自分が作った料理でお客様に笑顔になってもらえること、それがこの仕事の楽しさ。たとえばキノコが嫌いな学生に、実習でキノコのソテーを食べさせて「これはいける!」という体験をしてもらっています。プロの調理法は、素材の持ち味を引き出す技。嫌いな食材を好きなものに変えるほどの力があるんです。自分で体験すれば理解が早まり、意欲にもつながりますね。
学生たちには食のジャンルにこだわらず、社会の動きや他業界のニュースにも興味を持ってほしいと思います。新しい食材が生まれたり、流通の向上で今まで冷凍だったものがフレッシュなまま使えるようになったり、料理の世界も常に世の中とリンクしています。職能があがっていくほど、お客様との会話も増える。料理の技はもちろん、社会人としても自分を磨いていってほしいですね。
DAICHOの特長でもあるバンケットトレーニングは、学生のランチ約500人前を作る実習。卒業後を見据え、実践形式で学ぶ貴重なチャンスだ。調理の現場で約40年。総料理長の経験も持つ夷先生は、時に厳しく指導する。「13時から午後の授業が始まるから、昼休みの12時から料理を提供できなければ大きな迷惑をかけてしまう。実際の現場も待ったなし。現場感覚を身につけてもらいたいですね」。時間と作業を逆算しながら、互いに声をかけあって進めていく学生たち。経験豊富な先生に見守られる中で場数を踏み、大きく成長していく。
不安になるということは、それだけ真剣に考え、頑張ろうと思っている証拠。私も新しいことに挑戦するたびに不安はありましたが、いろいろな人に助けてもらってここまで来ました。一生懸命であれば、道は拓けます。
専門分野:西洋料理
シェラトン都ホテル、後楽園ホテル心斎橋を経て、スイスホテル南海大阪の立ち上げに携わる。約20年間、宴会統括料理長として活躍した後、りんくうタウンにあるスターゲートホテルの総料理長に。現在は後進の指導にあたっている。「1年足らずの経験の学生たちから、学ばせてもらうことは多々あります。料理の固定概念がないところから、すごい発想をすることがある」。料理ひと筋40年のベテラン講師。