専門学校の就職事情を調査!大学との比較、就職率、メリット・デメリットを解説
専門学校は就職に強いって聞くけど、本当のところどうなの?専門学校に入学すれば、目指す職業に就ける?
大学や短大ではなく専門学校を選ぶといい理由って?
専門学校の就職事情が気になる人は多いはず。
今回は、専門学校の就職の実態を、メリット・デメリットを合わせて見ていこう。
専門学校の在学生&卒業生の体験談にも注目!
目次
専門学校の就職率は約95%!
専門学校は企業からの注目度も高い
専門学校の就職希望者に対する就職率は94.5%(※)。
学校によって就職率はさまざまなので一概には言えないが、調査全体では36学科区分のうち17区分で95%を超えるなど、非常に高い数字だ。
少子高齢化による労働人口の減少、特に、医療・介護業界における人手不足の問題が深刻になるなか、採用する企業からは、学歴や年齢にかかわらず“本当に活躍できる人材”を求める傾向が強まっている。
そのため、仕事に直結する資格を在学中に取得したり、実務にすぐ生かせる知識や技術を学べたりする専門学校は「即戦力の人材がいる」と企業からの注目度も高いようだ。
ちなみに大学でも職業教育に力を入れるなど、就職指導への取り組みを強化する傾向があり、2019年4月からは、大学と専門学校それぞれのよいところを併せ持つ「専門職大学」という学校制度もスタートした。
いずれにしても、早くから将来の仕事の世界と接点を持って専門性を高め、就職後直ちに業界を引っ張っていける人材が今、求められているのだ。
※東京都専修学校各種学校協会「令和2年3月 専門課程卒業者の就職状況調査」
※就職希望者(昼間部)に対する就職率
9割以上が「学んだ分野に関連した仕事」に就職している
さらに注目したいのが、専門学校の場合「学んだ分野に関連した仕事に就いた」という人の割合が、多くの分野で9割以上ということ。なかでも、医療関係、衛生関係、教育・社会福祉関係など、就職に国家資格が必須となることが多い分野で100%に近い数字となっている。
また、文化・教養関係(デザイン・美術、写真などのアート系、音楽、俳優、声優などのエンターテインメント系)では、企業へ就職せず業界デビューを目指す人、フリーで活動する人も多い。
★ 専門学校全体 … 94.4%
・工業 … 95.3%
(情報処理、自動車整備、土木・建築、電気・電子など)
・農業 … 81.2%
(農業、園芸、畜産、バイオテクノロジーなど)
・医療 … 97.9%
(看護、理学・作業療法、柔道整復、歯科衛生など)
・衛生 … 94.7%
(美容、理容、調理、製菓・製パン、栄養など)
・教育・社会福祉 … 97.8%
(介護福祉、保育、社会福祉、幼児教育など)
・商業実務 … 96.7%
(経理・簿記、秘書、経営、観光、ホテル、医療事務など)
・服飾・家政 … 93.8%
(ファッションデザイン、ファッションビジネスなど)
・文化・教養 … 87.1%
(グラフィックデザイン、音楽、美術、法律行政、スポーツ、演劇、映画、英語、通訳・翻訳など)
※文部科学省「学校基本調査」
専門学校卒業後、進学する人も
就職の割合が最も高いが、さらに学びを深めるために「進学」という選択肢もある。
参考として、専門学校卒業者の進路状況(東京都の場合)も見てみよう。
専門学校卒業者の進路で、「進学」の割合は下記のようになっている。
専門学校の2年制以上の学科を修了すると大学への編入試験が受けられる※ということも、進路を考える上で覚えておきたい。
※専修学校の専門課程(修業年限が2年以上、総授業時数が1,700時間以上又は62単位以上であるものに限る)を修了した者
※東京都専修学校各種学校協会「令和2年3月専門学校卒業者の進路割合・分野別(昼間部)」
※「就職」は「自営」を含む。「進学」は同一校内での進級を含む。
大学・短大と専門学校、就職にはどちらが有利?
専門学校への進学を考える時、気になるのが「卒業後の進路」。
大学・短大と比べて、仕事に直結する知識や技術を専門的に学べる=就職に有利というイメージがあるが、実際はどうなのだろうか?
大学・短大と専門学校、就職の有利・不利は「目指す職業」による
特定の分野に特化した職業教育を行い、資格試験対策・就職活動への手厚いフォローがあるのが専門学校の特長。国家資格取得が就職の条件となる職種、看護師、救急救命士、臨床検査技師、理学療法士、歯科衛生士、あん摩・マッサージ指圧師、美容師、理容師、栄養士、調理師、保育士、幼稚園教諭(2種)、介護福祉士などを目指す場合には、専門学校は最短のルートと言えるだろう。
また、グラフィックデザイナー、ゲーム制作、プログラミング、服飾、製菓など「手に職」系の分野も、専門学校で実践的な教育を受けた学生が就職に有利と言われている。
一方、医師、薬剤師、弁護士、裁判官、教員、国家公務員総合職、大企業総合職などは、免許や資格取得に大卒の学歴が必須となるか、大卒でなければ就職が難しいとされる職業。
大学・短大と専門学校、就職の有利・不利は「目指す職業」によって変わるため、まずは自分がどんな仕事をしたいのかを考えることが大切だ。
専門学校から就職した先輩の声
「目指す職業」によっては、大学・短大に行くよりも夢への最短ルートになる専門学校。大きなメリットがある一方、デメリットを感じたという先輩も。
自分にとってベストな選択かどうかを考えるために、専門学校から就職した先輩の声を見てみよう。
メリット①「即戦力として活躍できる」
仕事内容に直結する専門的な知識&技術を学んで就職するため、身につけた力をすぐに職場で発揮できるのは専門学校卒ならでは。現場研修やインターン実習で仕事を疑似体験できることで、働き方のイメージがつきやすいという声も。
また、多くの専門学校では国家資格取得や検定合格を大きな学習目標としており、資格や受験資格を卒業と同時に取得できることも少なくない。
授業を受けることがそのまま資格取得につながる専門学校生は、自力で取得を目指すケースが多い大学生と比べて、就職へのアドバンテージが大きいと言えるだろう。
「専門的に学んでいたから、仕事に就いたときに専門知識がある状態で仕事ができ、同期との差をつけられる」
(介護福祉士科2年・男性・神奈川県)
「専門分野を学べると同時に、就職に有利。企業側からも『専門分野を学んでいない学生と比べると、専門学生を取る方が即戦力になる』と言われた」
(医療福祉事務学科・2017年卒業・女性・岡山県)
メリット②「関連職種への就職率が高い」
医療系など学んだ分野に関連した仕事に就く人が多い
例えば、「看護師になりたいから看護の専門学校へ」という進路選びをする学生がほとんどの専門学校の場合、身につく知識&技術も就職活動も目指す職種に特化したものであり、資格取得にも有利なため、希望する職種への就職率が高くなる。「学んだ分野に関連した仕事に就いた」という人の割合は、多くの分野で9割以上。
実習先やインターン先にそのまま就職できたり、病院付属の専門学校の場合はその病院に就職することで奨学金の返済が免除になったりと、多方面にメリットがあるようだ。
「在学中に何か資格を取っていれば非常に就職しやすい。大学とは違って、講師が資格取得のサポートをしてくれるので尚更だと思う」(建築&デザイン学科・2020年卒業・女性・福岡県)
「病院附属の専門学校だったので就職がかなり有利であること。実習の段階で附属の病院に行くので病棟単位でどのような雰囲気なのか、どんな患者さんやスタッフがいるのか、内部のことを知れてよかった」
(看護科・2016年卒業・女性・埼玉県)
「病院の附属の専門学校なので、その病院から奨学金を借りていれば何年かそこで働くと返済免除になる」
(看護科2年・女性・福岡県)
メリット③「業界・企業・OBとのコネクションが強い」
毎年、多くの学生が関連職種に就職する専門学校では、業界や企業の人事担当者とのコネクションが自然と強くなり、学校に求人票が直接送られてくることも。先生たちも現場で働いていた人が多いため、それぞれに情報やコネクションを持っており、希望する業界や企業に紹介してもらえるチャンスも少なくないそう。
また、就職活動を成功させた卒業生に面接や試験のアドバイスをもらえる機会が多く、おかげで就職活動がスムーズにいったという声も。
「特に地元企業と連携が強い学校であれば、斡旋してもらえる企業数が多い」
(事務ビジネス科2年・女性・青森県)
「『毎年この専門学校からは生徒を新人に迎えている』というような企業もあったりするので就職しやすい」
(ゲームエンジニア科・2019年卒業・男性・宮城県)
「企業様方が来校してくださり、そのときに自分の絵を売り込み採用などに持ち込めるというコネクションの広さとスパンの短さがメリットだと思います」(コミックイラスト専攻2年・男性・東京都)
「多くの卒業生を輩出していれば、就職した先に先輩がいる確率が高く、就活の際に、面接や試験についての助言をもらえる」
(診療情報管理学科・2019年卒業・女性・兵庫県)
メリット④「早く社会に出て経験を積める」
1~3年制の専門学校に進学し、卒業後すぐに就職すれば、早く社会に出て実務経験を積むことができる。「早く就職してお金を稼いで自立したい」「1年でも長く実務経験を積んで、いずれは独立したい」といった人には専門学校がおすすめだ。
「はっきりとした夢があれば、遠回りすることなくすぐに仕事に就ける。また早く働くことで周りとの差別化をはかれる」
(エアライン科・2018年卒業・女性・兵庫県)
「私が通っている学校は3年制なので、大学に行った人よりも早く就職できる」
(視能訓練士学科2年・女性・兵庫県)
メリット⑤「就職サポートが手厚い」
専門学校ならではのサポート体制を見ていこう
専門学校では、入学直後から卒業後まで、徹底した就職活動へのサポートを行っている。どんなサポートが行われているかはこの先のコラムで詳しく紹介するので、併せてチェックしてみよう。
デメリット①「就職先が絞られる、進路変更がしづらい」
「大卒が応募条件になっている」「国家資格の受験対象にならない」など、物理的に専門卒では就職が難しい職種があるほか、専門性が高いゆえに、途中で目指したい業界・職種が変わった場合に進路変更が難しいというケースも。一般教養の授業がある大学生と違い、専門科目を集中的に学ぶ専門学校生は、専門分野への就職には有利になっても、それ以外の職種や業界への就職はハードルが高くなりがちなようだ。
「卒業後に進路を変えると、一般教養が不足しているので就職が難しいのかもしれない」
(社会福祉科2年・女性・千葉県)
「企業によっては、応募条件が大卒以上のところがあるので、気になるところだと余計悲しくなります。たくさんの企業にエントリーしたいなら大学生の方が有利です」
(グラフィックデザイン専攻2年・女性・神奈川県)
「専門分野以外の就職は学校にも求人が来ないので、その専門分野以外の就職はしにくい」
(ファッションクリエイター学科2年・女性・大阪府)
デメリット②「大卒者との給与に差がつく」
就職先によっては、大卒・短大卒・専門卒で初任給の金額設定が違い、同じ仕事をするのにもらえる給料に差がつくということも。ただし、働きぶりが認められての昇進・昇給でその差を埋めていくことも不可能ではないので、専門卒であることがずっとデメリットであり続けるという訳ではない。
「業界未経験の大卒より給料が安い」
(システムエンジニア科・2018年卒業・男性・北海道)
「大卒に比べて給料が低いところ。しかし、自分の頑張りしだいでは変えることはできると思います」
(ホテル学科 英語専攻科2年・女性・千葉県)
デメリット③「授業・実習・資格試験との両立が大変」
勉強に実習に、専門学校での生活は忙しい一面も
専門性の高い授業を受けながら、現場研修やインターン実習、レポートや課題制作、さらには資格試験と、1~3年の間にこなさなければならないことも多く、専門学校生活はハードになりがち。その上で就職活動をすることになるため、大学生のようにサークル活動やアルバイトをする余裕がないというケースも。
モチベーションキープするには「専門学校でなりたい職業に向かって一直線に努力する!」という強い動機が必要になる。
「2年の間に大学なら4年分のことをやるから、課題の量が多いなかでの就職活動は大変。授業もちゃんとあるから尚更大変」
(インテリアデザイン専攻2年・女性・広島県)
「2年制で実習もある学科だと、資格取得と実習とでとても忙しくなること」
(診療情報管理学科・2019年卒業・女性・兵庫県)
いずれもメリットの裏返しがデメリットになっていることが多く、何のために専門学校に進学するのかによっても捉え方は変わってくるもの。
まずは、自分が将来どうなりたいのか、専門学校を選んだ場合の自分にとってのメリットは何かをじっくり考えてみることが大切だ。
専門学校の就職サポートって?
専門学校から就職した先輩の声を見てみよう
「希望職種への就職」を前提にしたカリキュラムがあることに加えて、専任の職員が在籍し、学生一人ひとりに対応する親身な就職指導ができるのが専門学校の強み。就職ガイダンスは専門学校入学後まもなくスタート。
就職への心構え、企業研究の仕方、就職活動の流れや進め方など、定期的に開催されるガイダンスによって、自然と就職へのモチベーションが上がるように考えられている。
専門学校の就職活動は学校主導型
大学生の就職活動の場合、就職サイトを使って自力で情報収集や応募を行う人がほとんど。一方、専門学校の場合、学校に寄せられた企業の求人票から選んで就職するケースが大半のようだ。
さらに学校側では、学生が学んだ分野を生かせる就職先を開拓し、求人枠を確保するといったサポートも行っている。
「企業から学校へ直接求人票が届き、情報過多のインターネットやハローワークから探す手間が省ける」
(医療事務科・2019年卒業・女性・福岡県)
「就職課の先生がさまざまな企業と繋がりを持っていて、自分から先生に行きたいところをアピールするとその繋がりを使って紹介してくれる」
(ファッションマスター科3年・女性・愛知県)
クラス担任制で、一人ひとりに親身に指導
クラス担任の教員・就職指導部・キャリアセンターが協力して就職指導を行うことも、専門学校の特長。専門学校はクラス担任制を取っていることが多く、自分のことを普段からよく知っている担任と、就職活動のエキスパートとも言える就職指導部のスタッフが、希望や適性をふまえて企業選びから相談に乗ってくれる。
また、キャリアカウンセラーが常駐している専門学校も多く、就職活動の悩みはもちろん、どうキャリアアップしていくかまで相談できるというから心強い。
「担任の先生からしっかりと面接練習や企業への応募など手厚いサポートを受けることができる。卒業生から身近な話を聞くことができる時間を設けてくれる」
(ホテル専門コース・2018年卒業・女性・東京都)
「カウンセリングでも進路の不安などを相談できるので、就職活動を行う前からでも、不安なことがあれば相談できる環境がある」
(社会福祉科2年・女性・茨城県)
業界セミナー・企業説明会・実習など、さまざまな形で就職を応援
業界とのパイプが太いのも専門学校の特徴
ほかにも、専門学校ではさまざまな形で就職活動をサポートしている。主な取り組みを見てみよう。◆業界セミナー
企業の採用担当者や業界の第一線で働く卒業生を学校に招き、仕事に関する話を聞くセミナー。
最新の業界の動向や採用情報をリアルに知ることができる。
「業界の関係者が多いので、仕事中の風景や裏話などが聞ける。現役の方達から、就職や上手くなるコツなどの講演会を聞くこともできる」
(アニメ科アニメコース2年・女性・福岡県)
卒業生が就職している企業など、複数の企業を学校に招いて行われる説明会。
企業側も「この専門学校の卒業生を採用したい」という気持ちをもっているので、採用担当者との面談でもアピールしやすい。
「学校に色々な業界の方が話に来てくれる。そのまま面接もできた」
(トータルビューティ科・2018年卒業・女性・東京都)
実際に企業などに行って仕事をしながら実務を学ぶことで、実践的な力をつけることができる。
実施期間や時期、方法は学校ごとに異なり、必修単位としてカリキュラムに組み込まれているケースのほか、希望者のみが行う学校も。
「在学中に行うインターンシップの手助けがあり、そのまま就職に繋がるケースが多いと聞く。専門的なことを学んでいるのでインターン先の実習で実践できる」
(製パン専攻2年・女性・福岡県)
履歴書の書き方から教えてもらえるほか、試験対策のための講座や模擬試験も行われる。
面接も個人・グループ・ディスカッション形式など、さまざまなスタイルで指導してくれる。
「面接練習をたくさんしてくれる。過去の先輩の就活レポートが参考になる」
(国際ホテル&ブライダル科2年・女性・千葉県)
就職に関する相談事がある時は、就職指導室やキャリアセンターなどで、いつでも面談を受けることができる。
専任スタッフが求人データの中から学生の希望や適性に沿った就職先を探し、きめ細かいアドバイスをしてくれる。
「学年の人数が少ないため、進路について一人ひとり丁寧に面談をしてもらえる」
(看護学科3年・女性・東京都)
時代の変化によって、それぞれの職業に求められる力も変わってきており、“本当に活躍できる人材”になるためには、今の社会や企業のニーズに合った力が必要。
そのため、企業からの意見を反映したカリキュラムを用意したり、企業から派遣された講師による事前研修や講義を受けた上で実習に取り組んだりと、最新技術や業界の動向をふまえた知識やスキルを身につけられる専門学校が増えている。
「企業の方やプロの方を講師として迎えている学校だから、より現場に近い目で自分の能力を見つめることができる」
(ゲームグラフィック総合コース1年・女性・東京都)
卒業&就職した後のフォローまで徹底した学校も多い。
転職や再就職の相談に乗ってもらえるほか、卒業生のネットワークが強い学校では、社会人を対象にしたキャリアアップ講座が開かれることも。
「キャリアカウンセラーが常駐しており、卒業後も転職や再就職の際、相談に乗ってもらうことができる」
(診療情報管理学科・2019年卒業・女性・兵庫県)
専門学校を選ぶときは、最新の就職情報もチェックを
学校のホームページをチェックし、パンフレットも必ず取り寄せよう
就職先の企業や職種など、卒業後の進路は専門学校ごとに特色がある。就職指導・方針も学校によってさまざまなので、パンフレットを見たり問い合わせをしたり、事前に確認しておこう。
また、就職情報を見るときには、いつの情報なのかや、具体的な就職先まで細かく確認しておくことも大切なポイント。
最近では、来場型だけでなくオンライン上でのオープンキャンパスも充実しているので、就職状況の最新情報を直接聞いてみよう!
文/ミューズ・コミュニティー 構成/寺崎彩乃(本誌)
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