小論文の書き出し・序論の書き方は?点が取れる!小論文の書き方マニュアルⅡ

「小論文の書き方完全マニュアル」では、小論文と作文の違い、基本的な書き方について解説した。
 
この「マニュアルⅡ」では、小論文で加点を得るためにするべきことに焦点を当て、オリジナリティのある視点の設定の仕方、論の展開の仕方などを解説していく。
 
さらに、小柴先生が「最も重視して対策を行うべき」と話す序論の書き方について、より詳しく紹介。
 
小論文を得点源にしたいキミは必見だ。

まずは小論文の基本を理解しよう

小論文の学習は初めて、苦手意識があるという人は、まずはこの「書き方完全マニュアル」で、小論文の基礎について理解しよう。

小論文を書く前に整理すべきこと、序論、本論、結論の書き方、原稿用紙の使い方・ルールなど、小論文を書くうえで必ず押さえておきたことを、初心者でもわかりやすいように解説されている。

基礎を理解してから、この「マニュアルⅡ」を読むことで、より有意義なものになるはずだ。

小論文で求められる“オリジナリティー”とは何か?

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド
 
「小論文ではオリジナリティーが求められる」とよく言われるが、このオリジナリティとは何か、正しく理解できている高校生は少ない、と小柴先生は言う。

まずは、小論文で求められるオリジナリティとは何かついて、詳しく聞いた。

「小論文では“オリジナリティー”も採点の要素となっていますが、誤解してほしくないのは、テーマとなっている社会問題などに対して、何か画期的な意見を書かなければいけないわけではないということです。
 
これから大学で学ぶ受験生にそこまでは求められていません。
 
何年も積み上げてきた自説や持論を表現するということではなく、仮説でよいから言葉を出すことが求められているのです」

なるほど。
 
確かに、少子高齢化や地球温暖化など、専門家でも答えがなかなか見つからない問題に、受験生が独自の解決策を提示するというのは、冷静に考えればちょっとあり得ない。
 
すると、この場合のオリジナリティーとは何だろう?実現性などは無視して、変わった意見を書けばいいということ?

「いえいえ、根拠の薄い思いつきのような意見では、いくら個性的だろうと、小論文として成立しません。
 
小論文で示される意見とは、論理やデータで組み立てていくもの。
 
そこを勘違いしてしまう受験生も意外といるんです」

ふむふむ、納得。
 
しかし、そうなると、すでにあるデータに基づいて論理的に考えれば考えるほど、既存の専門家の意見に似通ってきそう。
 
むしろ、オリジナリティーから遠のいてしまう気がしないでもないが…。
 

エッジの効いた視点を設定することがポイント

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド

「小論文で求められるオリジナリティーとは、“視点”の独創性です。
 
少子高齢化というテーマであれば、そこに、例えば、『核家族化』『無縁社会』といった視点を自分なりに加えることで、ありがちな少子高齢化論とは一線を画すことができます。
 
大きなテーマをそのまま扱うのではなく、現代社会に生きる当事者として、問題を絞り込むことで、オリジナリティーが生まれるのです」

そしてもう一つ、より重要になるのが、自分が関心のある学問に沿った視点を採り入れること。
 
どういうことかというと、経済学部志望なら経済の視点から、法学部志望なら法律の視点から、教育学部志望なら教育の視点から、課題について切り込んでいくという意味だ。
 

小論文の課題として提示される社会問題の多くは、実はさまざまな角度から切り込むことができる。
 
数百字の小論文で、テーマの全体像を書き切ることはできないので、自分が得意な(あるいは関心のある)学問分野に寄せて、その視点から論じることで、限られた文字数の中でよりエッジの効いた論を展開することができるというわけだ。
 

志望学部・学科に関連する知識は深めておきたい

「ですから、少なくとも自分の志望学部・学科に該当する分野に関しては、知識を深めておくべきですね。
 
単なる小論文対策というだけでなく、入学後の学びにも役立ちますから。
 
できれば、メインとなる学問分野以外にも、語れる分野をいくつか作っておくと、テーマに応じて最適な視点を選択できるようになります」

必ずしも自分の得意な切り口が志望学部・学科とピッタリ一致していなくても構わないが、志望分野なのだから、分野選びの段階でいろいろ調べているだろうし、日々の関連ニュースもチェックしているはず。
 
何より興味があるのだから、志望分野を得意な切り口にするのが王道だろう。
 

ただ、経済学部志望だからといって、すべてのテーマを経済の視点でしか語れないのも問題あり。
 
経済では論じにくいテーマもあるだろうし、社会の一員として、すべての分野について、一定の関心はもっておくべきだからだ。
 
そのため、2番手、3番手に採用できる学問分野も是非とも準備しておきたい。
 
ちなみに、その学問分野に関連する職業の立場から考えるというやり方もあるので覚えておこう。
 
医学であれば医師や看護師、経営学であれば経営者、教育学であれば教員などで、こちらのほうが書きやすい場合もよくある。
 
例えば、「現在の教育界が抱える問題について、教員の労働環境という視点から考える」というアプローチもできるわけだ。
 

視点の設定をしたら次は全体のシミュレーション

さて、そうなると、小論文を書くにあたって最初にやることは、この「視点の設定」ということになる。
 
テーマそのものをもう一段絞り込むことができるかどうか、そして、どの学問分野の視点から切り込めるかを考えて、うまく自分なりの視点を設定することが、大きなポイントだ。
 

例えば、「若者のスマホ依存の是非について論じなさい」というテーマであれば、以下のように考えることができるだろう。
 

①このテーマ自体もう少し掘り下げられるだろうか。
 
「人間関係の希薄化」という切り口で論じるのがいいかな…。
 
いや「勉強時間が少なくなる」という問題に絞る手もあるな。

 

 

②学問分野に関しては、自分が得意な「経済」で切り込むのは少し難しそうだ。
 
「社会学」や「コミュニケーション論」の視点ならいけるかも。
 
若者の問題だから「教育」の視点でいくのもおもしろいかな…。

 

 

③よし、「スマホ依存によって勉強時間が短くなる」という問題について、教育の視点から書いてみよう。
 
さて、使えるデータはあったかな…。

このように視点の設定ができると、全体の構成についても考えることができる。
 
ここで、全体像をしっかりシミュレーションしておくことが、小論文の書き方の次なるポイントだ。

「実際に書き始める前にシミュレーションすることは大切です。
 
時間がないので下書きまでする必要はありません。
 
メモ程度で十分。
 
自分の設定したテーマで、序論・本論・結論が展開できるかを最初に確認しておくのです」

シミュレーションはしっかりやっておきたいので、5~10分程度かけてOK。
 
焦って書き始めたくなる気持ちはわかるが、途中まで書いて「やっぱり無理だ!」となった場合のほうがタイムロスは大きい。
 
シミュレーションさえできていれば、書き始めてからはスムーズに進むはずなので心配しなくて大丈夫。
 

序論をしっかり書いて点数を稼ごう!

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド

「小論文の書き方完全マニュアル」でも説明した通り、小論文は「序論」「本論」「結論」で構成される。
 
なかでも、最も重要となる序論について、小柴先生は次のように話す。

「序論がしっかり書かれていれば、読み手は、序論によって、この小論文が何についてどう論じようとしているかを、冒頭で把握することができますから、グッと読みやすくなる。
 
それだけではなく、書き手にとっても、自分がどの方向に書き進んでいくかがハッキリするため、書きやすくなりますね」

もちろん序論がうまく書ければ加点も得られる。
 

「まず、序論がしっかり書けているわけですから、それだけで、構成力の項目で加点が得られます。
 
また、視点がしっかり示されていれば、オリジナリティーの面でも加点を得られるでしょう」

例えば、「グローバル化の進展の是非について論じなさい」という設問に対し、「グローバル化の是非に関して、多様化に伴う食文化の発展という視点から、賛成意見を論じる」という序論を書いたとしよう。
 
「食文化」という変化球の視点であっても、最初に「この視点で書く」と明示しておけば、読み手が戸惑うことはない。
 
「読みやすさ(=構成力)」という意味でもバッチリだし、この時点でオリジナリティーのアピールもできるというわけ。
 
なお、この場合は、序論で「賛成」という結論も言ってしまっている(最初に結論を書いても構成上はまったく問題ない)。
 
大事なことはほぼこの序論を読めばわかるようになっている。
 

これだけは避けよう!序論のありがち失敗例

というわけで、序論をしっかり書くことができれば、それだけで点数が取れる。
 
しかも、視点の設定さえできていれば、パターンもある程度決まっているので序論は決して難しくない。
 
ここで点を取りこぼすことのないようにしたいところだ。
 
ところが、残念なことに、小柴先生によれば、序論がちゃんと書けずに、点を失っている受験生が意外なほど多いのだとか。
 
もったいない!

「最もよくあるのが、“序論がない”というパターンですね。
 
随筆・エッセイのように、最近あったできごとなどからつらつらと書き始めてしまう受験生が結構いるんです。
 
朝日新聞の天声人語をはじめ新聞のコラムなどでよく使われる手法で、そのほうが文章として格好よく見えるのは確か。
 
しかし、小論文と随筆・エッセイとは違います。
 
いくら文章としては格好よ良くても、小論文に求められる条件を満たしていなければ、点数を損することになります」

また、このほかによくあるのが、設問の文章を繰り返しているだけで、自分なりの視点を何も提示できていない序論。
 

例えば、「地球温暖化対策について、国際関係論の視点から論じなさい」という設問に対して、「地球温暖化対策について、国際関係論の視点から論じる」という序論を書いてしまうパターン。
 
これでは、読み手に何一つ新たな情報を提供できていない。
 
苦し紛れの文字数稼ぎなのは読み手にも明らかで、これも減点の対象になってしまう。
 
何でもいいから書いておこうではダメなのだ。
 

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小論文の書き出し【例文】19選。点が取れる!小論文の書き方マニュアルⅢ

序論ではどんなことが重視されるのかがわかったら、実際の例文を読んで理解を深めよう。

この「マニュアルⅢ」では、書き出し例文と書き方のポイントが解説されているので要チェックだ。
 

本論を強くするのは論理的思考力

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド
 
次に本論に入るわけだが、書く前にしっかりシミュレーションしておきたいのが、自分の意見に対する反論をどう設定するかということと、それをどう乗り越えるかということ。

「シミュレーションの段階で、自分が主張しようとしている意見に対し、もう一人の自分がいくつも反論をぶつけることで、意見そのものがブラッシュアップされます。
 
反論を乗り越えることができなければ、その意見は弱いということ。
 
その場合は反論のほうをメインの意見にもってきてもいいでしょうね」

小論文では論理的思考が大切だとよく言われるが、このように、頭の中で、ありうる反論をぶつけて乗り越えるというプロセスこそがまさに論理的思考。
 
本論ではそれを文章化していくというわけだ。
 

議論が苦手な人は、つい自分の意見にこだわってしまったり、視野が狭くなったりしがちだ。
 
そのため「なぜ?」と人から突っ込まれるとしどろもどろになってしまう。
 
これは実は文章でも同じことがいえる。
 
読み手は常に、小論文中に示される意見について、「なぜそう言える?」という視点を持って読んでいる。
 
それを意識することが大切なのだ。

「このように論理的に考える力を養うためには、日頃から、何か自分の意見を思いついたら、『本当にそれは正しいのか?』と自問自答する習慣をつけることです」

例えば、「日本の伝統が損なわれてしまうからグローバル化には反対だ」という意見が思い浮かんだとしたら、「日本の伝統が損なわれてしまうのは本当にグローバル化が原因か?」「異文化をシャットアウトすることで自国の伝統文化を守るという考え方は本当に正しいのか?」と自分に問う習慣を作っておくことは有効な小論文対策。
 
それだけではなく、大学に入ってから、あるいは社会に出てからも役に立つ論理的思考力を鍛えることにもなる。
 

図表分析のコツも頭に入れておこう

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド
なお、小論文問題にはグラフなどの図表を読み解くタイプの問題もよくある。
 
これをどう攻略するか頭を悩ませる受験生も多いかもしれない。

「図表が出されるということは、それを分析する力が問われているわけです。
 
ですから、図表内の数字をそのまま“点”で引用するだけでは弱い。
 
グラフの数字の変化からどんな傾向が読み取れるかなど、“線”で指摘できるとベターですね。
 
図表内の複数の項目を関連つけたり、自分の知識と関連つけたり、図表の情報をまとまった言葉で概念化したりできればなおいいでしょう」

大切なのは、とにかく数字の傾向や変化を読み取ることを意識すること。
 
あえて問題に出される図表なのだから、出題者が「ここを読み取って!」と考えているポイントが必ずあるはずだ。
 

一文は短く!接続詞はふんだんに使うのがオススメ

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド
さて、あとは、小論文らしい文章を書くための細かいポイントも小柴先生に解説してもらおう。

「これは基本中の基本ですが、小論文では一人称に“僕”や“自分”といった表現は使いません。
 
必ず“私”で統一しましょう。
 
また、そのほうが丁寧な印象を与えるからか、文末を“です・ます”調で書いてしまう受験生もいます。
 
志望理由書なら“です・ます”調でも問題ないですが、小論文では“だ・である”調でそろえましょう」

そのほか、文章を書き始めると、やたらと一文が長くなってしまうという人もいるはずだが、これも注意が必要。
 
ダラダラと長い文章はとにかく読みにくい!一文が60字(通常の原稿用紙だと3行)を超える文章は基本長すぎ。
 
短い文章に切って、接続詞でつなぐことを心がけよう。
 

その接続詞は、ふんだんに使うことがオススメだ。

「“だが、しかし、けれども、なぜなら、というのも、したがって、だから、このように、つまり、すなわち、また、さらに”などの接続詞は、もちろん適切なところで使うことが条件ですが、ふんだんに盛り込んだほうが文章に流れができます。
 
前の文章と次の文章の関係が明確になるので、読みやすいのはもちろん、書き手側にとっても、文章が迷走しにくくなります。
 
なお、“そして”は意味が曖昧な接続詞なので、できるだけ使わないほうがいいですね」

 

小論文試験につきものの要約問題にもコツがある!

小論文完全マニュアル② 小論文は序論が命!点が取れる小論文の書き方ガイド
 
さて、最後に小論文試験にはつきものの要約問題の書き方についても小柴先生に聞いておこう。

「課題文を要約する際には、抽出する要素と削除する要素を整理することがポイントですね。
 
例えば、具体例。
 
これは要約では削ってOKです。
 
これに対して、筆者のメインメッセージに対する比較キーワードや、文中に書かれている反論は重要。
 
これを盛り込むと、文章全体の対立構造をとらえたいい要約になります。
 
よくメインメッセージだけを抜き出してまとめてしまう受験生もいますが、それでは少し弱くなります」

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監修/小柴大輔 構成/寺崎彩乃(本誌)
※2024年10月更新