プラスチック材料の加工技術を食品加工に応用
思いどおりのプラスチック材料を実現するために
数ある材料の中でも、私が専門に扱っているのがプラスチックをはじめとした高分子材料です。そして、主とする研究テーマは、レオロジーの制御についてです。
レオロジーとは、高分子材料の流動や変性を扱う学問のことをいいます。プラスチックなどの高分子材料を成形するときには、まず材料を溶かし、次に型に流し込み、最後に冷やし固めるという手順を踏みます。ですから、高温で溶かしたときの材料の性質(粘りなど)が製品の質に大きく影響するのです。思いどおりの加工を実現し、質の高い製品を作るためには、レオロジーをどのように制御すればよいか、それを研究しています。
もう一つの大きなテーマが、プラスチックコンポジットと呼ばれるものです。これは、プラスチックに別の材料を混ぜることで、元の材料の特性を強化したり、あるいは別の特性を付与したりすることを指します。例えば、硬さはあるけれど衝撃には弱いプラスチックに、衝撃に強いプラスチックを混ぜることで、硬く、衝撃に強い材料になります。これと同じように、必要に応じた性質をもつ材料を自在に作り出せるようになれば、ものづくりは大きく発展するというのがこの研究の醍醐味です。
高分子材料の研究に取り組んでいる西岡昭博教授
高分子材料の成形技術を食品に応用
材料工学は、新たな材料とその周辺技術の開発を目指す学問ですが、物質を分子や原子のレベルで理解し、加工する技術は他の分野にも応用することができます。そして、私たちが実際に研究を進めているのが、食品加工への応用です。まさに異分野技術の融合です。
2000年初頭から米粉を用いたグルテンフリー食品の開発を進めています。米粉パンは今では家庭の炊飯器などでも作られるくらい一般的になりましたが、ほとんどの米粉パンは、きれいに膨らませるためにグルテンを添加していました。せっかくお米を原料にしていても、これではグルテンアレルギーの人は食べられません。しかし、米粉100%で作ろうとすると、今度はうまく膨らまず、ぺしゃんこになってしまうのです。
この問題を解決するために活用したのが、プラスチック成形の技術でした。パンの断面にはいくつもの気泡がありますが、これは発泡スチロールのような成型品と同じ構造です。発泡スチロールなどを作るときには、高い粘度のプラスチックと、低い粘度のプラスチックを混ぜ合わせ、発泡に適した粘度にします。それと同じように、お米を普通に粉砕しただけの「結晶性米粉」と、加熱しながら粉砕することで炊いたご飯のような性質をもたせた「非結晶性米粉」を混ぜ合わせてみることにしたのです。結晶性米粉は水を加えても粘りが出ませんが、非結晶性米粉は強い粘りが出ます。このねらいは的中で、うまく混ぜ合わせることによって、米粉100%のパンを作ることに成功しました。
現在は、パンに限らず、さまざまな食品について、新たな可能性を見出いだすことができないかと研究しています。高分子材料と食品という一見して無関係に見える2つの『材料』が、私の研究の柱となっているというわけです。
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