食事や水などが気道に入ってしまうことを誤嚥といいます。若い人は咳き込む程度ですが、ものを飲み込む力や吐き出す力が衰えている高齢者の場合は厄介です。誤嚥してもむせることができず、肺まで侵入し、肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こして死に至る恐れもあります。これまで病院などでは、食べ物にとろみをつけて誤嚥を防いできましたが、あくまで経験的な対応でした。そこで私は、科学的な測定により、食べ物を飲み込む速度と誤嚥との関係を解明。食べ物の物性(とろみ・かたさなど)をどのように調整すれば、高齢者でも安全に飲み込める食品がつくれるか、定量化・指標化する研究に取り組んでいます。そうすれば食品メーカーの開発にも役立ち、より安心して食べることができ、見た目もおいしそうな介護食が増えていくと期待しています。
谷米先生のもとには、将来食に関する仕事がしたいという学生が多数やってきます。そこで学生には、座学で学んだ知識を実習や演習で実践できるような機会をできるだけ用意するようにしています。例えば、藤沢産キノアを広めるプロジェクトで、レシピ開発や販売、マーケティングなどを経験してもらうのもそのひとつ。実社会の現場で課題解決に取り組み評価されることは、学生たちの大きな成長や自信にもつながります。まずはやってみるということを重視し、体験を通じて社会で活躍できる人材に育ってほしいと、谷米先生は考えています。
食に関する情報を収集して自分で考え、自分の言葉で語れるようになってほしいです。議論や発表を通じてアウトプットすることは、知識の定着や成長につながります。自分で考えて発信する楽しさを学んでください。
共立女子大学家政学部食物栄養学科管理栄養士専攻卒業、同大学院家政学研究科食物学専攻博士前期修了、同大学院家政学研究科人間生活学専攻博士後期修了、日本大学短期大学部応用化学科助手、日本大学生物資源科学部准教授。博士(学術)。