プロ料理人としてのこの3年間、無我夢中で数多くのことを吸収してきました。私は野生鳥獣の肉を味わうジビエ料理に興味があったことから、就職活動ではジビエの人気店を訪ね、店の味を自分の舌で確かめて回りました。その中で「ここで腕を磨きたい」と直感し、門を叩いたのが現在勤めるビストロです。そして今は副料理長として、肉や魚の「焼き」などを担当しています。同じ鳥獣の肉でも部位やスジの入り方、厚さが少し異なるだけで火の通りは異なります。「全く同じ切り身」は二つとしてなく、火に入れるタイミングをその都度判断しながら毎回、真剣勝負で食材と向き合う。まさに食材との一期一会といえる仕事に、大きな醍醐味を感じています。
「美味しいものを、美味しいと分かる子に育ってほしい」。そのような両親の想いのもと、子どもの頃から家族とともに「美味しい店」を訪ねる機会が多くありました。こうして料理が好きになり、プロの料理人になったのも自然な流れだったのかもしれませんね。フレンチの道に進むことは、織田調理に入学した時点で決めていました。料理の高級感やソースの奥深さをはじめ、コース仕立てにできること、お客様にひと皿ずつお出しできることなど、その魅力はひと言では語り尽くせません。しかし、フランス料理という柱がありながら、日本料理、中国料理等の基礎技術も織田調理で学んだことで、私自身の料理人としての幅は確実に広がったと感じています。
私どもの店では食材へのこだわりはもちろん、盛付けから火の通りまですべてをベストのタイミングでテーブルにお出しすることをモットーとしています。各テーブルの進行状況を厨房から察知しながら、例えばコース料理であれば、あとふた口でスープが終わるタイミングを見計らって、出来立てのメインディッシュを仕掛けるという具合です。大変さはありますが、「最も美味しい」状態でお客様に召し上がって頂きたいという気持ちが何にも勝ります。フレンチの名店や本場・ヨーロッパで修行を積んだ当店オーナー・木村裕二シェフのもと、料理人として腕を磨く今は毎日が学ぶことばかり。これからもより貪欲に、自分の可能性を切り拓いていきたいです。
ビストロ グラン・ソレーユ/副料理長/調理師科(1年制課程)/2016年卒/学生時代、幾つもの店を食べ歩いた中で、「味が抜群によかった」という現在のお勤め先ビストロ グラン・ソレーユに出合った野口さん。「この店での3年間の仕事内容は、本当に充実していました」と笑顔で語ります。料理人として一つの目標とするオーナーシェフのもと、今は担当する業務の幅も広がり、自身の成長の手応えも十二分。「皆さんもプロの料理人をめざすのであれば、安いランチでいいので、まずはさまざまな店でその店の味を自分の舌で確かめることが大切です。そこから、自分の進むべき料理もジャンルもみつかるはずですよ」と、アドバイスをくれました。