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僧侶のキャリアステップにはどのようなものがあるのでしょうか。一般的な企業でいう部長や課長などの役職に対し、僧侶には『僧階』と呼ばれる階級制度があります。取材に協力してくれた僧侶の宗派である天台宗を例に、僧階とキャリアについて見てみましょう。
僧階が上がると袈裟の色も変わる
天台宗の場合の僧階を上位から順に列記すると、次の通り13種になります。
・大僧正(だいそうじょう)
・権大僧正(ごんだいそうじょう)
・僧正(そうじょう)
・権僧正(ごんそうじょう)
・大僧都(だいそうず)
・権大僧都(ごんだいそうず)
・僧都(そうず)
・少僧都(しょうそうず)
・権少僧都(ごんしょうそうず)
・大律師(だいりっし)
・中律師(ちゅうりっし)
・律師(りっし)
・権律師(ごんりっし)
階級が上がるには、僧侶になってからの年数や功績(お寺の復興に貢献したとか、布教活動をしたなどの大きな活動)が関係します。一般の企業であれば役職が上がると給与も増えますが、僧侶の場合は僧階が上がっても手当がつくわけではなく、収入には一切関係がありません。
僧階が上がることで変わるのは、袈裟の色です。木蘭(もくらん)や萌黄玉虫色(もえぎたまむしいろ)、藍色の松襲(まつがさね)、紫の紫衣(しえ)など、袈裟の色が変わっていき、肩から下げる五条や袴の色もそれぞれの僧階によって異なります。
ちなみに、一番下の小僧(一休さんでおなじみ)は権律師(ごんりっし)にあたり、黒素絹(黒い袈裟)に白五条(白色の五条)をまといます
また、僧階は年齢とも関係がありません。たとえ年齢が上でも僧階が下の場合は下座になります。つまり、僧侶の世界は年功序列ではなく僧階順なので、僧侶がたくさん集まる法要などでは、袈裟の色を見れば自分がどこに座ればよいのかがわかる、ということになります。
キャリアアップよりも大切なこと
誰もが大きなお寺の大僧正になれるわけではありません。歴史に名を残した人は、お話を聞いた僧侶と同じ『僧都』という僧階の人たちでした。昔は60歳になると長寿のお祝いをしたほど平均寿命は短かったので、僧階が上までいかないうちに亡くなっていたからです。もし、大僧正になるとすると、幼いころから修業に励んで功徳を重ねたうえに、当時の最高齢ぐらいまで長生きをした人だけになってしまいます。
ある僧侶の所属するお寺、いわゆる町寺では住職と副住職の2名体制なので、キャリアステップは副住職から住職になるワンステップしかありません。町の青年会の会長や布教をする団体の会長などになったとしても、名誉職というだけで、僧階が上がることはありませんし、年収も変わらないのです。
それでも、檀家さんのお話をじっくり聞くことや、比叡山で子どもたちを集めてサマーキャンプの引率をすることなどは、人の役に立ちますし、自分も成長していけるフィールドがあるので、とても大切だとある僧侶は感じています。自由度が高いお寺において、業務にしばりつけにならないことで、逆に、お寺や仏教にとってプラスになるものを生み出せると考えるそうです。
クリスマスには自分の趣味であるDJやイベント主催者としてのスキルを通じて、キリスト教と一緒に祈りを捧げる活動を行うなど、宗教を超えて一般的なキャリアアップとは一線を画す活動ができることに意義を感じています。
取材協力先 友光 雅臣