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薬学ではこんな研究をしています

薬剤師は患者さんとどのようにコミュニケーションをとればいいのか、その体系化のための研究をしています。病気や薬に関する患者さんの不安は、ただ薬の説明をするだけでは取り除けません。では、どうすれば心に寄添えるのか、安心してもらえるのかといったことを、心理学の手法も用いて探っています(帝京平成大学 薬学部 井手口直子教授)。

※このコンテンツは2017年~2018年の取材に基づき構成しています

薬剤師は患者さんとどのようにコミュニケーションをとればいいのか

薬剤師の役割が広がり、コミュニケーション能力が重要に

薬学には、大きな2本の柱があります。ひとつが新薬の開発や調剤、薬効などに関する分野。そしてもうひとつが、臨床・医療薬学と言われる分野です。私は後者の分野で特に患者さんとのコミュニケーションについての研究をしています。例えば、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を高めるために、薬剤師がどう関わっていくか、どう関わっていけるのかということをテーマに研究しています。
2006年以前は、薬学部はすべて4年制でしたが、その後の法改正によって、薬剤師の資格を取るためには6年間学ばなければならないと定められました。この6年間のカリキュラムを作るにあたって、全ての「薬学」の見直しがされたのですが、6年制の薬剤師が目指すのは「より高い臨床能力の発揮」です。その中には患者さんや多職種とのコミュニケーションについて身につける必要性も盛り込まれました。
かつて昔、薬はほとんどの病院内で患者さんに渡されており、薬剤師が薬の飲み方などについて説明することもあまりない時代がありました。患者さんと関わる役割は、医師や看護師が担っていたのです。しかし、時代の流れとともに薬の専門家としての薬剤師の役割が見直されていきます。病院では、院内薬局だけでなく病棟に常駐するようになり、病院外の薬局もどんどん増えていったことで、直接患者さんと関わる機会が多くなりました。それによって、薬剤師は単に薬を調剤するだけでなく、患者さんの健康にもっと深く関わることができるようになったのです。
関われるようになったといっても、すぐに上手にコミュニケーションがとれる人ばかりとは限りません。ですから薬剤師と患者さんの関わり方について研究し、考え方や手法を確立していくことが必要になるのです。そのために、心理学などの手法も用いて、薬剤師からの働きかけ方や患者さんの感じ方について体系化しようと研究をしています。

患者さんの心と健康に寄り添ったケアを

たとえば、持病があって長い間服薬されている患者さんがいるとします。ある日その患者さんから、2種類あるうちの片方の薬を、「効果が感じられないからという理由でもう長い間飲んでない」と言われたとしたら、どう対処すればいいのか? あるいは、「怒られちゃうから先生には言わないで」と言われたらどうでしょう。
なんの教育も受けていないと戸惑ってしまうに違いありません。そのまま黙っておく、患者さんに薬の効果を説明して飲むように説得する、こっそり医師に告げる、医師に話すよう伝えるなど、いろいろな選択肢が出てくるのではないかと思います。しかし、これらのやり方では患者さんの問題は解決できません。
患者さんが薬剤師に話をしてくれたということは、何かそれなりの理由があるはずです。実は飲んでいないことに罪悪感や不安をおぼえていて本当に大丈夫なのか知りたいのかもしれません。効果が感じられる薬に変えてほしいと感じているのかもしれません。薬の数や回数が多くて負担になっているのかもしれません。こうした思いは、薬剤師が患者さんに寄り添い、きちんと話を聞いてあげなければ理解することができません。
こうした、患者さんの視点から薬剤師の行動を考えるという考え方をファーマシューティカルコミュニケーションと呼びます。ファーマシューティカル(pharmaceutical)は、薬剤の、薬剤師のといった意味で、ファーマシューティカルコミュニケーションの考え方は薬剤師の実務を考える上で、欠かせないものとなっているのです。
さらに、薬剤師と患者さんの双方向コミュニケーションにITを活用するなど、最新技術を使った手法も模索。時代に合わせて考え方や手法も変わっていく、終わりのない研究です。

取材協力:帝京平成大学 薬学部 井手口直子教授

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