仕事における大きなやりがいは、人に喜んでもらうこと。『佐渡にもこんなところがあるんだ』と感動してくださる島外のお客様も多く、うれしくなります。召し上がった方の笑顔を見ると励みになる。とてもわかりやすく、気持ちのいい仕事です。なんでも言い合える仲間と一緒に働けるのは本当に心強いです。食材の豊かさはもちろん、島へ帰ってきて改めて感じたのが、佐渡の景色の美しさ。たとえば真野湾の浜辺に見立てて一皿を構成するなど、自然のなかで受けたインスピレーションからメニューが浮かぶこともあります。それってとても贅沢で、幸せなことですよね。
伯父が浦島の会長で、父が社長なので、幼い頃からよく手伝っていたんですよ。厨房に入って洗い物をしたり、お皿を並べたり。朝から市場へ行くのも面白く、喜んでついて行っていました。父の料理姿が、とてもかっこよく見えていたんですよね。いろんな人から頼りにされている様子にも憧れ、料理人になることが将来の夢でした。跡を継げとは誰からも言われていません。手伝いがいやなときもありましたよ。夏休みとか、みんなが遊んでいるときに忙しい仕事なので。だけどたくさんの人がわざわざ足を運び、父の料理で喜んでくれているのが、子どもながらにうれしかったんです。気がつけば「この場所で料理をしたい」と思うようになっていました。
調理師学校に進むことは中学時代から決めていました。選んだのは、叔父の母校である辻調理師専門学校。『料理人になるなら、食の都である大阪で学んでこい』と勧められ、迷いはありませんでした。視野を広げたいからと、和洋中のすべてが学べる調理師本科を選択。なかでもフランス料理の美しさに魅了されました。学生時代に吸収した各分野の基礎が、現在にもつながっていて、フレンチをつくるうえで、和食や中華がヒントになることもあります。食材の組み合わせ方や調理法などが応用できると、勉強して良かったなと感じます。その後、進学した辻調グループのフランス校では、四六時中、料理のことを考えて追究できた、貴重な時間を過ごせました。
「ダイニングアウト」という地域振興プロジェクトで、東京の有名なシェフとタッグを組んだ際、オール佐渡の食材で構成された素晴らしい料理に大きな刺激を受け、佐渡にはこれだけの魅力があるんだと、再認識できました。佐渡にとって、子どもの減少や若者の流出は深刻な状態。『佐渡で活躍したい』と思ってもらえるよう、もっともっと努めていきたい。料理人は場所を選ばない仕事です。世界中のどこでだって活躍できます。その強みを活かし、ここでしか創造できないフランス料理を通じて、佐渡の魅力を発信していきたいと思っています。
Ryokan浦島 フレンチレストラン『ラ・プラージュ』/調理師本科/2011年卒/新潟県佐渡市出身。佐渡島内の高校を卒業後、辻調理師専門学校へ進学。在校中からフランス料理店『ビストロ・ヴェー』で修業に励む。2011年3月の卒業後は長野・軽井沢の『オーベルジュ・ド・プリマヴェーラ』で働き、10月から辻調グループ フランス校へ。リヨンのレストラン『ポール・ボキューズ』で研修を行う。2012年8月に帰国し、家業である「Ryokan浦島」に新設されたフレンチレストラン『ラ・プラージュ』に就職。スーシェフを経て、2015年9月よりシェフを務める。