道の駅に卸すお菓子をつくる工房として、2003年4月、パティスリー ルイを開業。開業当初に手がけたのがフランス校で出会った「ピュイダムール」。初心に返れるお菓子として、今も大切につくり続けています。やがて看板商品としていろんな媒体でも紹介されるようになり、ピュイダムールがあるから来てくれるお客様も。敏腕営業マンのように、僕を引っ張ってくれるお菓子になっています。2011年10月には福岡県春日市に移転オープン。ほかに何もない場所なのに、SNSに上げたお菓子をわざわざ買いに来てくれる人たちがいたり、自分がつくったものを食べてもらってお金がもらえる…これって究極なことだなぁと、ありがたく感じています。
絵描きである父が「自分は絵描きにならなかったら、料理人になりたかった」と言っていたことが頭に残っていて。僕自身、絵は苦手でしたが、料理は身近に感じていました。高校3年の時、やりたい事を考えたとき、まず浮かんだのが料理でした。幼い頃、プリンなんかをつくっていたことを思い出し、お菓子には夢がある気がしてきて…。父に想いを伝えたところ、「せっかく行くならフランス校のある辻調グループに行け」と言われたんです。絵を描くためによくフランスへ行っていたので、その素晴らしさを見せたい気持ちもあったのかしれませんね。高校卒業後、大阪の辻製菓専門学校へ進学。1年間の課程を経て、フランス校へ進学しました。
入学までにお菓子づくりを経験してきた同級生も少なくないなか、自分は器用でもなく、壁にぶつかりましたが、それでもフランス校に行ったら何かつかめるんじゃないかと考えて頑張りました。「行けばなんとかなる」とフランス校へ挑んだものの、早々に自分の甘さや駄目さを痛感。ここでやらなきゃいつやるんだと反省し、その日の授業で出てきたフランス語を寮へ帰って必死で訳すなど、毎晩夜中まで勉強し始めました。努力の甲斐あって、徐々にフランス語も聴き取れるようになり、決意を新たにお菓子の授業に向き合うようになると、その楽しさもわかるようになってきました。
良い暮らしができる、夢のある職業として、なり手をつくっていくことが僕たち世代の使命。じゃないと次の世代につなげられませんからね。続けないと見えないものがあるし、続けないと認めてももらえない。20年近く継続できていることで、うちの店が答えを出していると思います。周りからも羨ましがられるような形で、仕事ができているのがすごく幸せです。働き方改革にも力を入れ、長く働き続けられる環境づくりに努め、毎年、何人もの就職志望者が来ていますが、「もっと魅力ある、この人とこの店で働きたいと思える店づくり」をしていきたいと考えています。
パティスリー ルイ/製菓衛生師本科(1年制)/1997年卒/福岡県出身。福岡県立福岡中央高等学校から辻製菓専門学校に進学。辻調グループ フランス校を1997年に卒業後、福岡のフランス料理店に就職。約3年間の修業を積み、博多のショッピングモールにあるカフェレストランのシェフに。その後、福岡市内のホテルにあるフランス料理レストランの二番手を務め、2003年4月、製菓工房として『パティスリー ルイ』を開業。10月には喫茶営業もスタート。8年間の営業を経て、2011年10月、福岡県春日市に移転オープン。