私の仕事のスタンスは、あくまで商業デザインがベースにあること。クライアントが求めるものに対し、どのような答えを提示するか?たとえ、素晴らしい出来のデザインであっても、それがクライアントの目的に合っていなければ単なる独りよがりになってしまいます。幸い、頂いている仕事のほとんどは、これまで手がけてきたデザインを評価したうえでの依頼がほとんどですが、それでも自分の個性を表現するだけでなく、クライアントの目的に最大限の結果をもたらすデザインワークを心がけ、実現しています。それがデザイナーとしてのミッションでありやりがいでもあるでしょう。
デザイナーはどういう戦略でどのようなデザインを創り上げるかを考え、提案する職業だと思っています。PhotoShopやIllustratorなどのオペレーション技術も必要ですが、どちらかというと“勘の良さ”が重要かと考えます。クライアントとのコミュニケーションで何かを感じ取る感性、時代の空気を読む観察力など・・・。こうした勘の良さは場数を踏むことで磨かれますが、私の場合は、自分から積極的に情報を深堀りしたり、興味のないことにも興味を持つようにしています。そうすることで、引き出しが増え、その知識がふとした瞬間に仕事に活かされたりもします。
最近のデザイン業界に感じることは、ソフトが使えれば誰でもデザイナーになれるのかな?という印象。良いか悪いかは別として、今後は人工知能で、文字と写真さえあれば最適なレイアウトができてしまうでしょうから、それがデザインと思われてしまう・・・そんな危機感さえ感じています。これからデザイナーを志す皆さんには、そうした“デザイン”とは一線を画す“プロのデザイナー”を目指してほしいと思います。日本電子のデザイン分野は、紙のグラフィックだけでなく、ウェブやアプリなど、ジャンルを超えた“デザイン”の考え方、基礎、実践が学べます。色々なものと向き合える環境を享受しながら、ぜひ自分の興味を広げ学んでください。
GraphersRock.代表/グラフィックデザイン科/2002年3月卒/都立永山高校出身/日本電子卒業後、出版社、デザイン会社を経て、2002年GraphersRock.を設立。グラフィック全般のアートディレクション・デザイン、映像制作などを中心に活動。80年代、90年代のポップカルチャーを継承した独自性の高いグラフィックワークで、CDジャケット、アパレルデザイン、広告媒体を中心に手がける傍ら、日本電子グラフィックデザイン科の非常勤講師も務める。