漫画家として特に力を入れてきたのは、読みやすさや分かりやすさです。雑誌に掲載されるようになると、学生時代に先生や友人に読んでもらっていた頃よりも、ずっと多くの人に作品を読んでもらうことになります。だからこそ、どうすれば伝わるかを常に意識して描いてきました。自分の作品を好きだと言ってもらえた時や、作品が読者の方の内側に届き、物語を閉じたあとも、意識の端や人生のどこかに気配のように残っていると感じられた時に、描いてよかったと思います。絵柄でも考え方でも自身のこだわりに囚われすぎず、これからもできるだけ情報を更新しながら向き合っていきたいです。
在学中、特に印象に残っているのは相互講評の授業です。完成した作品をクラスメイトと読み合い、良いところや改善点を講評シートに書いてもらうことで、自分では気づけなかった視点をたくさん知ることができました。友人の原稿の手伝いも、大きな学びのひとつです。自分以外の原稿に触れることで、友人が使っているテクニックや表現を直に学べたのは、貴重な経験でした。授業で学んだコマ割りや時間の進み方、動きの流れ、吹き出しの位置といった基礎は、感覚的に済ませていた部分を整理する助けになりました。行き詰まった時にも、理論を手がかりに考え直すことができ、漫画制作に向き合う際の拠り所になっています。

これまでに手がけてきた漫画作品です。現在はデジタル版のみ流通しています。(C)小森羊仔/集英社
「マンガを描くのに大学に行く必要があるのか?」と考える人も多いと思います。私自身、入学前は卒業後の進路や人生設計を考える中で、不安を感じていました。それでも、「一度きりの人生、機会があるなら好きなことを思い切り学びたい」という気持ちで進路を選びました。大学には趣味や感覚の合う人たちが集まり、情報交換をしたり、一緒に過ごしたりする時間がとても楽しかったです。漫画家になった今でも、大学時代に何をして、何を感じてきたかは、作品制作や自分自身の考え方に大きく影響していると感じています。人生のうちの4年間を、好きなことに全振りして過ごすという選択は、とても贅沢で意味のある時間になると思います。

先生方や友人との関わりを通して、漫画以外のさまざまな経験ができたことも心に残っています

フリーランス/美術学部 美術学科マンガ専攻/2011年卒/2010年、集英社「金のティアラ賞」にて銀賞を受賞。翌2011年、雑誌「YOU」にて受賞作『きみが死んだら』が掲載され、漫画家としてデビュー。その後、読み切り作品や短期集中連載を発表するほか、書籍や雑誌へのイラスト寄稿も行う。雑誌「月刊YOU」にて『シリウスと繭』を連載(全2巻)。その後、『青い鱗と砂の街』(全2巻)、『木陰くんは魔女。』(全3巻)などを刊行。合間に雑誌「bianca」や「ザ・マーガレット」などでも読み切り作品を発表している。
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