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税務署勤務を経て税理士になる

税務署勤務を経て税理士になる

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税理士になる方法として一般的に知られているのは、国家試験である「税理士試験」に合格することです。税理士試験を受験するためには、大学・短大・高等専門学校などで法律や経済を学んだ実績、一定レベルの簿記資格、税理士事務所や会計事務所で3年以上働いた実務経験のいずれかが必要になります。しかし、その条件を満たしていない場合でも税理士になる方法があることは、あまり知られていないかもしれません。
その一つが、税務署職員として一定期間働いて税理士試験科目の免除を受け、税理士資格を得る方法です。それはどんな制度なのか、また、税務署職員のなり方や仕事内容は税理士とどう違うのか。一緒に確認していきましょう。

税務署職員は、勤続年数に応じて税理士試験の科目が免除に

本来、税理士試験をパスするためには、必修となる会計学2科目(簿記論および財務諸表論)と税法3科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税の中から選択)の計5科目に合格しなければなりません。  
ただし、税務署に一定期間勤務した場合は、「国税従事者の免除制度」によって税理士試験科目が一部免除されます。この制度では、税務署に10~15年間勤務すると税法の試験が免除され、23年以上勤務して指定研修を修了すれば、会計学を含む全科目が免除されると定められています。
 税理士試験は難易度が高いことで知られ、大学や専門学校に在学中はもちろん、働きながら何年間にもわたってチャレンジし続けるのが当たり前の世界です。また、全科目に同時合格することは至難の業で、1科目ずつコツコツ合格をめざす人も少なくありません。
それを踏まえると、税務署職員として働きながら税理士をめざすことも、現実的なキャリアプランの一つとして選択肢に加えることができるでしょう。

税務署職員の仕事内容

職業名に「税」がつくのは税理士も税務署職員も同じですが、その役割には大きく違いがあります。税理士は個人や企業の税務を代行すること、つまり税を国に収める作業をサポートする立場ですが、税務署職員は税金を課す立場にあります。
そのため、税務署職員の仕事内容は「適正な課税を維持するための調査・検査」「定められた納期限までに納付されない税金の督促や滞納整理」などがメインになります。税理士は顧客から報酬をもらって仕事をするサービス業ですが、税務署職員は全国の税務署に所属する国家公務員という位置づけです。

税務署職員になるには?

税務署職員になるためには、人事院が実施する「税務署職員採用試験」に合格しなくてはなりません。また、受験資格が与えられるのは、高校または中学校の卒業見込者か、高校または中学校を卒業後3年未満の人に限られます。
 試験は第1次試験(公務員として必要な基礎能力や適性をはかる多肢選択式の筆記試験と作文試験)と第2次試験(人柄や対人的能力を見る個別面接と身体検査)があり、さらに採用面接が実施されます。
2016年度の採用試験では、全国の申込者数8317人中、第1次試験合格者数は2668人(32.0%)、最終合格者数は1523人(18.3%)という結果でした。合格率は約2割と低く、入念な試験対策が必要になるという点においては、税理士試験とかわりはありません。

税務署職員は研修体制が充実

税務署職員として採用されるとすぐ、「税務大学校」で新人研修を受けることになります。全員が寮に入り、1年間にわたって「税法科目」「実務講義および実地研修」「簿記会計学」「民法、商法・会計法および経済学などの法律・経済科目」などを学びます。
これらには、税理士試験科目である所得税法・法人税法・相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・簿記会計学も含まれており、研修を受けるまで税法や簿記に触れたことがないという人でも基礎から学べるプログラムとなっています。
高校卒業と同時に受験をする人が多いため、このような研修制度が整えられているわけですが、普通科出身で簿記などになじみがない人にとっては大いに助かるシステムだと言えるでしょう。
また、実務経験を経てからも税務大学校でより高度な専門知識を身につけるチャンスがあるなど、税務署職員には仕事を続けながら税務について常に学び続けられる環境が用意されています。このように、何年にもわたる実務と研修を通して税務の知識と対応スキルを磨いていけることが、税理士試験の科目免除という仕組みにつながっているのです。

 税務署勤務を経て税理士をめざすというのは遠回りに思えるかもしれませんが、「金銭的な理由で高校卒業後なるべく早く就職したい、でも税理士の夢も諦められない」といった人にもチャンスが開ける方法です。
また、税金を課す側の仕組みを知ることによって、いずれ税理士としてサポートをする際に「課す側」「課される側」両方の視点をもって顧客と接することができるという利点もあります。
全科目免除を待たずとも、税法の科目が免除になった時点で税理士試験を受験するなど税務署職員から税理士に転身するルートにはバリエーションがありますので、さまざまな選択肢をイメージしながら自身のキャリアパスについて考えてみてください。

取材協力・監修

髙橋昌也※2020年9月8日更新

税理士。東京地方税理士会川崎北支部所属。2007年に税理士登録。「小さなおしごとの支援」を掲げ、小規模事業者に特化して業務を展開。各種事業計画の策定や金融機関との交渉など、経営に関する幅広い分野について支援を実施。2013年には経営革新等支援機関の認定取得。税理士業務で学んだ知識や経験を生かし、文化・芸術活動の支援にも携わる。

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