大学受験の基礎知識!入試の種類、仕組み、日程は?図版でわかりやすく解説!
大学への進学を考えているけれど、いろいろな入試があって、どんな試験を受ければいいのかわからない…。そもそも大学受験の仕組みがよくわからないけど、今さら誰にも聞けない…。
そんなお困りごとを解決すべく、大学入試について、入試の種類やスケジュール、国公立大と私立大の入試の特色や受験費用などについて、基礎からわかりやすく解説。
最近の受験傾向やそれぞれの入試の対策方法については、スタディサプリ講師でカンザキメソッド代表の神崎史彦先生にアドバイスをいただいた。
神﨑史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。
スタディサプリ講師。私立学校研究家。高大接続・教育コンサルタント。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
のべ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
目次
【STEP1】大学受験の仕組みを知る
※大学受験を仕組みはやや複雑。しっかりと理解しよう
大学入試の方式には、大きく分けて、「一般選抜」「学校推薦型選抜(公募制・指定校制)」「総合型選抜」の3種類がある。また、大学入試の試験には、大学入試センターが実施する「大学入学共通テスト」(通称、共通テスト)と各大学が独自に実施する「個別試験」がある。
国公立大学でも私立大学でも上記3種類の方式を行なっているが、入試の仕組みや特色はそれぞれ異なる。
順番に解説していこう。
大学入学共通テストについて理解しよう
大学入学共通テストとは、高校での基礎的な学習の到達度を測る試験のこと。毎年1月中旬に2日間にわたって行われ(2024年の共通テストは1月13日・14日に実施)、基本的には自分の居住地の近くの試験会場で受験できる。
解答方法はマーク式で、国語、地理歴史、公民、数学、理科、外国語の6教科・30科目の中から自分が受験する大学で指定されている科目を選択する。
国公立大学の一般選抜では、この共通テストと各大学が実施する個別試験(2次試験)の両方を受験する必要がある。
その名のとおり、国公立大学の一般選抜志願者全員が“共通”で受けるテストだが、後述するように、私立大学でも共通テストの成績で合否を決める方式(大学入学共通テスト利用入試)を導入している大学が多くある。
また、国公立大学の学校推薦型選抜や総合型選抜では共通テストを課すケースも少なくない。
このため、実際は大学合格をめざす受験生の多くが共通テストを受験する。
国公立大学の一般選抜を受験する場合は、共通テストでは5教科7科目が課されるのが基本。
私立大学の共通テスト利用入試を受験する場合は、大学・学部・学科によって異なるが、1教科~3教科が中心となる。
なお、共通テストは2025年から新課程に対応したものになり、一部の教科・科目や試験時間が変更になるため、必ず最新の情報をチェックしよう。
今さら聞けない!大学入学共通テストの基礎知識!一般入試と何が違うの?
国公立大学の一般選抜は共通テストと個別試験で決まる
国公立大学の受験方式には、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜がある。中心となるのが一般選抜で、共通テストと個別試験の総合成績で合否が決まるのが特徴。
一般選抜には前期・後期の2つの日程があり(一部の公立大学では中期日程もあり)、いずれも1校ずつしか出願できない。
1次試験にあたる共通テストの結果をふまえて2次試験(=個別試験)に出願するため、共通テストの結果次第で出願校を変更するケースもあり得る。
また、近年は、国公立大学でも学校推薦型選抜や総合型選抜の募集枠が増えてきている。
私立大学の入試には多様な受験方式がある
私立大学の受験方式には、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜があり、その試験内容や出題傾向は、大学・学部・学科ごとに多様だ。一般選抜は、各大学が独自に行う個別試験(2〜3教科)によるものと、共通テストを利用したものに分けられる。
試験日さえ重ならなければ何校でも出願できるのが、私立大学一般選抜の大きな特徴だ。
また、学校推薦型選抜には公募制と指定校制があり、後述するように出願に際しての条件が異なる。
近年は、私立大学における学校推薦型選抜や総合型選抜による受験者・入学者が増えており、大学・学部・学科により異なるものの、多くの受験生がこれらの方式を利用している。
【STEP2】大学受験の種類を知る
大学の入試方式には、「一般選抜」「学校推薦型選抜(公募制・指定校制)」「総合型選抜」の3種類がある。それぞれについて詳しく見ていこう。
一般選抜(国公立大学)
※国公立大学では共通テストと個別試験が課せられることが多い
学力試験の結果が重視される
以前は「一般入試」と呼ばれていた一般選抜は、国公立大学ではもっともオーソドックスな方式。書類審査により高校での成績や活動状況が評価される学校推薦型選抜や総合型選抜とは異なり、当日の学力試験の結果が重視されるのが特徴だ。
前期日程、中期日程(一部の公立大学)、後期日程があり、それぞれ1校ずつ出願できる。
共通テスト+個別試験で合否が決まる
国公立大学の一般選抜は、共通テストと個別試験(2次試験)の総合成績で合否が決まる。共通テストでは、5教科7科目(6教科8科目の大学もある)を課すのが一般的。
2次試験の前期日程は筆記による学科試験、後期日程は論文や総合問題、面接が行われるケースが多い。
なお、満点・配点は大学・学部により異なり、共通テストに重きを置くところもあれば、2次試験にウエイトを置くところもある。
1月に共通テスト、2・3月に個別試験を受験
スケジュールとしては、1月中旬に実施される共通テスト(2024年は1月13日・14日)を受験し、その結果をふまえて各大学の個別試験(2次試験)に出願する。2月下旬に前期日程(2024年は2月25日〜)の試験を受け、不合格の場合は、3月上旬に行われる中期日程(一部の公立大学のみ)・後期日程の試験を受験する。
近年は後期日程を廃止する大学も増えており、この傾向は今後も強くなることが予想される。
一般選抜(私立大学)
個別試験は複数の日程&受験チャンスがある
私立大学の一般選抜には、各大学が独自に行う個別試験によるものと、大学入学共通テストを利用したものがある。個別試験については複数の日程を設けている大学・学部・学科が多く、複数出願が可能な場合もあるので、必ず募集要項を確認しよう。
受験科目は3教科が基本。2教科や1教科のケースも
個別試験の場合、受験科目は3教科が基本。文系の場合は、英語、国語が必須で、地歴・公民・数学から1科目を選択するケース、理系の場合は、英語、数学、理科が必須のケースが多い。
一方、近年は、2教科や1教科で受験できる私立大学・学部・学科も増えてきている。
大学入学共通テスト利用入試はメリットあり
私立大学が行う大学入学共通テスト利用入試とは、共通テストの成績で合否を判定する方式のこと。共通テストの得点だけで判定するケースが多いが、独自試験との総合成績で判定したり、独自試験と共通テストのうち得点が高いほうで判定したりするケースもある。
受験生にとっては、共通テストを受験するだけで複数の私立大学に出願できる、国公立大学と私立大学の併願がしやすいなどのメリットがある。
また、同じ大学・学部・学科で、個別試験と共通テスト利用入試の両方に出願することも可能なため、合格のチャンスを広げることもできる。
ただし、共通テスト利用入試は、定員が少なく合格ラインが上がりやすい面もあり、個別試験による一般選抜より難易度が高くなるので、注意が必要だ。
学校推薦型選抜
※学校推薦型選抜は学校長の推薦が必要になるので注意しよう
出願条件を満たし、かつ、学校長の推薦が必要
学校推薦型選抜とは、出願の際に出身高校の学校長の推薦が必要な入試のこと。また、大学が指定する評定平均などの出願条件を満たしている必要がある。
国公立大学ではほとんどの場合が専願(他大学との併願を認めない)だが、私立大学は大学により異なり、併願が可能なケースもある。
「公募制」と「指定校制」がある
学校推薦型選抜のうち「公募制」は、出願できる高校に制限がなく、大学が定める出願条件を満たし、高校の学校長の推薦があれば、誰でも受験できる。一方、私立大学や一部の公立大学が行う「指定校制」は、大学が指定した特定の高校の生徒にのみ出願資格がある。
指定校制の場合、一つの高校から推薦できる人数が限られているため校内選考が実施されるが、そこで選ばれて出願できれば合格率は高い。
書類審査、面接、小論文が主流。学力も問われる
選考方法は、書類選考(調査書、推薦書、志望理由書など)、面接、小論文、学力検査などが一般的。国公立大学のなかには学力試験として共通テストを課すケースもある。
高校の成績や活動状況、大学の志望理由、学びへの意欲などを含めて、総合的に人物や学力を評価するのが特徴だ。
出願条件や選考方法は各大学によって異なるので、募集要項をしっかり確認しておこう。
学校推薦型選抜とは?公募推薦と指定校推薦の違い、出願資格・スケジュールも徹底解説
総合型選抜
※総合型選抜は大学と受験生がじっくりと時間をかけてマッチングするのが特徴
個性や適性、意欲など総合的に人物評価を行う
総合型選抜(旧・AO入試)とは、大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)に合った人物を、面接などを通して選抜する方式。学力面だけでなく、高校での活動、受験生の個性や適性、意欲など総合的に人物評価を行うのが特徴だ。
かつては私立大学が中心だったが、近年は国公立大学でも総合型選抜の募集枠が増えている。
総合型選抜は基本的に専願だが、出願条件も含めて大学により異なるので、必ず要項を確認しよう。
出願までの流れや時期、期間はさまざま
総合型選抜は原則9月1日以降に出願がスタートするが、出願に先立ちエントリーや面談を行うケースもある。大学と受験生がじっくりと時間をかけてマッチングするのが総合型選抜の特徴で、選考期間が1〜3か月間と長期間にわたることもある。
選考方法は書類選考、面接、小論文が基本
選考方法は、志望理由書・調査書などによる書類選考、面接、小論文が基本だが、学力試験や実技試験を課したり、小論文やレポート、口頭試問で知識・理解が問われたりするケースもある。また、国公立大学のなかには学力試験として共通テストを課すケースもある。
【STEP3】大学受験の各試験の日程と流れを知る
学校推薦型選抜・総合型選抜は出願・選考の時期が早いため、俗に「年内入試」と呼ばれることもある。一方、一般選抜は年明け(1月下旬〜)に選考が行われ、私立大学の中には3月下旬まで入試を行うところもある。
共通テスト以外のスケジュールは各大学によって異なるので、必ず募集要項を確認しておこう。
【2024年入試のスケジュール】
◆総合型選抜
出願受付・選考/2024年9月1日以降
※出願前にエントリーや面談が行われるケースもあり
合格発表/2024年11月1日以降
◆学校推薦型選抜
出願受付・選考/2024年11月1日以降
合格発表/2024年12月1日以降
◆大学入学共通テスト
受験案内送付/2024年9月上旬〜
出願期間/2024年9月末頃〜10月上旬頃
本試験/2024年1月13日・14日
追試験/2024年1月20日・21日
◆一般選抜(国公立大学)
出願期間/2024年1月22日〜31日
前期日程試験/2024年2月25日〜
中期日程試験/2024年3月8日〜
後期日程試験/2024年3月12日〜
◆一般選抜(私立大学)
出願期間/2024年1月上旬〜
試験/2024年1月下旬〜 ※3月下旬まで後期入試や2期募集あり。
大学受験のあれこれQ&A
※試験の対策はどのようにすればよいのか神﨑先生のアドバイスを見てみよう
大学受験の概要が押さえられたところで、気になるのが試験の対策法や入試の動向。大学受験にまつわるギモンについて、神﨑先生に答えていただいた。
Q.大学入試の各試験の対策方法は? どんな違いがある?
共通テストは設定も含めて問題が特徴的なので、過去問や予想問題で演習を重ねることがとても重要です。
また、どの科目でも問題文にボリュームがあり読解力が求められるので、細部まで読み解く「精読」とサッと読んで大枠を捉える「速読」の両方の力をトレーニングしておく必要があります。
各科目の知識をただインプットするだけでなく、大きな枠組み(フレーム)を捉えるような体系的な学習をしておくと、読解のスピードや理解度も高まるでしょう。(神﨑先生)
国公立大学の個別試験は記述式のところがほとんどですので、その対策が不可欠です。
問題文を読み解き、筋を追って理解するという頭の使い方自体は共通テストと似ていますが、さらに解答作成力を養成する必要があります。
限られた字数の中に必要な要素を盛り込む、本文に書かれている内容を要約するという力は、ただ書くだけでは身につきません。
自分が書いた解答は必ず模範解答と照合し、どこが足りていないのか、どうしたらより良くなるのかを探っていきましょう。
数学などは途中式も採点の対象になるので、答えが合っていたからOKと終わらせず、模範解答のプロセスを復習することが大切です。(神﨑先生)
私立大学の個別試験は大学・学部により個性があるので、まずは過去問を見て傾向を掴むことが不可欠です。
マーク式の場合は、「間違いの選択肢」に注目してみましょう。
さまざまな問題に取り組むなかで、要件が足りない、本文の言い換えが誤っている、正解っぽく見せているなど、どういう点で正しくないかという傾向が見えてくるはずです。
とはいえ、受験生が自分で傾向を掴むのは容易ではないので、塾・予備校の先生や学校の先生のアドバイスをぜひ参考にしてほしいと思います。(神﨑先生)
学校推薦型選抜の場合は、出願条件に評定平均が含まれるケースが多いので、学校の成績を上げることが何よりの対策になります。
特に上位校の学校推薦型選抜を目指す人は、出願条件で求められる評定平均+0.5〜0.7は取っておきたいところ。
上位校でなくても、高校1年次からコツコツと勉強して良い成績をキープすることが大事です。
面接では主に自己アピールと志望理由が問われるので、自己分析を行う、志望校についての理解を深めるなど、自分の言葉で語れるよう準備をしておきましょう。
また、特に公募制の場合は小論文や学科試験の対策もしっかりとしておく必要があります。(神﨑先生)
総合型選抜の場合は、高校1年生からの活動の積み重ねが重要になります。
特に、探究や課外活動など学科の学業以外の活動にいかに力を入れたか、いかに成果を挙げたかが見られます。
高校によっては、こうした活動がカリキュラムに組み込まれているケースもありますが、そうでない場合は自らアクティブに動くことが大事です。
英検など英語の外部試験・検定を受けておくことも大いにプラスになるでしょう。
高校3年生になって総合型選抜での受験を検討する場合は、これまでに何をしてきたのかを振り返り、自分のPRポイントを洗い出すことから始めましょう。
そうした活動の積み上げがない人は、総合型選抜よりも一般選抜の方が向いているので、受験方法を再検討することをおすすめします。
なお、面接では自己アピールと志望理由に加え、学力の有無を見るための口頭試問が行われるケースもあるので、対策として基礎学力の養成や大学で学びたい学問についてのインプットも必要です。(神﨑先生)
※続いて、最新の受験傾向について見ていこう
Q最近の大学入試の受験傾向は?
特に女子大や人文系の単科大学など小規模な大学では受験者が減少し、難易度が下がる傾向にあります。
逆にいうと、受験生にとっては、難易度が下がった今がチャンスとも捉えられるでしょう。
また、国公立大学で総合型選抜を実施するところが増える傾向にあります。
難関大学の総合型選抜は、かなりハイレベルなものになるでしょう。
さらに、高校(中高一貫校含む)と大学の高大連携にも注目が集まっています。
特に首都圏で顕著で、これにより学校推薦型選抜(指定校制)の枠が増える傾向があります。
この動きは今後、全国の大学・高校に広がっていくのではないかと思われます。(神﨑先生)
Q大学入試の各試験の検定料は?
〔大学入学共通テスト〕
3教科以上受験の場合:1万8000円(成績通知希望:1万8800円)
2教科以下受験の場合:1万2000円(成績通知希望:1万2800円)
〔国公立大学の個別試験(2次試験)〕
1日程あたり1万7000円程度
前期・後期日程に出願すると3万4000円程度になる
〔私立大学〕
3万円~3万5000円程度
※大学や入試方式によって異なる
※同じ大学の複数日程を受験する場合、2つめから減額されるケースあり。また、近年は入学検定料を無料化する大学も出てきている
〔私立大の大学入学共通テスト利用入試〕
1万5000円~2万円程度
※大学や入試方式によって異なる。
Q.大学入試センター試験と大学入学共通テストの違いは?
センター試験では、覚えた知識をアウトプットすれば解ける問題が少なくなく、出題形式にもパターンがありましたが、共通テストは知識を覚えるだけ、形式になれるだけでは太刀打ちできません。
文章や設問の内容を読み解き理解しながら筋を追って解答する問題が中心になり、問題文の分量も多く、読解力とスピードが求められます。
共通テストは「知識の活用力」が問われる試験だと言えるでしょう。(神﨑先生)
さらに、専願のみか併願可能なのか、評定平均や履修科目などの受験資格が課せられているのか、大学入試の種類や各大学の出願条件によっても制限があるため、注意が必要だ。
さまざまな入試形態を理解して、受験チャンスをのがさないようにしよう。
取材・文/笹原風花 監修/神﨑史彦 構成/寺崎彩乃
※2023年4月の取材時点の情報になります。
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