國學院大學の経済学部では、
アクティブ・ラーニング型の授業が充実しています。
なかでも受講生がチームで社会課題に取り組み
プレゼン大会への出場をめざす 1 年次の「基礎演習」では、
「学生ファシリテーター&アドバイザー(FA)」と呼ばれる 2年生が
授業をリードし、重要な役割を担います。
学生 FA の活動をきっかけに大きな成長を遂げた
4 年生の熊谷実咲さんに話を伺いました。
経済学部 経営学科 ビジネスリーダーコース 4年
東京都 私立國學院高等学校 卒業
熊谷 実咲
熊谷さん: 入学した 2020 年はちょうどパンデミックの最初の年で、 1 年次の「基礎演習」では一度も対面授業がなく、すべてオンライン授業になりました。初めて経験するオンライン授業に私たちも戸惑うことが多くありましたが、こんな時だからこそ学生同士、教授とのつながりをつくろうと、学生 FA の先輩がさまざまな場面で尽力してくれたのです。そしてたった一学年違うだけなのに大勢を前に堂々と、理路整然と話す学生 FA の先輩の姿にあこがれを抱くようになりました。学生 FA を経験することで、自分も同じように成長できるかもしれない。そんな期待から、私もめざしました。
熊谷さん: 中高生の頃に学級委員や部長、副部長を経験してきましたが、リーダーシップをあらためて理論として学ぶと数々の発見がありました。まず、現在主流となっている「シェアード・リーダーシップ」を知ったのは大きかったです。これは一人の人間がチームを先導する「カリスマ型リーダーシップ」ではなく、組織やチームのメンバーが個々の個性や強みを活かして、皆でゴールをめざすリーダーシップのこと。最初はリーダー=カリスマという先入観を持っていたのですが、「シェアード・リーダーシップ」であれば、私も自分の得意分野でリーダーシップを発揮できるのではないかと思えるようになりました。ほかにも、人の話に耳を傾けての理解を深める「聴く力」や「論理的思考法」などについて、実際の場面を想定したロールプレイングも交えて学びました。例えば、「聴く力」を学んだ際は「会話を無視する/無視される」という場面を体験しました。相手に話を聴いてもらえない側の役を体験した人は全員がストレスを感じていて……(笑)。聴くことの大切さを、身をもって知ることができました。
熊谷さん: それが最初は緊張と失敗の連続でした。私自身は 1 年次に「基礎演習」を完全オンラインで受講してきましたが、私が学生 FA になったタイミングで「基礎演習」が対面授業に切り替わったのです。すると教壇に立った授業初日、受講生 24 名から一斉に注がれる視線の圧が想像以上で……(苦笑)。入念に準備した内容の半分も話すことができませんでした。落ち込んだものの、一人で悩んでいてはいつまで経っても解決にならないと気づきました。そこでクラス担任の教授や学生 FA の仲間から率直なアドバイスをもらい、改善すべき部分、のびしろがある部分を客観的な視点で見つめ直した上で実践へとつなげ、徐々に自分のスタイルをつかめるようになりました。
熊谷さん: 私と一緒に組んだクラス担任の教授は、受講生への説明をはじめとする授業運営の多くを私に任せてくれたので、責任感と共に大きなやりがいがありました。クラス内のチーム分けも私が担当しました。積極的にコミュニケーションをとれる学生、控えめな学生など、受講生一人ひとりの特性を把握した上で、どのようなチーム構成にすればグループワークが上手く回るかを考えながら振り分けました。さらに授業中は教室を歩き回りながら、各チームの受講生のグループワークが円滑に進むようサポートしていきました。
熊谷さん: 私は率先して自分の意見を言えるタイプではありません。しかし、人の話をよく聴いて、その人が本当に話したいことを引き出すスキル、「聴く力」は高い方だと自負していました。そこで聴く力を活かしながら、自分の意見をさりげなく発信する、そんなリーダーシップを目標にしました。また、受講生へのアドバイスでは「正解」ではなく、次に進むためのヒントになる「考え方の切り口」を与えるよう努めました。こうした結果、担当クラスから、プレゼン大会本選への出場を果たしたチームが出たのです。私は 1 年次の「基礎演習」で、本選以前にクラス予選も勝ち抜くことができなかったので、後輩たちの快挙に思わず目が潤みました。自分のこと以上に、嬉しかったですね。
熊谷さん: 「経済学会 学生委員会」は、経済学部の研究教育活動や就職活動を支援するイベントなどを企画・運営する学生団体です。在学生に向けには、 2 年生がゼミ選びで参考とする「ゼミ個別ブース説明会」の運営などを行っています。昨年の「ゼミ個別ブース説明会」では、私が所属するゼミのブースに行列ができていて、列を覗くと私が学生 FA として担当した「基礎演習」の受講生たちがずらり。なんと私を追って、同じゼミで学びたいと並んでくれていて(笑)。また、私の姿をみて学生 FA をめざした受講生もいました。「基礎演習」で担当した受講生たちとは今でもつながりがあり、授業後に食事にいくこともあります。学年を超えてつながりを育めるのは、学生 FA の楽しさの一つかもしれませんね。
熊谷さん: 一致団結して授業運営に取り組んできた学生 FA の仲間たちは、かけがえのない存在です。そして 1 年次の「基礎演習」のクラス担任の教授、「リーダーシップ基礎」の担当教授、 2 年次で一緒に「基礎演習」を運営したクラス担任の教授、ゼミの教授など、たくさんの教授陣にとてもお世話になっています。実は入学するまで、大学の教授は遠い存在で、大多数とは一言も言葉を交わすことなく 4 年間が終わるのだろうと思っていました。それがこれほどまで教授と距離が近い、“教授あってこそ”の大学生活になるとは、嬉しい誤算でした。入学当初はコロナ禍で、人との関係性は築きにくいと思っていましたが、現在のような受講生、学生 FA 仲間、教授とのつながりは、すべて学生 FA への挑戦から始まったと感じています。
熊谷さん: 良い意味でイメージが変わりました。最初は大学の学びというと、講義を一方的に聴く受け身のイメージがありました。それが、座学で学んだ専門知識をグループワークや学生 FA 活動を通じて実践するという学びのなかで、論理的に物事を考えて伝える力やチームをまとめて育てる力など、主体的に実践したからこそ身に付く力が数多くあると実感しています。就職活動でも、大学で培ったコミュニケーション力を企業の方から高く評価されることが多くありました。卒業論文では、「企業における人材育成とリーダーシップ」をテーマに執筆する予定です。まずは、 4 年間の活動の集大成となる内容に仕上げることが目標です。