じゃらんリサーチセンターの
オリエンテーション
今回協働されている
「観光地域づくり法人(DMO)」
とは何ですか?
観光地域づくりの司令塔・調整役となる法人です。
森さん
通常ある地域が観光地として発展したい場合は、明確なコンセプトに基づいた戦略に加え、ホテルや飲食店などの民間企業と、地域政策を担う行政との連携が不可欠です。けれども、コンセプトや戦略を立てるのには知識や経験が必要ですし、様々な立場からの要望を取りまとめて連携を図るのは、実はとても難しいこと。そこで、地域の中で調整役を担いながら、戦略を確実に実行に移すための機関として設けられたのが「観光地域づくり法人(通称:DMO)」です。2015年に観光庁が登録制度をスタートし、現在は全国に350件近いDMO法人があります。その中でも、旅行商品の企画・販売など実際にサービスも提供する企業のことをDMCといいます。
現地に行ってDMOと
ディスカッション
八ヶ岳・諏訪湖エリア観光事業の
プラットフォームを
目指して。
矢崎さん
今日は國學院大學の学生さんが見学にいらしているということで、改めて「8Peaks family」が発足した背景をご説明したいと思います。この諏訪圏と呼ばれる八ヶ岳・諏訪湖エリアも、多分に漏れず人口減少という課題に直面しています。さらに観光客も減少しており、このままでは地域経済が縮小の一途を辿るという危機感がありました。この状況を打破するためには、やはり観光業、特にインバウンドに力を入れる必要があると考えました。なぜなら外国人旅行者の消費額は国内旅行者に比べても非常に大きく、地域に与える経済効果が絶大だからです。そこで、地域の観光事業に携わる私たちが個々の強みを持ち寄り、チームとして連携することで大きなアクションを起こせるのではないかと、「8Peaks family」が誕生しました。
矢島さん
私は白樺湖にあるホテルを経営していますが、他にも伝統芸能である御諏訪太鼓の伝承者や、農産物直売所オーナー、広告代理店の代表など、この地域で様々な事業に携わる者が集まり、それぞれの得意分野を活かして活動しています。「30年後、50年後も活気溢れる魅力的なまちであり続けることを実現する」をミッションに掲げ、毎月こうして「未来のまちづくり会議」を開催しているんです。
沢登さん
民間主導でここまで中長期的なビジョンが明確になっているのは素晴らしいですね。
石峯さん
なぜ民間主導でやろうと思われたのでしょうか?行政との関わりはありますか?
矢崎さん
やはりインキュベーション(※1)を大事にしたいので、組織として行政と組むことはあえてやっていません。ただ、メンバーの中には行政と関わりが深い人もいますから、個人の役割の中で必要があれば行政とも連携するというスタンスを取っています。
矢島さん
これまで経済産業省や観光庁の事業に参加して旅行商品をつくったこともあります。あとは外部の専門家とタッグを組んで東京で地域産品のポップアップストアを開催したり、情報発信のために地域雑誌「KOS」を創刊したりと様々な活動を行ってきました。その中で感じる現在の大きな課題は、我々のような組織をはじめ、DMOや観光協会など観光事業に携わる団体が乱立してしまっていること。各団体がそれぞれに情報発信や旅行商品の販売を行っているので、品質もバラバラだし、お客様にとってはどれを見て、どこに行って、何をしたらいいかが非常にわかりづらくなっていると思います。
矢崎さん
そんな状況で、我々の観光事業部門である「8Peaks resort」というプラットフォームの整備を進め、認知度がもっと高まれば、「8Peaks resort」が旅行者と各事業者をつなぐ役割を担えるのではないかと考えています。乱立する情報や旅行商品を集約し、一定の品質をクリアした上で販売・発信できる仕組みが完成すればかなり変わるのではないでしょうか。
草刈さん
情報発信や旅行商品の開発などマーケティング的な機能に加えて、旅行会社としてセールス機能も備えていくということでしょうか?
森さん
その通りです。そのためには、海外の旅行会社に向けたアピールが必須になってきます。ファムトリップ(※2)の強化も必要ですね。さらにその前段階として、旅行商品のネタをどんどん増やすことが何より重要です。どんな体験がどういった層に刺さるか、数多くのシミュレーションを重ねる中からキラーコンテンツも生まれると思うんです。
矢島さん
既存の商品を組み合わせたり、まだまだいろんなことができそうですね。
沢登さん
インバウンドに限らず、視点を変えればある層にとっては非常に価値が高いと感じられるコンテンツが、八ヶ岳・諏訪湖エリアにはまだたくさんある気がします。
こうしたまちづくりの取り組みって、ワクワクする部分と面倒で大変な部分があると思うんですが、必ずワクワクの方が勝っていないと続かないと感じています。その点はいかがですか?
矢崎さん
むしろワクワクしかないくらいです(笑)。話し合いの回を重ねる度にモチベーションが上がっています。
森さん
対象エリアがこれだけ広域で、かつこれほど具体的なビジョンを描けているDMCはたぶん日本でも初めてではないでしょうか。これからも構想を形にできるよう、一緒に頑張りましょう。
※1 インキュベーション/起業や事業創出など新しいビジネスの成長をサポートすること。
※2 ファムトリップ/観光地の誘致促進のため、ターゲットとする国の旅行事業者やメディア、インフルエンサーなどに現地を視察してもらうツアーのこと。
今回は、国内有数の旅行・観光メディアとして知られる
「じゃらん」の地域創生部門「じゃらんリサーチセンター」の活動に、國學院生が同行。
長野県茅野市の観光地域づくり法人「8Peaks family」を訪ね、
八ヶ岳・諏訪湖エリアの課題解決に向けた話し合いに参加しました。
観光まちづくり学部
観光まちづくり学科3年生
草刈 智也さん
観光まちづくり学部
観光まちづくり学科3年生
石峯 あやかさん
「じゃらん」は旅行・観光にまつわる幅広い事業を展開しており、「地域の魅力開発」「地域の需要創出」「需要に応える仕組み創出」という3つのミッションを掲げています。「じゃらんnet」は、主に「需要に応える仕組み」のひとつです。その前段階となる、「地域の魅力を開発し、需要をつくる」役割を担うのが、私たち「じゃらんリサーチセンター」。日本各地の「もっと魅力的に変わりたい」と考えている地域の力になるため、長年培ってきた知見や情報を提供しながら、共に課題に向き合い、地域の価値向上に貢献しています。
長野県中央部に位置し、豊かな自然と歴史・文化が息づく地域として近年は移住先としても人気の八ヶ岳・諏訪湖エリア。「8Peaks family」は、このエリアで主に観光業に従事する若手経営者の方々が中心となって活動している観光まちづくり会社です。観光・体験・宿泊など「コト」のプラットフォームを開発してエリアの観光活性化を目指す「8Peaks resort」と、野菜や加工品などの地産品=「モノ」のプラットフォームを開拓してエリアのブランド価値向上を目指す「8Peaks market」の2部門に分かれ、課題解決とエリアの発展に取り組んでいます。