高校1年生の冬頃、宮沢賢治の童話集『注文の多い料理店』に出合い、その魅力に取りつかれました。その後、宮沢賢治のすべての童話作品を読みつくすものの、賢治の詩の方は全く理解できず、大学で本格的に勉強するしかないと心を定めました。大学1年からは国語研究会に所属。「宮沢賢治ゼミ」を立ち上げ、毎週読書会を開催していました。2年の時には終生の師となる萩原昌好先生と出会い、先生の勧めにより卒業論文の一部を宮沢賢治関連の雑誌に投稿、掲載されました。その後も公立学校の教師をしながら、研究者として論文を発表。童話と詩は同じだということに気がついたのは、宮沢賢治を研究し始めてから20年ほど経った時でした。すでに40年が経ちましたが、いまだ研究の道のりは果てしなく続いており、実に面白いですね。
宮沢賢治作品における宗教や化学・地学などの科学について分析、研究しています
1年生を対象とした『日本近代文学演習I』では、宮沢賢治作品を取り上げます。「自分の気に入った作品を一つ選び、原稿用紙5枚分(2000字)の感想文を課題として発表してもらいます。誰でも1200字程度は書けるのですが、2000字となると論旨がぶれてきたり、同じ内容の繰り返しになったりし始めます。その矛盾や安易さを、本人が納得できるよう指摘すると、ぐっと文章を書く能力が高まっていきます」と、鈴木教授。ゼミでは卒業研究を指導。2年がかりで取り組む卒業論文を通じて、学生の成長をじっくりと見守っています。
童話「楢ノ木大学士の野宿」には恐竜が登場。授業では実際の化石などを見せ、地学的な側面からも解説する
「研究」という視点は、大学の授業を受ける過程で獲得することができます。この学科には、絵巻物や浮世絵、芥川龍之介の自筆原稿など、みなさんに見てほしい多くの貴重資料を所蔵しています。ぜひ見に来てください!
専門:日本近代文学
埼玉大学教育学部卒業後、早稲田大学大学院教育学研究科修了。博士(学術)。高知工業高専助教授、高知大学人文学部教授を経て、現在は文教大学文学部日本語日本文学科教授を務める。
著書:『宮沢賢治 幻想空間の構造』(第6回宮沢賢治賞奨励賞)、『宮沢賢治という現象-読みと受容への試論-』(第47回高知県出版文化賞受賞)、『宮沢賢治文学における地学的想像力-〈心象〉と〈現実〉の谷をわたる-』他
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