骨や石や木などのさまざまな遺物から想像力を働かせる
考古学の魅力を語る阿部芳郎教授
新しい発見から定説が覆されることもある
考古学は、日本では文学部にある学問ですが、科学の進歩とともに化学や数学といった理系分野との学際研究が著しく進んでいます。その結果、さまざまな新しい発見があり、定説が覆されるというのも珍しくありません。
例えば、縄文時代の社会というのは、これまで貧富の差がない平等な社会と言われていました。原始的な社会とはそういうもので、その後、身分の差が生まれていったというのが考古学的な定説でした。ところが、縄文時代は平等な社会ではなく、すでに身分の差があったということが、アクセサリーや食べ物の研究からわかっているのです。縄文時代は、みんなが同じ食べ物を分け合って食べていたと考えられていたのですが、実はグループによって、食べているものが極端に異なり、何らかの社会的な役割の中でそういう生活をしていたという可能性が出てきました。
そうした新しい発見がたくさんあることが、考古学の大きな魅力です。縄文時代というのは、文献が残されていない時代ですから、記録を頼りにすることはできません。土の中から出てきた遺物を分析し、そこから想像力を働かせていく、それが考古学の醍醐味です。
発掘された耳飾り
塩はどのようにして作られたのか?
今取り組んでいる研究テーマのひとつは 、「塩はいつから、どのように作られたのか」というものです。岩塩の産出しない日本は古来海水から塩を作っていたと考えられています。しかし、具体的な塩作りの方法やその起源についてはまだ解明されていません。このことを解明するためには遺跡に堆積した土の中から微細な情報を探し出すことが必要です。これまでの研究で製塩は海草を焼いた灰を用いて海水を煮詰めたことがわかってきました。さらに遺跡の炭から年代を測定すると、その起源は従来の説を1000年以上も古く遡ることもわかりました。次なる課題は「塩は何のため使われたのか」というものです。私たちの食卓にもある塩とは一体どのような歴史をたどったのでしょうか。難しい課題ですが研究は続きます。
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