【リーダー育成-第3回】「豊富な勉強量が自信に」。拓殖大学「桂太郎塾」で学んで
今回紹介する大学のリーダー育成プログラムは、2009年4月、拓殖大学で誕生した「桂太郎塾」だ。
塾では拓大が受け継ぐ、グローバル精神と社会に貢献する奉仕精神をもったリーダーの育成を目指す。ちなみに桂太郎とは、明治期に陸軍大臣や首相を歴任した拓殖大学の創始者だ。
2011年拓殖大学国際学部を卒業した松本希美(のぞみ)さん(24歳)は、大学3年生の4月に桂太郎塾の存在を知り、「学べるチャンスは最大限生かそう」と迷わず志望した。無事合格し、塾のプログラムが始まると毎日がめまぐるしく過ぎていったそうだ。
「木曜日は外部講師による講義、土曜日は講師の話に基づくディベートが行われるのですが、法律、経済、文化など、その分野の基礎知識がないと授業には臨めません。事前に関連図書を読み、そこで感じた疑問や質問を授業で解決するということを毎週繰り返しました」。
睡眠時間を削って勉強する日々はきつかったが、やりがいも感じた。
「講師陣は一流の人ばかり。あれだけ充実した講義を受けた大学生は、日本にもそういないのではないかと思うほどです。緊張感をもちながら、徹底的に勉強する環境に身を置いた経験は、とても大きな自信になっています」と言う。
なかでも印象深いのは、1年間準備して取り組んだ論文発表。松本さんに与えられたテーマは「北方領土問題」だった。関連する本を読み、研究者の話を聞き、外交交渉術やロシアの情勢についても調べた。「一つのテーマに対して見解を述べるために、どれほどの知識と問題意識が必要か、身をもって経験できました」。
現在は全国にコーヒーチェーンを展開する企業に勤め、店長としてアルバイト店員を常時10人以上マネジメントしている。今まさにリーダーとして働いている松本さんにとって、リーダー像とはどんなものだろうか。
「私が目指すのは、この人のために働きたい、と思ってもらえるリーダーです。そのためには信頼関係が大事。同じことを伝えても人によって受け止め方が違います。打たれ強い、打たれ弱い、褒めて伸びる、叱って伸びる…。それぞれの個性をよく見てどのタイミングで何を伝えるのかを考えています」。
仕事をしているとさまざまな問題にぶつかるが、そんな時は桂太郎塾で身につけた論理的思考力が生きているという。
「問題に対して原因は何か、それを解決するのは可能か、を順番に考える癖がついています。国同士の問題について、各国の立場、関係性を把握し、解決の糸口を探る方法を学んだ経験が生きている気がします」。
最後に松本さんから高校生へのメッセージをうかがった。
「リーダーになりたいという気持ちがなくても、たくさんのことを学べるチャンスは決して無駄ではありません。大学のリーダー育成プログラムは大きなチャンス。ぜひアンテナを広げチャンスをつかんでほしいですね」。