ライバルは“人工知能”? 文学賞「星新一賞」が誕生
台風が過ぎ去ったあと、村はずれの小さな社あとにできた径1メートルぐらいの穴。地球の中心まで突き抜けているかのようなこの穴に、原子炉のカスや伝染病の実験に使われた動物の死骸などが捨てられるようになった。捨てたいものはなんでも引き受けてくれた穴のおかげで日本は発展。しかし、実はそんな未来の日本の空に、穴はつながっていた…。
科学者でもあった星新一(1926~97年)の代表作『おーい でてこーい』のあらすじだ。宇宙や未来社会などを題材に描かれた1000以上にものぼる星新一のショートショートには、小学生のファンも多い。「読んだことある!」という高校生も多いだろう。
その星新一のような自由な発想力を競う理系の文学賞、日経「星新一賞」がこのたび誕生した。「夢のある物語を書いてみたい」という小説家志望の人も、「宇宙や科学技術に関することは任せて!」という理系の人も、「星新一の大ファン」という人も、要チェックだ。
応募の概要は下記のとおり。
●課題:あなたの理系的発想力を存分に発揮して、読む人の心を刺激する物語を書いてください
●応募部門:一般部門/ジュニア部門(中学生以下) ※個人、グループ、学校単位可
●文字数:一般部門 10,000字以内/ジュニア部門 5,000字以内
●応募締切:2013年10月31日(木)24:00
●賞金・賞品:星新一賞(グランプリ)
一般部門 100万円/ジュニア部門 図書カード10万円分
審査員は、薬剤師の資格をもつSF・ホラー作家の瀬名秀明さん、宇宙飛行士の野口聡一さん、重工業を主体とする製造会社IHI常務の朝倉啓さんが務める。
目を引くのは、応募資格の欄にある次のような記述だ。
「人間以外(人工知能等)の応募作品も受付けます。ただしその場合は、連絡可能な保護者、もしくは代理人を立ててください」
これは単なるジョークではないらしい。昨年、人工知能研究の第一人者として知られるはこだて未来大学の松原仁教授などが、「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」をスタート。星新一のショートショートをコンピュータで解析し、新たにハイクオリティなショートショートの自動生成を目指しているのだ。
なんとライバルは人工知能?! 人間も負けていられないではないか。高校生のみんな、ぜひ時間のある夏休みに挑戦してみてほしい。
※詳細 日経「星新一賞」公式ウェブサイト