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法務省管轄の国家資格・土地家屋調査士として活躍する人にとって、将来的安定して仕事を続けていけるのか。そして、どれくらいの年収を稼げるのかも気になるところでしょう。ここでは、どんな仕事が今後見込まれているかについてと、年収の実例をご紹介します。
公共的な色合いの仕事の増加が見込まれている
法務局には、私たちが普段目にする一般的な「地図」とは異なる、土地の位置や形状を確定するための法的な地図=「公図」があります。この「公図」に示された境界は専門用語で「筆界(ひっかい)」(その土地の範囲を区画するものとして定められた公的な線)」と呼ばれ、「筆界」は、土地の所有者間で勝手に決められない線(土地の境界)を表します。
筆界は都市部と地方で大きな差があり、土地における家の数が都市部に比べて少なく、田畑などが多い地方では「一筆(いっぴつ)の土地」(筆界で囲まれた一つの土地)が大きいことから「法的に定められた地図=「公図」を作成しやすいメリットがあります。
しかし、人口が密集する都市部では、財産的な考え方の違いによって「筆界」が定まっていないケースが多く「一筆の土地」を厳密に確定した公図作成に、大変な手間と労力がかかります。
そうした点から、現在も都市部の公図整備はなかなか進んでいない状態にあります。そして、いまだに公図が整備されていないデメリットによって「筆界」をめぐる紛争も多発しています。こうした背景を受けて公図整備の必要性が高まっており、地籍調査(土地の調査)を管轄する国土交通省、裁判所の境界鑑定委員、公図を管轄する法務局の筆界調査委員など、行政主導による公共的な色合い仕事が、今後増えると見込まれています。
独立開業後、1000万円以上稼いでいる土地家屋調査士も
どこかの調査士事務所に補助者(アシスタント)として登録したうえで働きながらスキルを身につけ、土地家屋調査士の資格を取得した後、晴れて個人営業事業主になる人など、土地家屋調査士にいたるプロセスはさまざまな選択肢がありますが、将来的に独立を考えている人はCAD(設計・製図の支援システム)や関数電卓の操作だけでなく、自らの力でクライアント(依頼主)を開拓・獲得していく準備を、早い段階からしておく必要があります。
独立後の成功を左右する秘訣はさまざまですが、不動産業界の人とのおつきあいが多いため、良好な関係性を作っておくこともその一つと言えるでしょう。多彩な趣味をもつことでたくさんの引き出しを作り、豊富な話題を用意しておくといいかもしれません。人脈作りや地盤作りは短時間でできることではありませんので、長い年月の中でさまざまな人との信頼関係を築くことが、土地家屋調査士として仕事の裾野を広げ、収入を増やしていく基礎になることを理解しておきましょう。
気になる年収ですが、事務所や会社に所属している土地家屋調査士の平均年収は400万円~1000万円と言われています。さらに数は少ないものの、大規模マンションなど数千軒の物件が入るマンション開発を手がける大手デベロッパ(開発業者)などをクライアント(依頼主)にもつ土地家屋調査士は、その物件すべての登記手続きをおこなうことから、年収が数千万にのぼる場合もあります。
力石洋平
主に都内の土地家屋調査士事務所にて勤務しながら資格学校に通い調査士試験に合格。 土地家屋調査士登録後、さまざまな土地、建物の測量、登記業務に関わる。資格指導校で講師として、また法務局の筆界調査委員としても活躍している。