靖国神社では、年間を通して大小さまざまな祭祀を執り行っています。神社の祭典に携わる部署が祭務部であり、私はここで春・秋の「例大祭」をはじめ、「みたま祭」や「永代神楽祭」などが滞りなく行われるよう、準備などを担当しています。全国に16社しかない勅祭社の1社である靖国神社には、「例大祭」のたびに天皇陛下の勅使が来られて、陛下からのお供え物(御幣物・ごへいもつ)を奉献されます。それだけにお祭りを無事に終えた時の達成感は計り知れません。一方で、祭祀は美しくできてこそ当たり前という面もあり、これが難しさでもあります。そういった意味では、日々の自己研鑽が欠かせない仕事ともいえるでしょう。
靖国神社では祖国に殉じられた246万人を超える人々を御祭神(ごさいじん)としてお祀りしており、戦後80年が目前に迫りご遺族の高齢化も進む中、「祀られている父のために……」といった切実な思いで遠方から毎年欠かさずお越しになる参拝者も数多くおられます。ご遺族から御祭神の思い出話などを伺う機会も多々あり、お一人おひとりの心の機微に触れるたび、あらためて身の引き締まる思いがします。戦争で亡くなった方々やご遺族の思い、戦争の記憶など、こうしたものを次の世代へとしっかりと継承できる神職になることが、私の一つの目標です。
好奇心を原動力に「価値観を広げた4年間」でした。実家が社家(神社)であることから、お参りの作法など、自分にとっては当たり前になっている事柄が多くありました。しかし、今後の神社界を背負っていくうえでは、これら神社の常識の枠を一旦外し、社家ではない同年代の人々から見た「神社」や「神道」を理解することも大切です。そのため、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が全国から集まる國學院大學への進学は、最適な選択だったと感じています。そして学びを深めるとともに、サークル活動やアルバイトに打ち込み、寮生活も経験する中で、多様な価値観に触れながら視野を広げ、これからの神社のあるべき姿を探ることができました。
靖国神社 祭務部祭儀課/神道文化学部 神道文化学科/2022年卒