【理学・工学部、農学・水産学・畜産学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

小論文の対策と言っても何から始めたら良いものかと悩んでいる人も多いのでは?

学部ごとの出題ポイントを抑えることで、身につけておきたい知識を効率的に得ることができるというもの。

今回は、理学・工学、農・水産・畜産学部の小論文出題ポイントをチェック。

傾向と対策を理解して、今からスタートしよう。

スタディサプリで「現代文」と「小論文」を担当する小柴大輔先生が、ポイントとおすすめ書籍を教えてくれた。

教えてくれるのは
小柴大輔先生

小柴大輔先生
Z会東大進学教室で講師を務めるほか、ロースクール(法科大学院)受験の予備校においても一般教養小論文を指導している。
感覚ではなく論理的に答えを導く指導に定評があり、「現代文に対するイメージが変わった」と受験生から圧倒的な支持を集めている。
スタディサプリでは、現代文の他、小論文や推薦対策講座を担当。

理学部・工学部の小論文対策

【理学・工学、農・水産・畜産学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※理学・工学部で小論文を課す理由とは?

理学・工学部では、特に推薦入試で志望理由書や小論文、面接を課すことが多い。

これは、自分の考えをわかりやすい言葉で語る力「説明力」を大学が求めているからだ。

研究に着手し継続するためには、文科省の予算や企業の投資など研究費の支援を得ることが必要である。

そのためには、国や社会からの理解が不可欠であり、研究者は自身の研究の価値や必要性を説得させるプレゼン力が必須だ。

大学は小論文や志望理由書、面接を課すことで、この力を見極めようとしているのだ。

自分は大学で何を研究したいのか、どの分野に興味があるのかを、自分の言葉で語れるようにしておこう。

そのまとめは、面接の対策や志望理由書の作成にも有効だ。

理学部・工学部の小論文頻出テーマとポイント

◆「好奇心か社会的影響か」

自分が研究する意味は何か、研究したいテーマについて社会的影響、知的好奇心のどちらを優先するのか。

自分の言葉で語れるように、日頃から視点を広げておきたい。

◆「基礎研究と応用研究」

実用性が求められてしまう時代における、基礎研究の重要性を考えてみよう。

基礎研究の重要性を低くみている社会に、将来起こりうるリスクは何だろう。

その社会背景にも言及してみよう。

◆「科学とは」「技術者の資質」「科学者技術者の責任」

ダイナマイトや核兵器など、科学が戦争に使われてしまった歴史、名と成果を上げるための捏造など、科学者をめぐる倫理観は時に危ういものとなる。

科学とは何か。かかわっえてくる倫理にはどんなものがあるのか。科学者としての素質を問われることも多い。

<ADVICE>

ノーベル賞の受賞者に、日本の記者が「ところで先生の研究は何の役に立つんですか?」と聞く場面がよくあります。

これは、「基礎研究」の重要性を社会がいかに理解できていないのかの象徴だと言えるのではないでしょうか。

研究者を目指すのであれば、基礎研究をめぐる社会の課題にも目を向けてみましょう。

そして、自分が進みたい分野の研究が、実用性が低いとされたとしても、人類の学術レベルにどう貢献していくのか、自分の意見として語る力をつけることが大切です。
★学校ごとの詳細をチェックしよう
資料請求はこちらから

理学部・工学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

『これだけは読んでおきたい科学の10冊』
池内了・編集 岩波ジュニア新書(2004年)

科学者たちが本を紹介している。

内容は、ワインバーグ『宇宙創成はじめの3分間』/ローズ『原子爆弾の誕生』/吉田洋一『零の発見』/本川達雄『ゾウの時間 ネズミの時間』/ローレンツ『ソロモンの指輪』/カーソン『沈黙の春』/ワトソン『二重らせん』/モリソン他『POWERS OF TEN』/ガモフ『不思議の国のトムキンス』/アインシュタイン・インフェルト『物理学はいかに創られたか』
『科学者という仕事─独創性はどのように生るか─』
酒井邦嘉 中公新書(2006年)

著者は1964年東京生、東大物理学科卒、同大学院修了、MIT客員教授を経て東大教授。

本書では、アインシュタイン・ニュートン・湯川秀樹・朝永振一郎・小柴昌俊ら有名科学者のエピソードが多数。

科学研究者になるための心得が満載。

入試小論文にも頻出する。
『捏造の科学─STAP細胞事件─』
須田桃子 文芸春秋社(2014年)

著者は1975年生、早大大学院理工学研究科物理専攻修士課程修了、毎日新聞社科学環境部の記者。

センセーショナルな「万能細胞」作成の発表から疑惑発生、捏造認定と論文取り消しにいたる経緯はもちろんのこと、科学ジャーナリズムの仕事がどういうものか、つぶさにわかる一冊。
『科学は未来をひらく─中学生からの大学講義3─』
村上 陽一郎 他 ちくまプリマー新書(2015年)

著名な科学者による中高生への講演をまとめたもの。各筆者による読書案内コーナーもある。
『研究不正─科学者の捏造、改竄、盗用─』
黒木登志夫 中公新書(2016年)

著者は1936年東京生、東北大医学部卒、専門はがん細胞研究。東大教授、岐阜大学長など歴任。

不正事件を反面教師とする科学者倫理の本。

高度な専門領域についてもわかりやすく記述している。各所にユーモアもある。
『科学の現場─研究者はそこで何をしているのか』
坂井克之 河出ブックス(2015年)

著者は1965年生、総合内科専門医・医学博士、ロンドン大神経学研究所、東大病院勤務。

「人間的な」営みでもある科学。さまざまな欲望がうずまく現在進行形の現場を活写。
『科学と非科学─その正体を探る─』
中屋敷均 講談社現代新書(2019年)

著者は1964年生、京大農学部農林生物学科卒、同大学院博士課程修了。神戸大教授。

本書は平易でいて含蓄深い、良質な科学エッセイ。

キーワードは「カオスの縁」。

東大現代文で出題。
『物理学者のすごい思考法』
橋本幸士 インターナショナル新書(2021年)

著者は1973年生、京大理学部物理学科卒、同大学院理学研究科修了、理学博士、素粒子物理学を専門とする阪大教授。
本書は物理学者の日常を紹介した本で、関西弁のノリで楽しく物理学者のものの考え方に接近できる。
『誇り高い技術者になろう ─工学倫理学のススメ─』
黒田光太郎・戸田山和久・伊勢田哲治編 名大出版会(2004年)

工学や技術者が現代社会で果たすべき役割と倫理を、具体的な事件や事故を資料に語る画期的な工学倫理学の試み。

わかりやすく高校生でもスラスラ読める。

農学部・水産学部・畜産学部の小論文対策

【理学・工学、農・水産・畜産学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※農水産業は今後どうあるべきか、自分なりの意見をまとめておこう

これまで国内だけの問題であり文化であった農業、水産、畜産の分野は、昨今では地球規模の問題となっている。

このため、グローバルな視点で考える力が求められている。

例えば、「動物の感染症」がある。

今回の新型コロナ感染症も、動物を経由していたことも報じられた。

ここに繋がる問題が「動物倫理」の議論の有無だ。

家畜を含めた動物が生活する環境を整えることで、結果的に感染症を防止することができる。

今後、動物倫理を考慮した畜産の在り方が国内でも求められるだろう。

日本の農水産業は今後どうあるべきか、考えておきたい。
 
また、SDGsは小論文でも面接でも話題にのぼることが多いテーマだ。

ただ17の目標についての知識を問われるのではない。

もう少し深く掘り下げて、「SDGsと掲げて目標を達成しようとするだけで大丈夫なのか」という問題意識を持って考えてみよう。

農学部・水産学部・畜産学部の小論文頻出テーマをチェック!

◆「環境問題」

例えばSDGsで盛んに言われているエコの問題。

ポリ袋を有料にするだけで解決するのか、政治・経済とエコ推進の関連性などについて考えてみよう。

また、環境にやさしい行動で根本的な問題を見えにくくする「グリーンウォッシュ」のリスクについて知ろう。

◆「SDGsで十分か」

目標に向かって遂行することが目的となっていないか、根本的な問題はどこにあるのか。

簡単に解決できないと考えるのなら原因はどこにあるのか。

持続可能で地球環境を守る農水産業は本当に可能かなど、深く掘り下げて考えてみよう。

◆「遺伝子組み換え作物の功罪」

遺伝子組み換え作物がいけないとすればなぜなのか、良いとすればどの部分なのか。

技術、倫理などの視点も含めて、メリットとデメリットを自分の言葉で説明してみよう。

◆「動物倫理」

世界では近年クローズアップされているが、日本では議論が遅れている動物倫理。

これまで日本の農水産業は、安さや効率を追求してきた。

今ここで動物倫理の考え方を取り入れるならば、当然肉や加工品の価格は上がるだろう。

しかし、時代と世界は「動物倫理」を議論するべき時にきている。

では、日本の社会や消費者に理解してもらうためにはどう説明するのか。自分の意見をまとめて、実際に書いてみよう。

<ADVICE>

「動物倫理・人間の責任」「持続可能な農林水産業・畜産業」の視点からニュースや新聞をチェックして、日頃から自分の意見をまとめる練習をしておきましょう。

実は農業・水産・畜産は、変化が大きい分野。

世界の考え方や技術は刻々と進化しています。

グローバルになったからこそ浮上する問題に敏感になることが大切です。
★学校ごとの詳細をチェックしよう
資料請求はこちらから


農学部・水産学部・畜産学部の小論文対策に読んでおきたい!小柴先生おすすめ本

『動物を守りたい君へ』
高槻成紀 岩波ジュニア新書(2013年)

著者は1949年生、東北大大学院理学研究科修了、麻布大獣医学部教授。

ペット、家畜、野生動物と人間との、望ましい関係を語っている。ブックガイドも収録。
『生き物と向き合う仕事』
田向健一 ちくまプリマー新書(2016年)

著者は1973年生、麻布大獣医学部卒、獣医師。

獣医師になったきっかけから、日々の仕事ぶりまで紹介されている。ブックガイドも収録。
『動的平衡─生命はなぜそこに宿るのか─』
福岡伸一 木楽舎(2009年)

著者は1959年生、京大卒、ハーバード大研究員を経て、青学教授、分子生物学者。

近年、テレビにも出演し、特徴的な眉毛とメガネでおなじみになりつつある「福岡ハカセ」の、その名をとどろかせた一冊。

機械論的生命観を批判し、ダイナミックな流れと秩序としての生命のありかたが語られる。

分子生物学の先端的な話を一般向けに語っているが、わかりやすさのみならず、文章が美しく、ハカセの本を次つぎ読みたくなる。

2011年に続編が出版されている。
『もう牛を食べても安心か』
福岡伸一 文春新書(2004年)

「狂牛病」とはなにか。強制共食いともいえる肉骨粉飼料の罪と自然からのリベンジがテーマ。

第一回日本科学ジャーナリズム賞受賞。
『日本の農業を考える』
大野和興 岩波ジュニア新書(2004年)

著者は1940年生、島大農学部卒、日本農業新聞記者を経て、フリーランスに。

米国の農薬・種子販売大手のモンサント社の話は衝撃的。

強力な除草剤ラウンドアップは強力すぎて雑草ばかりか主作物も枯らす。そ

こで毒性を薄めると思いきや遺伝子組み換えでラウンドアップに耐える小麦、ナタネ、トウモロコシを作ったという。

ちなみにモンサント社はベトナム戦争の枯葉剤のメーカーでもある。
『SDGs(持続可能な開発目標)』
蟹江憲史 中公新書(2020年)

著者は1969年生、慶大総合政策学部卒、同大学院博士課程退学。

2015年に国連で採択された2030年までに達成すべき17の目標の解説。

グローバルな視点と根本的な課題の追究を

【理学・工学、農・水産・畜産学部】小論文の頻出テーマと対策をスタサプ講師が解説!

※グローバルな視点で考察することが重要

研究者、技術者、農業・水産・畜産など、自然を相手にする分野だからこそ、地球環境を考えた視点をもつことが重要だ。

さらに、その分野だけではなく、政治や経済、倫理との関連性にも考察を広げていきたい。

質の高い小論文を書くためには、日頃からポイントに関連する時事問題に関心をもつことが重要。

新聞・書籍を読み、テーマについて繰り返し書いてみることで上達するはずだ。


取材・文/櫻庭由紀子 監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌)


★学校ごとの詳細をチェックしよう
資料請求はこちらから