樹木を衰弱・枯死させる病害について、その病原や生態、診断、防除方法などを研究しています。近年、頻繁に発生する巨大台風では、山間部の森林でスギの枝折れや倒木の被害が続出しましたが、一つの原因として、あるきのこ(菌類)による病気が関係しているのではないかと考えています。それがチャアナタケモドキです。スギがこの菌に感染すると幹の外側から腐り、大きな溝が形成され、折れやすくなったりします。日本にはいま、戦後植林され収穫期を迎えたものの、使われなくなった木がたくさんあります。枝打ちなどの管理も満足に行われないところが多く、残った枝は折れたり枯れたりして、そこからきのこの菌が侵入。病気の温床にもなってしまいます。私は現在、病気になった木も資源として利用し、豊かな森林を維持管理していく方策を探っています。
学生には現場で実物をみて学んでもらいたいという太田先生。実習では、自分で採取したきのこやサンプルを観察、分離し、標本を作成させています。授業でも病害や腐朽材の実物サンプルを回覧し、触ってもらうこともあります。また卒業研究は、自分で一つの研究テーマを決めるところからスタートします。調査や実験は一人ではできない作業もあり、研究室の仲間との共同作業が多くなるとのこと。さらには樹木医さんや研究機関の研究者など、外部の人と一緒に仕事をする機会も設けるようにしているそうです。
研究の魅力は、小さなことでも、自分だけの「なにこれ!」に出会えることでしょう。答えは、目に見えない裏側にあることも。一筋縄ではいかない樹木と菌の関係を一緒に調べてみませんか。
東京大学農学部 林学科卒業、森林総合研究所森林微生物研究領域チーム長を経て、日本大学生物資源科学部教授。博士(農学)。