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不動産鑑定士の仕事は将来どのようになっていくと考えられるでしょうか。現在、さまざまなことに利用されているAIが不動産価格を鑑定することは可能なのでしょうか。不動産鑑定士の20年後、そして30年後はどうなっているのかについて、AIの観点を踏まえて記述します。
AIが不動産価格を鑑定すれば不動産鑑定士は不要?
毎年1月1日時点での地価について、国土交通省が3月ごろに広く公示する『地価公示』があります。発表されると新聞やテレビで話題になるので、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
現在、この地価公示を決めるにあたっては、不動産を取得した人に対して国がいくらで買ったかのアンケートを行い、さらに、不動産鑑定士が取引事例カードを作成し、これをもとに個別に鑑定評価を行い、土地鑑定委員会が審査して最終的な価格を公示しています。
もし、不動産の情報を収集したビッグデータがあり、自動的に不動産価格を集計するAIがあれば、不動産鑑定士の仕事は楽になるかもしれません。でも、一筋縄では鑑定できないのが不動産です。土地の形状や利用方法など個別の要因を加味しなければならないからです。
AIで価格の上限下限がわかるようであれば、それを利用して不動産評価をすることはできます。AIと共存していくことは可能です。AIを利用して、より不動産のコンサルティング力が重要になっていくと思われます。
AIが不動産透明度を上げることが可能?
欧米などでは不動産を登記する際に売買金額が記載されるため、登記を見るだけでこれまでの取引履歴がわかるようになっています。これがわかることで、欧米の人々は今後も経済価値が上がると思い、不動産取引は年々高く推移しているようです。全体の総量が上がれば価値も上がり景気も回復するという考えです。一方、不動産の取引価格が上がれば、景気も良くなっていくというわけですが、日本では安く買いたい、高く売りたいという概念が根付いています。しかも、登記には取引価格が載らず、一部のローン金額がわかるだけという状況です。
ジョーンズ ラング ラサールという会社が『グローバル不動産透明度インデックス』を2年おきに発表しています。いわゆる、世界の不動産透明度ランキングのようなものですが、2016年は世界109カ国のうち19位と、日本は5つ星のうち4つ星しかついたことがありません。その理由は登記に売買価格が載らないからだと言われています。
不動産の売買は自由であり、第三者に告知する義務はありません。さらに、個人情報保護法などの観点からも登記情報が変更される可能性は低いと思われますが、もし、情報収集のやり方を見直して何らかのシステムを利用し、売買事例を集計すれば不動産ビッグデータができるはずです。そこにAIを導入した場合、かなり精度の高い売買取引ができるはずであり、日本の不動産の透明度を上げることは可能なのではないかと考えられます。
取材協力先 田代 務