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環境工学とはどんな学問?研究内容や学び方などを解説

環境工学

環境問題の原因究明と解決を目指す

地球温暖化や酸性雨、熱帯林の減少などの地球環境問題や、大気汚染など環境汚染の原因を究明し、地球と地球上の生命を守りながら人間社会の発展を実現するための研究を行う。

環境工学の学び方

講義

機械、建築、土木といった工学分野全般のほか、研究テーマに応じて、物理学、化学、生物学などの知識を習得する。

実験

環境改善、保全に役立つ技術開発に向けて、物理学、化学、生物学などの手法を用いたさまざまな実験を行う。

環境工学 学びのフィールド

環境問題改善に向けた研究をするにあたっての基礎となる<基礎研究分野>と個別の環境問題に取り組む<専門研究分野>がある。

<専門研究分野>

●環境保全・修復
湿地や干潟、里山の保全や再生、汚染された海や河川の浄化などを行う。土木工学、生物学、農学、林産・水産学などが関係する。

●エネルギー・資源
省エネルギー・省資源技術や、石油エネルギーに代わる新エネルギーの研究開発を行う。ハイブリッドカーや省エネルギーの家電製品、太陽光発電や燃料電池、ゴミ焼却時の熱エネルギーの再利用システムの開発などがこの分野。機械工学、応用物理学、応用化学、生物学、生命科学、農学、エネルギー・資源工学、原子力工学などが関係する。

●リサイクル
リサイクルしやすい材料の開発や、リサイクルしやすい商品設計などを行う。機械工学、応用化学、材料工学などが関係する。

●グリーンケミストリー
環境にやさしい化学製品や化学反応について研究する。土に埋めると分解するプラスチックの開発などがある。

●都市・生活環境
ヒートアイランド、交通渋滞など、都市特有の環境問題や、無駄のない水資源利用のための上下水道システムなどについて研究する。機械工学、土木工学、都市工学、応用物理学、応用化学、生物学、生命科学などが関係する。

●水質・大気・土壌汚染
汚染物質を排出しない工場や自動車について研究したり、汚染物質の浄化システムを開発したりする。機械工学、応用物理学、応用化学、生物学、生命科学などが関係する。

<基礎分野>

●自然科学系
生物学、化学、物理学などの自然科学の立場から、環境問題解決に役立つ手法を学び、研究する。

●工学系
機械工学や、エネルギー・資源工学、土木工学などの工学の立場から、環境問題解決に役立つ手法を研究する。

環境工学とは

環境工学とはどんな学問?

科学が進歩したひずみとして発生した様々な環境問題。それを解決するための具体的・現実的な技術や方法をつくり出すのが環境工学です。扱う分野は多岐にわたり、細分化すればキリがないほどになります。多くの大学では、扱う分野を一部分に絞っていますから、受験前に自分が興味を持っているテーマが何なのか、あらかじめ考えておくことをおすすめします。

・環境問題を実際に解決する技術や方法を生み出す環境工学

人間の生活は科学技術の進歩により、便利で豊かなものになりました。その一方で様々な環境破壊が引き起こされ、人間の健康や生命、あるいは生態系が脅かされる事態になっています。
明治以降、近代化が進む中で公害事件が度々起き、イタイイタイ病や水俣病といった公害病も大変な社会問題になりました。現在でも放射能汚染などの事故や事件は起きていますし、地球温暖化やごみ処理問題、エネルギー問題、PM2.5など、国レベル、地球レベルの環境問題も深刻になっています。
これらはいずれも人間が、環境への影響を顧みずに利便性や生産性を追い求めた結果として現れたものともいえます。こうした科学技術のひずみともいうべき環境問題を、科学技術の力で解決し、持続可能な社会をつくろうとするのが環境工学です。
「環境」という言葉がつく学問はたくさんありますが、環境工学は「工学」ですから、現実に環境問題を解決できる、あるいは軽減できる技術や方法を考えることが重要になります。「PM2.5が危ない」ということをいうのは簡単ですが、「では、日本ではどんな対策が取れるのか」、「対策を採ったらどれくらい減らせるのか」というところまで踏み込んで考えるところに、環境工学の特徴があります。

・環境工学は様々な研究対象・手法を内包している

環境工学の研究対象は、水、大気、気候変動、土壌、放射線、廃棄物、騒音、生態系、環境リスク、エネルギーなど多岐にわたります。分子単位で化学物質を分析する場合もあれば、都市レベル、地球レベルのシミュレーションを行うこともあり、研究の手法も様々です。物理・化学・生物といった自然科学も、社会学や心理学、政治学といった社会科学的な視点も必要となります。このように様々な研究対象、手法、知識が複合した分野といえます。
さらにそこから、水なら上水道・下水道・水圏・アジア水環境、大気なら黄砂・地球温暖化・大気汚染が健康に与える影響など個々のテーマに細分化されていきます。
あまりにも多岐にわたるため、多くの大学では「○○環境工学」という形で、この中の一部の分野だけを扱っています。入学後にいろいろな分野を学びながら専門性を絞っていくことができる大学は少ないため、受験時にある程度、絞り込んでおかなければなりません。
環境問題の中でも、水質汚染なのか大気汚染なのか、それとも放射線なのかなど、興味のあるテーマを探しておき、それに合致した学部・学科を選ぶようにしましょう。

環境工学と他の学問との関わり

水、大気、廃棄物、放射性物質、地球環境、リスクと、様々な分野を内包している環境工学は、それぞれに隣接分野が存在するため、非常に多くの分野と関わりあっています。隣接分野の知見や手法を取り込みながら、環境問題の解決方法をいろいろな切り口から探っていきます。

・土木工学をはじめ、多くの学問と隣接関係にある

水、大気、廃棄物、放射性物質、地球環境、リスクと、様々な分野を内包する環境工学は、それぞれに隣接分野が存在するため、非常に多くの分野と関わりあっています。その中でも重なる領域が多いのが、土木工学です。
土木工学というのは、平たくいえば都市のインフラを整備する学問ですから、道路や橋、上下水道の整備などは古典的には土木工学に分類されます。しかし、例えば上下水道であれば、安心安全な水を供給し、汚染水を川や海に垂れ流さないようにするという水環境工学的な側面が強調されるようになり、その結果、環境工学の一分野として扱われるようになりました。
道路や橋は土木工学に、建築は建築学に属しますが、「環境に優しい」「災害に強い」「省エネ」「持続可能」といった側面を重視したまちづくりの学問である「都市環境工学」とも一部が重なっています。
また、土木工学を支える地理学や水理学、理学、気象学といった理論系の学問とも密接な関係にあります。
このように環境工学は、既存の工学分野に「環境」という側面が付加された分野として位置づけられることが多く、これらもすべて類似の学問といっていいでしょう。
また、ごみはそのまま廃棄すれば「廃棄物」ですが、リサイクルできれば「資源」となります。この「資源」と「エネルギー」も密接な関わりがありますから、廃棄物-資源-エネルギーは一緒に学ぶと価値ある見識が得られます。
さらに大気などに含まれる汚染物質が、人間の健康にどのくらい影響するかを研究する、健康影響という分野は、医学や薬学との関わりが深く、環境工学の専門家の中には、医学や薬学の出身者も少なくありません。
それだけ環境問題には様々な種類があることになるため、その解決には、隣接分野の知見が多用されるわけです。大学を選ぶときは、所属している先生の元々の専攻分野や研究内容も見てみるとヒントが見つかるかもしれません。

環境工学の何をどのように学ぶ?

どの大学でも同じですが、1・2年では基礎を修得します。扱っている分野が広い大学では、なるべく多くの分野に触れ、幅広い専攻に対応できるようにしています。3年で専門科目を学んだあと、4年では研究室に所属して自分の研究を進めていくことになりますが、研究は大学院まで含めた期間で考えるのが一般的です。

・1・2年は基礎。外へ飛び出すアクティブな演習も

環境工学の幅広い分野を扱っている大学では、まず水、大気、廃棄物、放射性物質など一通りの分野について基礎的な内容を学びます。座学に加えて演習や実験も多く、知識と技術の両方を修得していくイメージです。水の分析なら近くの川や池に水を採取しに行くこともありますし、騒音の測定をするために街へ出かけていくこともあります。そうして体で環境を感じながら、研究を進めるアクティブな面も環境工学の特徴の一つといえるでしょう。研究室にこもってひたすら試験管や機械とにらめっこするようなイメージを持っている人には意外に映るに違いありません。
これに加えて、物理や化学、生物、情報処理など、この先研究に進んだときに必要になる一般教養も身につけるのが1・2年次のミッションです。3年次では環境工学全般の専門科目を学び、4年次から自分の専門分野を決めて、研究室に所属し、自分のテーマを掘り下げていくことになります。
とはいえ、環境工学の諸分野を網羅的に扱っているのはごく一部の大学でしかなく、「土木系だけ」、「エネルギー・資源循環だけ」など、どれか特定の専門分野に特化しているケースがほとんどです。その場合は、数学や物理、化学など教養科目に重点を置く大学と、専門科目の導入科目を設置する大学とがあります。明確にテーマが決まっていない人は、どんなテーマでも扱えるように、なるべく広く修得しておくといいでしょう。
どちらのパターンの大学でも、3年次から専門分野を深めていくのは同じです。授業も専門性の高いものになり、実験・演習科目も増えてきます。さらに研究室にも所属し、研究の手法を学びながら卒業研究のテーマを模索する段階にも突入します。そして、4年次に本格的に研究を始めて卒業研究にまとめます。しかし、就職活動のことも考えると、研究に打ち込める正味の期間は1年もないくらいです。そのため、大学院に進学して、もう2年間、研究に打ち込むのが典型的なルートになっています。

環境工学に向いている人

理数系の科目、特に化学や生物ができるに越したことはありません。しかし、本当に必要なのは社会に広く関心を持ち、何かのテーマに問題意識を持ち、それを解決したいという情熱を持っていることです。環境問題を何とかしたい、あるいは技術で解決したいと思っている人には向いている学問です。

・理数系科目を知っていれば有利に

数学、物理、化学、生物といった理数科目が得意なことに越したことはありません。特に環境工学では、水や大気に含まれる成分の分析に化学が、微生物の働きや人体への健康影響を考えるのに生物が重要になります。受験科目に関係なく勉強しておくと、後々役立ちます。
とはいえ、難解な数式が出てくるわけではないので、数学が得意でなくてもそれほど差し支えはありませんし、実際は「高校時代、生物は取っていませんでした」という学生も少なくありません。
仮に高校時代に勉強していない科目があっても、興味のあるテーマについて研究を進める中で必要になれば、自然と勉強するようになるものです。目的意識がはっきりしていれば、理解度も高まりますからそれほど身構える必要はありません。

・社会に対する関心と、「何とかしたい」という情熱を

むしろ、それ以上に重要なのは、社会に対して問題意識を持っていることです。「世界で安心安全な水を利用できなくて困っている人を助けたい」、「地球温暖化を何とか食い止めたい」、そんな目の前の現実を変えたいという情熱です。
もし、新しい技術をつくることが目的なら、数学や物理といった自然科学の知識があれば十分かもしれません。しかし、環境工学は現実に発生している環境問題を解決するための技術や方法を生み出すのが目的ですから、社会のことを知らなければスタート地点に立てません。社会を知り、問題意識を持って、それを解決したいという強い思いが、不可欠の学問ともといえます。
環境工学は理系の学問に分類されますが、社会科学的な視点も多分に求められるため、「理数科目が得意だから」という動機では長持ちしません。広く社会に対して関心を持ち、何か一つでも自分の中に問題意識を持っている人が向いているといえるでしょう。その情熱があれば、多少数学や理科が苦手でも、勉強していくうちに克服できるものです。

環境学を学んだ後の進路と今後の広がり

環境問題は政策レベルで取り組まないと成果が出にくいため、環境工学の専門家が活躍できるのは、まずは環境省や厚労省、自治体といった公務員です。民間企業では、環境に直接関わるメーカーでなくても、環境に配慮した製品作りは社会全体に求められていることなので、幅広く活躍できる学問といえます。

・大きな視点で環境問題に取り組む公務員は重要な就職先

多くの理系学科の例にもれず、8~9割ほどは修士課程に進みます。これは社会が修士レベルを求めているからというのもありますが、学部だけだと本格的に研究に臨める期間が短く、不完全燃焼なことが多いからというのもあります。本格的に専門分野を生かして就職することを考えるなら、学部4年+修士2年の計6年で計画をしておくといいでしょう。
専門分野を生かした就職先としては、まずは、環境省や厚労省、国交省といった省庁、あるいは各自治体の環境関係の専門職員があります。環境問題は都市単位、国単位といった大きな枠組みで取り組まないと成果が出にくいため、公務員のように政策を通して関わっていくのは重要です。また、民間企業でも、コンサルタントやシンクタンクといわれる会社に入って、様々な立案・提案を行っていく道もあります。

・多くのメーカーで環境に配慮できる人材が求められる

ものづくりに関わるところでは、環境装置のメーカーがあります。例えば水処理でいえば、浄水場や下水処理場で利用する施設や設備を設計したり新たに開発したりします。同様に、廃棄物処理や資源リサイクルの分野でも、効率的に処理するための施設や設備が必要です。それらがあってはじめて、先に述べた、実際に環境問題を解決したり軽減したりすることができるのです。
そこまで特化したメーカーでなくても、最近は自動車や家電といった一般的な製品でも環境配慮の視点が求められているので、そこで活躍する人もいます。
あとはそれぞれの専門分野によって、例えばエネルギー問題を専攻した者なら電気・ガス・石油といったエネルギー産業、都市環境工学なら土木、建築、まちづくりや都市開発業などにも就職します。
意外なところでは商社希望です。商社は発展途上国など海外にルートを持っていることが多いため、海外の環境問題に携わりたい人が志望するようです。それにとどまらず各企業とも環境問題への対策には、これからも力を入れていくことが求められるので様々なフィールドで活躍していくことが期待できます。(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 修士1年 鈴木拓弥さん)

環境工学の先生に聞く(取材協力:京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻 伊藤禎彦教授)

環境工学ではこんな研究をしています

日本では蛇口をひねれば飲み水が出てくるのが当たり前ですが、世界的視野で見ると衛生的な水を利用できない人が約8億人もいます。誰もが安全に水を使える環境を整えるには、浄水技術の発展が不可欠です。そこで安全に水を作れる方法や、安全基準の策定に関する研究を行っています。(京都大学大学院 工学研究科都市環境工学専攻 伊藤禎彦教授)

・安全な水を利用できない8億人を救う上水道設備

日本では蛇口をひねれば当たり前のようにきれいで衛生的な水が出てきます。そのまま飲むことができますし、炊事・洗濯・掃除・手洗い・入浴など生活のあらゆる場面で安心して利用できます。
しかし、これだけの水を確保するにはそれ相応の整備が必要です。近年は自然災害が増え、断水を経験したりニュースで見たりする機会も増えましたから、上水道を整備することがどれだけ重要なことかも実感できることでしょう。
さらに世界に目を向けると、水道設備がなく、衛生的な水を利用できない人がアジア・アフリカ地域を中心に約8億人もいます。その人たちは安全な飲み水を確保することができず、また衛生的なトイレを利用できない場合もあって、毎日5000~6000人の乳幼児たちが命を落としているという実態があるのです。
これは国際的な課題にもなっていて、国連が2030年までに解決すべき国際問題として掲げたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも、「安全な水とトイレを世界中に」という項目が並んでいます。
私たちが当たり前だと思っている水環境は、上水道や下水道、浄水施設といった水道設備に関する高度な科学技術に支えられているのです。私の研究では、そんな水環境の整備に関するもののうち、上水道に関わるテーマを扱っています。

・微生物リスクと発がんリスクのバランスを考えた浄水技術

水道水の元になっているのは川や湖などの自然界の水ですが、そこには細菌などの微生物がたくさん含まれており、無処理のままにそれを飲むことはできません。ゴミを取ったり、ろ過したり、塩素消毒をしたりして、安全な水をつくり出しているのです。
ところが、微生物を死滅させればそれで安全かというと、そう単純な話ではありません。たしかに塩素によって微生物は死ぬので、そのリスクは減少しますが、水には微生物以外にも雑多な成分が含まれており、中には塩素に入れることで変化を起こす成分も含まれているのです。その一例がトリハロメタンという発がん物質です。これは自然界の水には存在しない物質です。つまり、塩素消毒には微生物リスクを下げる一方で、発がんという別のリスクを生み出すという二面性があるのです。
もっとも発がん物質といっても、摂取すれば直ちにがんが発症するわけではなく、少量であればまず影響はありません。では、人体に影響がない程度のトリハロメタンの量はどれくらいで、微生物の量はどれくらいなのでしょうか。それを調べ、微生物リスクを下げつつ、発がんリスクの少ない安全基準を策定し、ちょうどいい塩素の注入量をコントロールする必要があります。そこに向けた研究を行っています。
環境問題のリスクは、あるところを下げると、別のところでリスクが発生するというケースがよくあります。すべてのリスクをゼロにするのは現実的ではありません。いかにうまくバランスを取ることかが重要なのです。
そのためにいろいろなところから水を採取してきて成分を調べたり、大阪の浄水場の一角に実験プラントを造って水質の検査をしたりして、安全評価の基準策定やより安全な水を効率的に作る方法を探っています。

環境工学のここが面白い

社会の役に立つ技術であることを実感しやすいというのが環境工学の一番の魅力です。研究して論文を書いて終わりではなく、実際の施策などの形で社会との結びつきをひしひしと感じながらの研究になります。現在の研究の原点は琵琶湖です。学生時代に琵琶湖やそこに流入する川にざぶざぶ入って水を汲んでは水質調査を行った毎日は、文字通り、現実に即した学問そのもので、これも環境工学の魅了といえるでしょう。(京都大学大学院 工学研究科都市環境工学専攻 伊藤禎彦教授)

・研究と社会との結びつきがはっきり見える

環境工学は、環境問題を解決するための技術や方法を作る学問ですから、「実際に解決する」ということが重要になってきます。逆にいえば、環境工学の研究は必ず社会を良くすることに寄与できるということです。
水分野であれば「おいしい水が飲めるようになった」、廃棄物分野であれば「資源リサイクルが進んだ」と、社会とのつながりがはっきり見えるのは環境工学の魅力でしょう。
また、原発問題でも環境工学の専門家は大活躍しています。社会的にはロボットやAIといった華々しい分野が注目されがちで、それに比べればたしかに地味かもしれませんが、社会的ニーズが必ずあり確実に社会の役に立てる学問なのです。
研究して論文を書いたら終わりという分野ではなく、自分の研究成果が何らかの施策に生かされたり、どこかの水道局でシステムが採用されたりするのを実際に見聞きすれば、きっとやりがいを感じられるはずです。私も上水道の研究をしてきて、安全基準の策定など国の施策に携わっています。
もちろん、どれだけ社会の役に立つ研究をしていても、世の中の人がすぐに話を聞いてくれるわけではないので、こちらの提言をさっと聞き流されてしまうことも少なくありません。ただし、そのときはがっかりしても、2~3年してから私の案が採用されることも度々です。施策に関わることなので何年か時間が空くこともありますが、確実に達成感を味わえると思います。

研究と社会との結びつきがはっきり見える
上水道について様々な視点で研究する伊藤禎彦教授

・体を使って環境問題を考える研究に惹かれて

私が大学に入ったころは、「環境工学」ではなく「衛生工学」といっていました。まだ公害問題が騒がれていて、川の水が汚かった時代でしたから、科学技術が進歩したひずみとして発生した様々な問題に対する社会的な関心は高く、私も高校生なりに問題意識を持っていました。漠然とではありますが、科学技術を使ってこうした問題を解決するにはどうすればいいのかと考え、環境工学(衛生工学)を選びました。
現在、私は上水道に関わる研究をしていますが、その原点になったのが学生のときに参加した琵琶湖の調査です。琵琶湖は京都・大阪・神戸といった「近畿エリアの水がめ」という役割がありますから、その視点で様々な調査を行う研究室でした。
研究室の説明会で、琵琶湖にボートで漕ぎ出していって、水を採取したり、湖底の泥を取ったり、琵琶湖に通じている河川にもジャブジャブ入っていって水を取ってくるという研究方法を聞いて、非常に魅力的に感じました。環境問題を考える上で、実際に「体験する」ということがとても重要なのです。そうした魅力は今でも感じています。

体を使って環境問題を考える研究に惹かれて
大型の分析機器を使ってデータを取る

環境工学の学生に聞く(取材協力:京都大学大学院工学研究科 都市環境工学専攻 学生)

環境工学を選んだ理由

東日本大震災の福島原発の事故をきっかけに、環境問題に興味を持った奥田さん。化学分析という手法を学ぶために、化学分析に強い研究室の門をたたき、上水道の研究を始めました。一方、鈴木さんは得意な化学を生かせる分野として環境工学にたどり着き、エネルギー問題に関わる研究を始めます。

・目に見えないものを可視化できる化学分析に惹かれて

私が高校生のとき、東日本大震災が発生。その後、福島原発の事故を通して放射能の危険性が騒がれ始めました。私も東北出身なのでそのことを身近に感じていて、放射能問題をきっかけに環境問題に関心を持つようになり、大学では環境について学びたいと思い、環境工学コースのある学科を志望しました。
大学に入って一通りの環境問題を学ぶ中で、放射能にまとわりつく漠然とした恐怖心は、目に見えないことに起因するのではと考えるようになり、水や大気などの中に含まれる化学物質の種類や量を機械で測定し、分析する「化学分析」を使った研究の道を選びました。身の回りの空気にどれだけの放射能が含まれているかを数値化して、「これくらいなら安全」、「これ以上は危ない」と、目に見える形で示すことができれば、放射能に対する恐怖心を和らげられるのではないかときたいしています。
最も化学分析に強いと思われる研究室に希望通り所属でき、浄水処理過程で発生する有害物質を、コストをかけずに減らす方法について研究しています。(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 修士1年 奥田恵理香さん)

・化学を生かせて、エネルギーについて学べる分野へ

高校時代、化学が得意だったので、化学を生かせる学科に進学しようと考えていましたが、結果的に第2志望の地球工学科での学びを選びました。
この学科には様々なコースがあり、授業をいくつか聞いた印象からエネルギー問題が学べる環境工学のコースを選びました。
環境コースの研究室には大気、水、廃棄物の3つの分野があります。エネルギー問題を学びたかった私は、廃棄物か水のどちらを選択すべきか、大いに悩まされましたが、研究室の雰囲気なども見つつ、下水の研究をしている研究室に決めました。(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 修士1年 鈴木拓弥さん)

こんなふうに環境工学を学んでいます

環境工学の諸分野を一通り勉強した上で、どの分野を専門に深めていくのかを決めていきます。ここで「大気」を専門にすると決めても、大気が人に与える影響に着目して生物的に考える人もいれば、大気中の化学物質に着目して化学的に考える人もいます。いろいろな切り口で学べるのが環境工学の面白いところです。

・選択肢が多く、いろいろなやり方が選べる学問

私の大学では、まず水、大気、廃棄物、放射性物質といった環境工学の全分野について基礎的な内容を一通り学びます。そのあと、自分の興味がある分野を専門分野として絞り込んでいくことになります。すべての分野が学べる大学は多くないかもしれませんが、環境工学は大学に入ったあとの選択肢が広い学問だという点は共通だと思います。
例えば、4分野のうち大気が専門だとしても、人体への影響に着目して生物的に考えることもできますし、大気中に浮いている化学物質に着目して化学的に考えることもできます。また、水環境の研究には上水道と下水道があり、さらに上水道を研究する人の中にも、私のように水を化学分析する人もいれば、水道管をどう張り巡らせたらいいかをシミュレーションする人もいて、本当に研究の選択肢は様々です。
化学系の学科に行ったら「化学を使って何ができるか」を考えることになると思いますが、環境工学は「この問題を解決するためにどんな手段が取れるか」という見方をするので、手段の選択肢が多いんです。それが私には合っていましたね。(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 修士1年 奥田恵理香さん)

・水がきれいになって電気も取り出せる微生物燃料電池

印象に残っているのは実験系の授業です。騒音の調査をしたり、琵琶湖の水の中にいる微生物を数えたり、大腸菌を繁殖させてその数を数えたり、環境工学にまつわる実験を分野別に一通り経験する機会がありました。生物的なものがあったり、化学的なものがあったり、環境工学にはいろいろな面があるんだというのを文字通り体感しました。
研究室に所属してからのテーマは「微生物燃料電池」です。微生物の中には水中の有機物を取り除く、つまり水をきれいにする働きを持ったものがいて、現在の浄水場でも使われています。
微生物燃料電池は、微生物が水をきれいにする際に電気を発生させて、それを利用しようという試みです。この電気自体は非常に微弱なものなので、実用化できるレベルではありませんが、実は2次的な効果が期待されています。
現在の微生物を使った処理は、微生物に酸素を供給しないといけないため、常にポンプを使って水中に酸素を送り続けなければなりません。この電気代がバカになりませんが、微生物燃料電池に使われる微生物は、酸素が必要ないのでポンプを動かす必要がありません。よってかなりの省エネ効果が期待されていますから、私が当初から興味を持っていたエネルギー問題にも貢献できる研究だと思います。(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 修士1年 鈴木拓弥さん)

水がきれいになって電気も取り出せる微生物燃料電池
様々な試料を分析

環境工学を学んでみた感想

就職活動を通して社会の一端を覗いたことで、研究者と現場の両方の視点で考えられるようになった奥田さん。大学院の研究を通して、視野が広がったと言います語りますんは今後、社会のあらゆる場面にまで活躍のフィールドを広げるであろう環境工学の重要性に気づいたと語ります。

・就職活動を経験したことで視野が広がった

当初、研究は学部の4年間で切り上げ、就職しようといくつかの企業を回っていたのですが、就職活動の中で視野の狭さや経験不足を感じるようになり、途中から進学に切り替えました。急な方向転換ではありますが、就職活動を通して浄水場などの環境問題に取り組む現場の一端を覗けたことが、今の研究にとってとてもプラスになっていると感じています。
大学院では、ほかの研究室の人とも話すことが増えたので視野が広がりますし、就職活動中に水道局で働く人の考え方を聞いていたので、研究者の視点で「この研究はこうやったら生かせるんじゃないか」と考えたり、現場視点で「この問題を解決するにはどんな研究が必要なんだろうか」と考えたり、二つの視点に立ち、考えられるようにもなりました。
今は日本のインフラの老朽化問題に興味があり、浄水場の古くなった設備の更新事業に携わりたいと思っています。先生に学会に連れて行ってもらったとき、企業や自治体の方と話す中で、この人たちが抱えている問題を解決するのに、私が学んできたことが生かせるのではないかと期待しています。(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 修士1年 奥田恵理香さん)

就職活動を経験したことで視野が広がった
日本の浄水施設の更新に携わりたいと語る奥田恵理香さん

・今後ますます高まる環境工学の重要性を実感

環境問題自体は私が生まれる前から言われてきたことですが、東日本大震災以降は、その意識は一層強まったと感じています。それだけに環境工学は、今後ますます重要になっていくでしょう。
大学に入る前は、環境工学を学んで直接専門性を生かせるのは環境省や自治体、環境系のメーカーやコンサルなど一部の業種くらいだと思っていました。しかし、今やメーカーなら環境に関わらない企業であっても排出基準などの環境基準を守らなければいけないわけで、どんな企業も環境問題と無関係ではありません。つまり、あらゆる企業で環境工学の専門家が活躍できるチャンスがあるということに気がつきました。
卒業後は、せっかく学んだ水環境についての知見を生かせる分野を志望しています。今注目しているのは、やはりアジアやアフリカといった安全な水を安定的に使うことができない地域への水環境の整備です。生きるのに必要な水がなくて困っている人がたくさんいるので、その人たちを救うことに貢献したいと思っています。

今後ますます高まる環境工学の重要性を実感
海外の水道整備に携わりたいと述べる鈴木拓弥さん

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