦入試なら合格する人もでてくる?
東大の推薦入試の出願資格は「特定の学問分野に対する強い関心を持つ者」とされ、入学後は大学院の授業も受けられるようにするとある。それだけ高い専門性が要求されるうえ、センター試験の合格基準は、東京大学の前期試験の合格点と同レベルの点数が目安とされている。
京大では学力試験は学部によって問わないケースもあるものの、高校での成績は「全教科の成績が学年の上位5%以内であることなどを必要とする」など、かなりハイレベルな学力を想定している。
推薦入試というと、学力は一般入試の水準を満たさなくても、部活や生徒会などのすぐれた活動実績があったり、志望動機がはっきりしていれば、その点が評価されて合格する、というイメージがあるかもしれない。
しかし東大と京大の推薦入試は、そうではないようだ。学力はあくまで一般入試の合格者と同レベルの力が求められるうえに、これだけは自信があるという強みや自分で考えて動ける主体性をもった学生を求めているのが大学側の本音だろう。
ということで、一般入試よりもむしろハードルが上がることになりそうだが、「われこそは」、「面白い」と思う高校生は、ぜひチャレンジしてみて欲しい!