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裁判所事務官が働く場所は、全国各地の裁判所。最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所のいずれかで職務に当たります。それぞれの裁判所には「裁判部門(裁判部)」と「司法行政部門(事務局)」があり、そこからさらに細かな部署に枝分かれしています。部門・部署間の異動は数年ごとに行われることが多いようです。また、総合職も一般職も、採用管轄区域内での転勤の可能性があります。
裁判所事務官になって最初に所属する裁判所は、「裁判所職員採用試験」の合格後に提出する「勤務地希望」をもとに、希望する勤務地を管轄する高等裁判所の管轄区域内の裁判所の中から決定されます。例えば東京都を希望した場合でも、神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県・静岡県・山梨県・長野県・新潟県のいずれかに配属になる可能性があります。また、勤務地決定後、裁判部門(裁判部)と司法行政部門(事務局)のどちらかへの配属が決まります。
最高裁判所
日本国内の裁判事件に対する最終的な判断を下し、法令解釈の統一を図る権限をもつ、日本の司法機関における最高機関です。法令の憲法適合性について決定する終審裁判所と憲法で定められていることから、「憲法の番人」ともよばれています。また、最高裁判所には下級裁判所を統括する司法行政部門のTOPとしての役割もあり、裁判所での訴訟の手続きや司法事務処理に関することがらについて規則を制定します。これの権限をもつ「最高裁判所裁判官会議」を補佐するものとして「最高裁判所事務総局」があり、最高裁判所の庶務全般を担当しています。この事務総局内に置かれる秘書課・広報課・情報政策課・総務局・人事局・経理局・民事局・刑事局・行政局・家庭局などで、裁判所事務官が働いています。
高等裁判所、地方裁判所
高等裁判所は下級裁判所の最上位機関です。本庁は、東京都・大阪市・名古屋市・広島市・福岡市・仙台市・札幌市・高松市の全国8カ所にあります。一方、地方裁判所は特定の地域を所轄する裁判所で、通常司法事件の第一審裁判所として機能しています。全国に50カ所あり、その管轄区域は北海道が4つに分けられているほかは、各都府県の数と同じです。地方裁判所には支部が設けられており、その総数は203あります。
<地方裁判所、裁判部門の組織の一例>
・民事部
通常部、特殊部(破産や執行事件を処理する専門部など)、訟廷事務室(記録の管理や、民事部職員の管理事務など)から成り立つ、民事裁判を担当する部門です。140万円を超える金銭請求、土地・建物の問題などを裁判で解決するほか、お金を貸したけれど返してもらえないといったトラブル時に不動産・給料・預金などの債権の強制執行を行います。また、破産申立ても民事部で手続きが行われます。
・刑事部
民事部と同じく、通常部、特殊部(令状の事務を行う専門部など)、訟廷事務室(記録の管理や、刑事部職員の管理事務など)から成り立つ、刑事裁判を担当する部門です。裁判所の規模によって、1つまたは複数の刑事部が設置されています。逮捕状や勾留状などの発令、税金に関する事件も刑事部が扱います。
家庭裁判所
夫婦関係や親子関係の紛争などの家事事件についての調停や審判、非行を犯した少年の事件についての審判のほか、夫婦・親子などの関係をめぐる訴訟について扱う裁判所。法律的に白黒をつけるというよりも、紛争や非行の背後にある原因を探り、問題の円満解決に向けてそれぞれの事案に応じた適切な措置を講じることを主目的としています。そのため、家庭裁判所調査官という職種が置かれ、心理学・社会学・社会福祉学・教育学などの知識や技法を活用した事実の調査や人間関係の調整を行っているのが特徴です。家庭裁判所とその支部は、地方裁判所とその支部の所在地と同じ場所にあります。このほか、特に必要性の高いと判断された所に家庭裁判所出張所が設けられています。
<家庭裁判所、裁判部門の組織の一例>
・家事部
刑事部と訟廷事務室から成り立つ部門です。民法やその他の法律で定める家庭に関する事件を裁判で解決に導く部署で、離婚・扶養・遺産分割のような夫婦間の争い事や、未成年者の養子縁組の許可、後見人の選任、各種手続き案内などを行います。
・少年部
家事部と同じく、刑事部と訟廷事務室から成り立つ部門です。14歳以上20歳未満の少年の犯罪や刑罰法令に触れる行為など、いわゆる非行少年による少年事件を担当します。
簡易裁判所
全国438カ所にある、最も身近な裁判所です。訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件、罰金以下の刑に当たる罪および窃盗・横領などの比較的軽い罪の訴訟事件などについて、第一審の裁判権をもっています。簡易裁判所におけるすべての事件は1人の簡易裁判所判事によって審理・裁判されます。この簡易裁判所判事は、裁判所事務官からキャリアアップして就くことのできる職種の1つです。また、簡易裁判所内では身近な紛争を話し合いで解決する民事調停も行われており、調停で合意が成立し、その内容が調書に記載されると、調書の記載は裁判所が下した確定判決と同じ効力をもつことになります。裁判所事務官はこれらの簡易裁判および民事調停をサポートします。
司法書士事務所、法律事務所
裁判所事務官として10年間働くと「司法書士」の資格を得られることから、司法書士事務所で裁判所事務官が働くケースもあります。また、裁判所でキャリアを数年積んだのち、法律事務所に転職する裁判所事務官もいます。裁判の現場をよく知る法律のプロとして、その知識や事務能力は高く評価されるようです。
上位職への昇進や資格取得後の独立も
裁判所事務官としてキャリアをスタートした後、内部試験を突破して裁判所書記官や簡易裁判所判事にキャリアアップする人や、10年以上勤務して司法書士となり、独立する人もいます。裁判所は、配属先決定からその後の進路まで実力主義の世界とも言えます。自身の努力がダイレクトにキャリアや収入につながるという、公務員においては珍しい職種とも言えます。
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