世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局の医療システム・サービス課で、薬剤耐性班のデータエンジニアをしています。私の仕事は、WHOの西太平洋地域の国々で、抗微生物薬(抗生物質など)がどのぐらい使われているのかを調査するためのシステム開発です。抗微生物薬を無計画に使うと耐性菌が生まれ、使える薬がどんどん減ってしまいます。このまま何もしなければ、2050年には世界中で1000万人が薬剤耐性菌で亡くなると言われています。多くの命を奪う耐性菌が生まれるのを少しでも遅らせるため、西太平洋地域の国々が共通した基準でデータを収集・集計し、効果的な政策を実現するための基盤を作ることが使命です。
将来に役立つ資格を取得しようと思い、薬学部へ進学しました。愛知学院大学は行学一体・報恩感謝 の精神のもと、やりたいことを挑戦させてくれる風土があったと思います。在学当時、薬学部長の 佐々木琢磨教授の分子生物学の講義を受けて生命の面白さに夢中になりました。深く学びたいと相談 したところ、研究室配属前の3年次に研究室に受け入れていただくことに。実験を通し、疑問を客観的にデータ化し、身につけた知識に照らして考えることを早い時期から経験できました。更に、社会保障制度や薬事法規の講義を通して、知識がその後どう社会に役立つのかを考える機会にも恵まれました。自由に学べたからこそ、やりたいことを見つけられました。
研究を続けようと大学院へ進み、実験室ではなく実際のヒトで起こることを調べるべく調査と統計解析による研究を始め、統計が好きかつ得意なことに気づきました。また大学院生の2015年頃、SDGsの前身のMDGs(ミレニアム開発目標)の取組期間が終わり、SDGsに関する講演がたくさん開かれていました。途上国だけではなく、先進国も含め地球規模で協力して社会を作っていこうというSDGsの考え方に共感し、世界のために自分にできることは何かと考えだしました。SDGs実現のための各国間の調整を行う国際機関で働きたいと考え、まずは自国政府で経験を積み、その経験をもとに国際機関に応募しました。今は夢の実現に向けて一歩を踏み出したところです。
世界保健機関西太平洋地域事務局(フィリピン)所属/薬学部 医療薬学科 卒/2013年3月卒/大学卒業後、名古屋大学大学院へ進学。在学中に総務省に入省し総合職事務官に。2016年、大学院修了(博士号取得)。総務省・厚生労働省の統計担当、新型コロナウイルス対策本部事務局の国際担当等を経て、世界保健機関西太平洋地域事務局のコンサルタントに。新型コロナウイルス対策チームのデータ班長を経て、現職。外務省のJPO派遣制度(※)を通して2022年6月から国際連合事務局本部のデータサイエンティストとして勤務予定。大学院時代から国際機関で働くことを目標にして、その時々で進路を選択してきた。※若手日本人を国際機関に職員として派遣する制度。