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応用化学ではこんな研究をしています

わたしたちが薬を飲んだとき、薬が効く時間や体のどこで効き目を発揮させるかを調整しているのが、薬を覆っているカプセルなどのコーティングです。私の研究室で作っているのは、薬をコーティングするゲル、シート、粒子の3つの形態の高分子材料です。それぞれに課題はありますが、実用化できれば、薬がより使いやすく、効果的なものになるはずです。(東京農工大学 工学部 有機材料化学科 村上義彦教授)

※このコンテンツは2018年の取材に基づき構成しています

薬を覆うコーティング材を研究

薬をコーティングする新しい3つの素材開発

かぜ薬やサプリメントでもなじみ深いカプセル剤。薬をカプセルでコーティングすることで、薬を胃で吸収させずに腸まで届けたり、効き目が持続する時間をコントロールしたりできます。
コーティングする素材は、昔はでんぷん質のオブラートぐらいしかありませんでしたが、現在はさまざまな進歩によって、薬の飲み方がより効果的で、自由度の高いものになりました。また、薬は口から飲むだけではなく、コーティングしてから体内に直接注入することによっても取り込むことができます。私の研究室では、高分子を使うことによって、薬をコーティングする素材として、ゲル、シート、粒子の3つの形態の材料を開発しています。
一つめのゲルというのは、身近な言葉で言うとゼリーです。ゲルでコーティングすれば薬を体内に注入しやすくなるのですが、ゲルから薬を放出するタイミングを制御するのが難しく、薬の効き目や効果時間が一定にならないという難点があります。
これを克服するには、ゲルの中に薬の放出を一定にする仕組みをうまく組み込む必要があり、これが現在取り組んでいる研究課題となっています。また、体内に注入したゲルをうまく固定化できるように、体の組織に接着するゲルの開発にも取り組んでいます。

「応用化学の魅力は夢があるところ」と村上義彦教授

薬の使い方を変えるシートと粒子

二つめのシートというのはラップのような薄い膜です。ラップと同じく、薄い膜は物にピタッと貼りつく性質があるので、ここに薬を入れられれば、人体に貼りつけて薬をゆっくり放出する治療用のシートが作れます。
これが実現できれば、いろいろなところで活躍します。例えば胃がんの手術でお腹を切ったとき、体内に貼り付けておけば、お腹を閉じた後にシートから一定間隔で薬が放出され、手術後にも治療が進められます。すると、手術後の治癒効率を高めることができるはずです。。
ところが、シートに均一に薬を入れるのは難しく、そのような方法は開発されていませんでした。そこで私の研究室では、薬の分子が入る程度の小さい空間が内部に均一にたくさん存在するシートの作り方を研究しています。空間が均一に存在していれば、そこに薬を保持するだけで、薬が均一に散りばめられたシートが作れるというわけです。
三つめの粒子は、小さな穴が表面や内部にたくさん存在する多孔質粒子です。多孔質粒子は軽くて気流に乗りやすいので、吸い込んだ時に肺の奥まで到達します。そのため、粒子の壁面に薬を詰めておけば、それを吸い込むだけで肺の奥まで直接薬を届けられるようになるわけです。
肺から薬が効率よく取り込まれるようになれば、注射を打つ必要はなくなるかもしれません。注射は医者がいないと打てないため、病院に行けない高齢者や、医者がいない地域の人は薬の使用に大きな制限がかかってしまいます。しかし、吸うだけで薬を体内にまで直接届けられるようになれば、病院に行かなくても自宅で薬を使えるようになり、薬の飲み方が大きく変化することが期待されます。
ちなみに、この多孔質粒子は、表面がつるつるの粒子を作ろうとした過程で偶然できたものです。たまたま穴の空いた粒子ができたことから、条件を変えて検証した結果、とても簡単な手順で多孔質粒子を作る方法を確立しました。この方法は、世界でこの研究室にしかない技術です。

取材協力:東京農工大学 工学部 有機材料化学科 村上義彦教

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