この5年間で1.5倍に。男性看護師が急ピッチで増えている!

●男性看護師は現在4万人を超えてさらに増加中

 

看護師というと、一般的には“女性の仕事”というイメージがある。もちろんイメージだけでなく、2012年の看護師全体に占める女性の割合は93%と、実際に圧倒的多数。

 

しかし、なかなか目立たないものの、実はここ数年男性看護師の数も急ピッチで増えてきているのだ。下のデータを見てほしい。

 

●看護師の男女別就労人数の推移

 

<2008年>
女性 44万4970人  男性 2万9380人
<2009年>
女性 44万9740人  男性 3万7250人
<2010年>
女性 42万6530人  男性 3万7110人
<2011年>
女性 48万190人   男性 4万580人
<2012年>
女性 54万8800人  男性 4万3150人

出所/厚生労働省の賃金構造基本統計調査

 

2008年と2012年を比較すると、男性看護師は1.47倍の増加。女性看護師が1.23倍だから、もともとの数の違いがあるとはいえ、増加率だけなら女性を上回っている。

 

ということは、看護の現場で男性へのニーズが高まっているのだろうか? 東邦大学看護学部の村上好恵教授に話を聞いた。

 

「男性看護師というと、かつては精神科や高齢者看護など、体力が必要な現場で求められる傾向がありました。もちろんそういうニーズは今でもありますが、それだけでとらえるのは少し古い考え方です。今は、一般の病棟でももっと男女をバランスよく配置するべきだという考え方が浸透し始めています。特に都市部の先進的な病院を中心に、男性、女性関係なく優秀な人材を採用していこうという動きが広がってきていますね」

 

●4年制看護学部登場を期に男子の目が向き始めた

 

今まで男性ばかりだった職場に女性を増やそうという動きはすでに世の中のいろいろな業界や職種で起きている。看護師の場合はその逆のパターン。では、一般の病棟で男性看護師が増えることにはどんなメリットがあるのだろうか?

 

「男性と女性ではものの見方も違います。違った角度からの意見を交換することで、看護業務の改善などにもつながっていくはず。患者さんには男性も女性もいるわけですから、そのような複眼的なアプローチが本来必要なんです。むしろ、今までが偏りすぎていたんだと思います」

 

一方で、看護師を目指す男子が増えた背景には、2002年、それまで短大と専門学校だけだった看護師養成課程に4年制の看護学部が加わったことが挙げられる。2000年代に全国で看護学部が続々と登場するなか、男子も看護師という仕事に注目するようになっていった。

 

●研究職や起業など看護師の将来像は意外と多彩

 

東邦大学看護学部を例にとると男子学生は約1割。「まだまだ少ない」と村上教授は言うが、以前と比べれば確実に増えている。しかし、今後、男性看護師がさまざまな現場で活躍し、実績を作っていけば、今後はもっと男性が増えていくと村上教授は予測する。

 

「看護師というと現場で看護業務を行うイメージしかないかもしれませんが、実は現場以外にも活躍の道は多彩。研究職や看護教員という選択肢もありますし、最近は訪問看護ステーションなどを起業する方も増えています。また、大学院へ進んで特定分野の高度な専門性を身につけ、専門看護師として力を発揮することも可能です。女性にとっても男性にとってもさまざまな将来像が描ける仕事なんです」

 

看護師の男性比率は「3~4割くらいにまで伸びるのが理想」と村上教授。今はまだ地域や病院の意識によって差があるものの、そう遠くない将来、男性看護師がまったく珍しくなくなる時代がやってきそう。医療系の仕事に関心がある男子は、ぜひ看護師も選択肢の一つに加えてみよう。

 
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