若者がもっと海外に出れば、日本の観光力もアップする!?
スイスに本部を置く、非営利財団「世界経済フォーラム」が3月7日に発表した「2013旅行・観光力レポート」で、日本が世界14位にランキングされた。
このレポートは、世界の国々が備える「旅行と観光」に関する力を様々な視点、例えば、「政策」「環境維持力」「安全」など、14項目について各国の審査員による評価結果をまとめたもので、日本は2009年25位、2011年22位から少しずつ順位を上げてきていて、今回は過去最高ランクを獲得した。
年々ランクアップしている理由や、日本が今後さらに上位に入るために必要なことなどについて、この分野に詳しい立教大学観光学部教授の小沢健市先生に話を聞いた。
「日本が順位を上げている1番の要因は観光庁の行っているさまざまな取り組みが評価されたからだと思います」と小沢先生。例えば2010年、人気グループ「嵐」が「観光立国ナビゲーター」に起用され話題になった。「国として観光に力を入れている」というイメージが少しずつ世界に広まっているのだという。
次にあげられる要因は「日本=安全で安心な国」というイメージだと小沢先生は言う。しかしこれについては震災の影響で、むしろランクが落ちる可能性もあったのではないだろうか?
「2011年の東日本大震災と原発事故により、外国人観光客は大幅に減りましたが、安全であることを政府が一生懸命にアピールしました。これによって、現在ではかなり回復しています。また、もともとあった安全なイメージが大きく崩れることもありませんでした。政府がいちはやくリスクマネジメントを行ったおかげで風評被害を最小限に抑えられたといえます」と小沢先生。
今回の調査では、「外国人観光客への接し方」という項目の評価が、前回の131位から77位へと大きくランクアップした。これもプラス要因といえるのだろうか?
「以前よりは改善されているのでしょうが、まだまだ発展途上だと思いますよ。一番の気がかりは若者が海外に行きたがらない傾向があること。日本の外に出ることで、日本が世界からどう見られているか、日本がどんな国かがわかります。それが他国の人への思いやりの態度につながりますし、他国の人に自分の国を紹介する力にもなります。この点が日本ではまだまだ不足しています。思いやりに満ちた、真の交流が育まれるようになれば、日本の旅行・観光力はますます高まるといえるでしょう」。
最後に、旅行・観光業界の特色と、この業界を志望する高校生へのアドバイスをうかがった。
「旅行・観光業界は景気や人気など様々な出来事や要因にとても左右されやすいのが特色です。そうしためまぐるしい変化に対応する力も必要ですが、持続的な発展を目指すには、今以上に世界的・長期的な視点が必要です。例えばホテルや旅館は日本特有のおもてなし(ホスピタリティ)を基盤にしながら、しかも日本独特のルールにこだわらず、全体として世界標準サービスを提供可能であれば外国からのゲストにも喜ばれるでしょう。また日本の良さを世界の人にもっと知ってもらいたいという強い気持ちをもつことが大切です」と言う小沢先生。
ニーズの変化に敏感に対応するだけでなく、世界中の人に日本の良さを伝えたいという気持ちをもつ人こそ、これからの日本の旅行・観光業界を支えていく力になるといえそうだ。